電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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動き出した車載カメラ市場の展望


~カメラデバイス第3の市場【前編】~

2015/1/30

■はじめに

 2014年はデジタルスチルカメラ市場の急激な落ち込みがカメラデバイスにも影響を及ぼしたが、一方では新たにカメラデバイスが活用する分野にも注目が集まった。カメラデバイスのアプリケーションには、これまでの主流だった民生マーケットに加え、医療やセキュリティー、自動車などの産業分野が加わっている。とりわけ注目されているのが、搭載が活発化している車載カメラである。

 北米では、パーキング時など後進する際の事故による子供の犠牲を防ぐため、後方監視手段として法令化が進んでいる。今後はKT法など、欧米の法制化が後押しすることが見込まれている。自動車へのカメラの応用は始まったばかりであり、現在最も注目されるのがセンシングカメラの技術で、カメラデバイスはADASシステムの目として活躍が期待されている。

■本格的な普及期に突入

 IHSでは14年の世界の自動車販売台数は前年比4.4%増の8500万台と推定している。また、14~20年までの年平均成長率は3.1%と予測している。このペースで自動車のマーケットが伸びれば、19年には1億台を超え、20年には1億300万台に達するだろう。


 そして、自動車市場でこれまでと違うのは、車載カメラの普及の様子だ。車載カメラの普及状況をみるために、IHSでは車載カメラの投入率を計算した。車載カメラの投入率は、自動車の台数と車載カメラの台数を単純比較し、これにより車載カメラの平均的な普及モデルを推測した。

 車載カメラは視界補助(リアビュー)カメラと画像認識(ADAS)カメラの双方で普及が進んでおり、15年には車載カメラの投入率は40%を突破すると予想される。

 このペースは、過去に起こった携帯電話へのカメラの普及ペースと比較しても決して弱いものではなく、車載カメラ投入率の中期予測では17年には60%に、20年には100%に達するとみられる。

 このペースで普及が進むと、21年には携帯電話のカメラ普及率を超えるとIHSではみている。

 しかし、車載カメラはこれまでのアプリケーションとはここからが違っている。携帯電話のカメラ投入ポテンシャルは200%であるのに比べ、車載カメラの種類は非常に多い。視界補助カメラ、画像認識カメラに限らず、多種類に及ぶ車載カメラは車内外の様々な映像を撮影することが可能となり、その用途も枚挙にいとまがない。


 現在、最も注目されるのがセンシングカメラで前方監視を行うADASシステムである。また、将来の交通システムには道路の混雑をリアルタイム処理できるビッグデータの活用が予想されており、欧米では実証実験も始まっている。そのビッグデータの一翼を担うのは車載カメラとなるはずだ。

 こうした用途でも十分に先進的であるが、自動車とカメラを組み合わせた応用範囲はさらに拡がりを見せ始めている。自動車が走行しながら現場の情報とナビゲーションを融合させるといったダイナミックなサービスの提供も計画されており、携帯電話以上にカメラと自動車との連携がもたらす効果は大きなものとなるだろう。

 こうした未来を支える車載カメラの投入ポテンシャルは1000%(平均的に10個/1台)に届くと予想され、携帯電話が200%目前に失速するのを尻目に、車載カメラ投入率は20年以上にわたって上昇を続けていくだろう。


■車載カメラ市場予測(視界補助カメラvs画像認識カメラ)

 14年の車載カメラ市場は初めて3000万個を超えた。その後も年平均成長率は22.5%で成長し、17年には5000万個を突破して、20年には1億個市場へと成長するだろう。

 車載カメラの普及は、車両の後方視界を確保するバックモニターカメラから始まった。これが視界補助カメラとなり、近年ではリアビューカメラという名前で広く普及している。車載カメラ市場のなかでも視界補助カメラは中心的な存在である。視界補助カメラの比率は14年までは80%を超えており、20年までは大きな変化はない。

 しかし、自動車へのカメラ応用は始まったばかりであり、将来は積極的にドライビングをサポートするカメラシステムの登場が確実な様相である。今後はセンシング分野で画像認識カメラの技術が大きく伸びると予想されている。

 画像認識カメラは(1)車線検知、(2)ヘッドライトコントロール、(3)標識認識、(4)障害物検知などを行えるカメラである。国産車では早期よりブレーキアシストを組み合わせて、実用化の道を切り開いてきた。画像認識カメラは高級車への搭載が中心であるために14年の市場は全体の20%にとどまっているが、20年には30%へ上昇すると予測しており、大きな期待が寄せられている。



IHS Technology 主席アナリスト 李根秀、
お問い合わせは(E-Mail : forum@ihs.com)まで。
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