今回から、岩手県奥州市に進出し地元経済の発展に大きく貢献している半導体関連企業を紹介していく。
今回紹介するIKK東北(株)(岩手県奥州市江刺区岩谷堂字松長根20番地10、Tel.0197-35-7574)は、東京エレクトロン東北(株)(TEL東北)向けのガスシステムを手がけており、TEL東北にとってはかけがえのないパートナーとなっている。IKK東北(株)の菅野新一氏に話を伺った。
―貴社の事業概要は。
菅野 当社は、愛知県東海市に本社を構える伊藤機工(株)の関連会社として、1995年に設立された。親会社は鋳物やセラミック施工品を製造しているが、当社は半導体製造装置(酸化拡散炉・LPCVD装置)向けガスボックス用のIGS(集積ガスシステム)やガス配給ユニットの組立を手がけている。
―奥州市に進出したきっかけは。
菅野 伊藤機工の会長が東京エレクトロン(株)の役員の方と懇意にさせていただいていた関係で、東京エレクトロンが江刺市(現:奥州市)に進出する際に「ぜひ手伝って欲しい」と依頼されたのがきっかけだ。当社が奥州市に進出後、TEL東北様で研修させていただきながら技術を磨き、2年後にはガス関連ユニットの製造を手がけさせていただくこととなり、現在に至っている。当社の製品は100%TEL東北様向けとなっている。
―3D構造のデバイスが登場し、半導体の製造プロセスはますます複雑になっていますね。
菅野 そのとおりだ。IGSをはじめガスユニット関連も相当要求が変化しているが、当社はお客様の要求にフレキシブルに対応している。
―奥州市に進出したメリットをどうお考えですか。
菅野 同じ江刺中核工業団地内にTEL東北が立地しているため、納品などは大変便利だ。また、この工業団地は、進出している企業同士の仲が大変よく、横のつながりがとても強い。進出企業が集まった協議会が組織されており、定期的に会合が行われている。私はその協議会の会長を務めたこともある。
―そのお話をもう少しお聞かせ下さい。工業団地内の企業同士の交流は他の地域にも参考になると思います。
菅野 具体的には、奥州市内最大の工業団地である江刺中核工業団地に立地している企業45社が組織する協議会だ。月に1回のペースで会合を行っており、飲み会だけでなくバレーボールやソフトボール、ボーリングの大会、さらには年2回の大掃除、ごみ拾いなども行いながら親睦を深めている。こうした活動を通じて、企業間の情報交換がしやすくなり、横のつながりが大変強くなっている。
―強固なつながりができている理由は。
菅野 私が協議会の会長を務めていた時は「とにかく楽しくやろう」をモットーとしてきたが、こうした姿勢を協議会全体として長年貫いてきた結果、連帯感が強くなったのではないか。様々な業種が集まっているが、異業種同士も仲良く交流しており、そこから新たなビジネスが生まれている。また、家族ぐるみの付き合いだけでなく単身赴任の方も孤立させないよう配慮しており、単身者にも大変喜ばれている。
運営面では、市長をはじめ市の職員の方にもお気遣いいただいており、行政に対して親近感がある。
連帯感の強さを物語るエピソードもある。工業団地に務める方々に交通安全の目標を募集したところ、約3000人のうち8割を超える2500人もの方々から提出があった。
―それはすごいですね。
菅野 奥州市には外部から来た人でも積極的に地域に受け入れる気質があるが、こうした連帯感はそのような奥州人の気質から生まれていると思われる。この点は、奥州市に今後進出してくる企業にとっても大きなメリットになるだろう。
(聞き手・編集委員 甕秀樹)
(本紙2015年8月27日号3面 掲載)