電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第114回

多くの素敵な女性たちがIT/半導体の最前線で戦っている!!


~沖縄高専の技術講演会に2年連続で参加し深く考えたこと~

2014/12/19

 12月初旬のこと、沖縄高専(名護市)で講演させていただく機会に恵まれた。昨年に続き2回目の出場となる。名護までは那覇空港で降りてバスで約2時間はかかる道のりであり、東京を午後一番で出ても到着するのは午後8時ごろ。「思えば遠くに来たもんだ」との思いで高速バスに乗り込んだが、もはや冬だというのにTシャツの女の子もいて、ほとんどの人がシャツ1枚という状態に驚かされた。

 沖縄高専の視聴覚ホールで開催されたこの技術講演会は迎えて第9回を数え、「東アジア経済圏グローバル技術者育成共同教育プログラム」と銘打たれている。今年は留学生も聴講するからパワーポイントのレジメはすべて英語で作れ、といわれて参加したが、幸いにしてしゃべくりは日本語でよい、と言われ胸をなでおろしたのだ。

沖縄高専の技術講演会の講師陣(センターが秋元理恵子氏)
沖縄高専の技術講演会の講師陣
(センターが秋元理恵子氏)
 プログラムは「アナログパワーICにおけるデバイス技術」と題して東芝の才女であられる秋元理恵子氏がトップバッターを務め、2番手はスマートコミュニティとは何か、というテーマで慶應大学理工学部システムデザイン学科の西宏章教授が語られた。西教授は日立の中研に勤務されていたが、思うところがあってアカデミアに転身されたようだ。3番手は東芝の技監であり、ITS(高度交通システム)Japan国際委員会の委員長の任にある尾崎信之氏が話された。ちなみに尾崎氏は東芝の要職を務め、後にSGSトムソン・マイクロエレクトロニクス(現STマイクロエレクトロニクス)の社長になられた柴田圭造氏(先ごろ逝去)の甥御さんに当たる。尾崎氏と話していたら、柴田圭造氏の語った多くの言葉が甦ってきて、懐かしさで胸が一杯になった。

 驚くべきことは、沖縄高専の若者たちは非常によく質問をするのだ。1回目の秋元女史の講演が終わったところで、司会を務める同高専の知念幸男教授が会場に質問を投げかけたところ、「半導体を勉強するうえで熱力学の知識は必要ですか」「そのデバイスはどのくらいの実験回数がいるのですか」など積極的な問いかけが相次いだ。筆者は年間に数多くのカンファレンス、セミナーに出席、または講演させていただいているが、最近の若い人が全くといってもよいほど沈黙しており、ほとんど質問をしない現状から見て、この沖縄の若者たちは健全だな、ニッポンはまだ行けるな、と思いを強くしたのだ。

 東芝の秋元女史はバリバリの現役のIC設計エンジニアであるが、「女性でも半導体エンジニアとして一生働くことができるのですか」という質問に対し、彼女は明確にこう答えた。
 「東芝大分工場などの製造現場で働かせていただき、現在はミックスドシグナルICの設計技術に携わっているが、女性として不利を感じたことはほとんどない。ただ、私も娘たちを育てながら仕事を続けたわけで、女性の場合は出産・育児など生涯の時間割をしっかりしなければならない、と思います」

 スクリーン上に秋元女史のお子さん2人の写真が映し出されると、会場の若者たちの眼が輝いた。なぜなら、彼女のお子さんは2人とも若い娘さんであり、聴講する若者たちとほとんど同年代であったからだ。2人の若い娘を育て上げてなお、生き馬の目を抜く、といわれるほど激動する半導体業界の真っ只中を生き抜く女性がいるのだ。それはすごい、という思いでうなずきながら話を聞いていた女子学生の表情も印象的であった。

 思えば筆者は、所属する新聞の取材で多くの女性たちに出会ってきた。おそらくは150人以上の女性たちを取材したが、「エレクトロニクスWOMEN」という好評コラムを長くにわたって執筆させていただいている。ほとんどが半導体をはじめとするITの最前線で戦う女性たちだから、みんなキリ!としているが、お美しい方、可愛い方も多いのだ。

 彼女たちのライフスタイルはきちんとおしゃれを貫きながらも、激しく厳しい仕事をやり遂げていくことだ。要するに、髪ふりみだし、1週間も風呂に入らず、カップ麺ばかり食べ、着る服もよれよれ、しかして研究に没頭という男たちとは全く違うのだ。食べること、着ることにも多くの注意を払い、ファッショナブルでありながら、肉食系で頭も良い、というのが今日のITに働く女性像であろう。いつであったか、取材したアラフォーのきれいな女性は「○○ちゃんのお母さんとだけ呼ばれる人生は絶対にいや。一生、自分の名前で勝負する仕事をしていく。男性に依存しないライフスタイルを貫きたい」と言っていた。

 かなりの会社で女性の役員、管理職が増えてきたことは事実だろう。政府はあろうことか、大手企業に女性の幹部を一定数の比率にしろ、という要請を出したいとまで言っている。そうまでしなければ、男性支配の強いニッポンの後進性は解消されない、と言いたいのであろう。それにしても、家の財政権をすべて奪われ、お小遣いのみで生きている多くのニッポンのサラリーマンたちのどこに「支配権」が存在するのであろう。そんなことを神谷町のバーでつぶやいていたら、アラフォーの素敵な女性に「哀れな人ね」とさげすみの眼で見られてしまった。


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。30年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 社長。著書には『半導体業界ハンドブック』、『素材は国家なり』(長谷川慶太郎との共著)、『ニッポンの環境エネルギー力』(以上、東洋経済新報 社)、『これが半導体の全貌だ』(かんき出版)、『心から感動する会社』(亜紀書房)など19冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長 企画委員長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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