電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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iPhoneと電子部品技術


薄膜技術のドライバー役に

2014/11/21

はじめに

 アップルが9月19日に発売したiPhone6/6Plusの販売台数は発売3日で1000万台に上り、過去最高を記録した。10月17日には中国でも発売され、記録的な販売台数を達成するのが確実な勢いだ。

 こうした現象は、誰の目にも明らかだが、iPhoneは他のスマートフォン(スマホ)にはない、もう1つの顔を持っている。それは「電子部品のテクノロジードライバー」だということだ。

 アップルは、目標とするパフォーマンスに必要な部品であれば、ベンダーが1社でも採用してきた。そのため、iPhoneには初めて搭載される電子部品が多く、電子部品技術の進歩に寄与してきた。

 また、10月7日から開催されたCEATEC2014では、村田製作所が0201サイズ(0.25×0.125mm)のコンデンサー・インダクタ、ロームが0201サイズの抵抗、太陽誘電が01005サイズ(0.1×0.05mm)のコンデンサー・インダクタを展示し、電子部品が0201サイズ以後を巡って小型化競争に入っていることを示している。

 スマホ、タブレットPC、ウエアラブル機器などをターゲットとして電子部品の小型化競争が激化しているが、積層セラミック技術は限界に達しており、近い将来、薄膜技術が積層セラミック技術を置き換えていくことは必須と考えられる。

iPhone各世代に搭載された受動部品

 表にiPhoneの世代ごとの受動部品搭載数をパッケージサイズ別に示す。

iPhoneにおける受動部品の搭載数(単位:個/台)
iPhoneにおける受動部品の搭載数(単位:個/台)

 iPhone5SからiPhone6の差異を見ると、電子部品の総個数は281個増だが、その増加は0402と0603で大半を占める。逆に1005は16個減となっている。

 また、表の◎印の付いたコンデンサーの0201と抵抗の03015はiPhone6で初めて搭載された、と推定されている。

 コンデンサーは、前世代の0402でさえ実質的に供給できるのが村田だけだったため、この0201も村田以外に考えられない。村田は14年4月より0201積層セラミックコンデンサーの量産を開始した、とアナウンスしている。

 抵抗は、13年9月にロームが03015のチップ抵抗器の量産をアナウンスしているため、ロームが供給していると推測される。

 表に個数が入っていないのは、ティアダウンではモジュールまでしか解析しないため、0201や03015はカウントされなかったと思われる。

0201以降の電子部品技術

 最近発表された03015~01005を技術的に見ると、次のように分類される。

(1)積層セラミック技術=村田:0201コンデンサー、太陽誘電:0201コンデンサー
(2)薄膜技術=ローム:03015抵抗、0201抵抗、太陽誘電:01005コンデンサー、01005インダクタ開発中
(3)フィルムタイプ=村田:0201インダクタ

 こうして見てみると、積層セラミック技術は、実質的に村田の0201だけである。

 コンデンサーの薄膜化が進まないのは、容量(キャパシタンス)を大きくできないからである。極端に多層化すれば可能だが、それではコスト的に合わない。

 ただ、本紙5月21日号の本稿で指摘したように、積層セラミックコンデンサーは小型化するに従って価格が上昇するため、0201は0402より1桁高いと推定される。

 薄膜技術では、基板1枚あたりの取れ数がチップの面積に反比例するため、小型化によってコストが比例的に下がることが予測される。いずれ薄膜コンデンサーのコストは、積層セラミックコンデンサーよりも下がるであろう。

 薄膜化によるメリットは、次のとおりとなる。(1)容量の絶対精度を少なくとも±5%に収めることができる、(2)極限までの低背化が可能、(3)底面端子による実装面積の縮小が可能、(4)アレイ化、集積化が容易に可能。
 電子部品の集積化によって機能ごとのモジュール化が進み、スマホ、タブレットPC、ウエアラブル機器などの部品点数が減り、小型化が図られるだろう。

日本の電子デバイス産業への期待

 日本の電子部品産業が強い最大の理由は、材料にある。フェライト、チタン酸バリウムを発明し、それを製品化してきた歴史は、青色LEDの開発にも通じる日本の技術のDNAと言えるだろう。

 こうした材料技術と半導体・MEMSで培ってきた薄膜技術、それにコンデンサー、インダクタなどのデバイス技術を総合すれば、この日本において、積層セラミック技術に代わる新たな薄膜電子部品を産み出すことができるであろう。
 こうしてできた薄膜電子部品と半導体、センサーを一体化し、様々なモジュールを創り出すことで、日本の電子デバイス産業が活性化することを期待する。



IHS Technology シニア・アドバイザー 池島寛、
お問い合わせは(E-Mail : forum@ihs.com)まで。

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