電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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TV市場「4K化が急速に進展」


~「IHSディスプレイ産業フォーラム2015夏」開催(下)~

2015/7/24

 大手調査会社のIHSは、7月29日、30日に国内最多の受講者数を誇るFPD市場総合セミナー「IHSディスプレイ産業フォーラム 2015夏」を東京コンファレンスセンター・品川(東京都港区)にて開催する。その注目の講演内容を登壇アナリストに3回にわたって聞くシリーズの第3回は「TV市場」を担当するシニアディレクターの鳥居寿一氏に話を伺った。

◇  ◇  ◇

―― 直近のTV市場動向をお聞かせ下さい。
 鳥居 まずポジティブな要素として、4K市場が順調に拡大しており、想定より上振れている。15年の需要は3063万台、16年は5257万台に上方修正した。これにより50インチ以上に占める4K比率は15年が43%、16年は70%、17年は94%まで高まる。4Kが商品化されてから、わずか5年でほぼ100%に達する見込みだ。
 一方、ネガティブな要素として、ドル独歩高に伴う各国為替全面安の逆風によってTV需要が年初以降落ち込んでいる。ロシアやブラジルに見られるように、通貨安がTVブランドの収益を圧迫し、値上げをせざるを得ず、これが需要を押し下げている。当社の調べによると、15年1~3月期のTV出荷台数は、東欧が前年同期比22%減、中南米(メキシコの助成策分を除く)が同12%減となった。1月に発表した予測を下方修正せざるを得ない。


―― TVブランドの生産計画も年初から下がっていますか。
 鳥居 そのとおりだ。トップシェアのサムスンは売り上げの6割を新興国市場で上げているが、1~3月期のTVの属する家電部門は営業赤字だった。年間の出荷台数は当初、前年比2桁増を見込んでいたが、現在は実現が難しい状況となっている。

―― 中国TVブランドの海外展開にも影響を与えそうですね。
 鳥居 中国国内でのシェアは高いが、為替の状況を考慮すれば、今は慌てて海外市場へ打って出ないだろう。海外でのブランディングやマーケティング、流通大手とのリレーションもまだ弱く、時間を掛けて海外進出戦略を練ることになるだろう。

―― カーブド(曲面)や量子ドット、ハイダイナミックレンジ(HDR)、8Kといった新技術は。
 鳥居 カーブドは欧州市場のみでファッション感覚で受け入れられているが、他地域では普及しておらず、普及が続くとは見ていない。量子ドットは4K化とともに増えるが、コストダウンが進むかが重要で、主流になるかは不透明だ。対抗技術として低コストな広色域のLEDを使うソリューションも出ている。8K化に熱心なのは世界で日本市場だけであり、トレンドになるのは相当先だろう。4KとHDRを組み合わせると画質の違いがはっきりわかると言われており、HDRが最も期待できる技術だ。

―― やはりTVの王道は大画面化と高解像度化ということですね。
 鳥居 そういう意味で言えば、ある程度、行き着くところまで来た。今後はハードだけではなく、TVで何ができるかという使い方・シーンの提案が重要になる。
 そうした点で、スマートTVに改めて注目する必要がある。NETFLIXに代表されるように、欧米ではネットコンテンツをTVで見る文化が定着している。アリババやLeTVがある中国も同様で、中国ではTV購入の約3割がネット経由と大幅増となっている。4Kコンテンツを提供する動きも少しずつ出ており、放送が4Kに対応していなくても、中国でもネットから4Kコンテンツを見る時代になるかもしれない。
 一方で、日本は先進国でスマートTVの普及が最も遅れている。放送局があまりにも強すぎて、日本だけがネット経由での魅力的な4Kコンテンツが不足している。8K化も重要なテーマだが、それ以前にこうした環境整備に取り組むべきではないか。

(聞き手・編集長 津村明宏)

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