電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第140回

イノベーション・マトリックス CEO 大永英明氏


日米ロボット市場の架け橋に
フェッチ社製品を日本で発売

2015/10/9

イノベーション・マトリックス CEO 大永英明氏
 イノベーション・マトリックス(Innovation Matrix、米カリフォルニア州サンタクララ、日本支社=神戸市灘区王子町1-4-17、Tel.078-801-0223)は、ロボット関連製品・技術の販売を行う専門企業。同社CEOの大永英明氏は米国のロボット業界に約40年間携わってきたスペシャリストで、シリコンバレーに本社を置き、日米のロボット市場の架け橋となる事業を展開している。同氏に話を伺った。

―― 貴社の概要から。
 大永 私は米国の産業用ロボットメーカーで、開発やアジア太平洋地域の開拓営業の仕事などに長年従事し、その経験を生かし2004年に設立したのが当社イノベーション・マトリックスである。主に米国のロボット関連製品(産業用ロボット モーションコントロール マシンビジョンなど)を日本に紹介・販売し、関連するシステム・インテグレーションやコンサルティング、サポートサービスなども展開している。

―― 扱っているのは産業用ロボットだけでしょうか。
 大永 ビジネスとしては産業用が中心であるが、Robo Matrixという部門において、サービスロボットをはじめとした非製造業用ロボットも販売している。その1つが米Anybots社の遠隔操作型ロボット「QB」で、離れた場所にいる人とのコミュニケーションを支援するテレプレゼンス・ロボットの一種である。
 また、7月には米フェッチ・ロボティクス社(Fetch Robotics)とパートナーシップを締結し、日本での製品販売を開始した。

―― フェッチ社について詳しく。
 大永 米シリコンバレーにある新進企業で、ロボットビジョンとロボットアームが付いた自走ロボット「Fetch(フェッチ)」および、可搬自走ロボット「Freight(フレイト)」を展開している。主に物流施設などでの荷物の仕分けや搬送などに使用され、当社が日本、台湾、シンガポール、豪州におけるフェッチ・ロボティクス社の製品の独占販売やサポートを行っている。

―― 今後注力したいことは。
 大永 日本のロボット製品を米国市場に紹介することを強化していきたい。一例として、アクチュエーター製品などを扱うマッスル(株)(大阪市中央区)が開発した医療・介護用ロボットの米国展開をサポートしている。また私自身、JABI(Japan America Business Initiatives、ジャビ)という日米間でのビジネス進出をサポートするコンソーシアムの共同創業者であり、現在、理事も務めていることから、ロボットだけでなく、あらゆる分野で米国進出にご興味がある企業の方がいれば、ぜひお声がけいただければと思う。

―― ロボットに搭載する電子デバイスについて。
 大永 ロボットは今後さらに高機能化していく傾向にある。その一方で、小型化のニーズも高まっていく。そのためロボットに搭載する電子部品も小型・軽量かつ高い信頼性が求められる。ただ近年、スマートフォン(スマホ)などモバイル機器の高機能化により電子デバイスの性能も上がっており、ロボットの仕様にもよるが、センサーなどはスマホで使用されているものをロボットに搭載しても問題ないレベルにきている。
 改善がより求められるのは駆動部分で、アクチュエーターなどは高出力かつ省エネなものが必要とされている。あとは、ロボット開発においてバッテリーも課題となることが多く、高出力かつ軽量でコストパフォーマンスの良いものが常に求められている。

―― 米国のロボット市場について。
 大永 米国政府が4年ほど前からロボット分野を強化する方針を打ち出し、多くの予算を計上するようになった。また、米国では軍事用途で開発された技術を民生用へ展開していく歴史があり、その流れがロボット分野にも起こっている印象だ。さらに13年後半にグーグルがロボット関連メーカーを相次いで買収したことで、ベンチャーを中心にロボット開発が盛り上がりを見せており、大きなビジネスとしての希望が見いだせるようになった。

―― 今後のロボット市場をどのように見ていますか。
 大永 ロボット製品は今後コモディティー化が進んでいき、ハード面では差別化しにくい状況になっていくだろう。その一方で、人工知能などソフトウエア部分の重要度が増していき、ソフトウエア大国である米国が強さを発揮するのではないかと見ている。
 日本については、世界一のサービス精神を生かすべきだと考える。最近、従業員としてロボットを活用したホテルが注目を集めているが、こういったロボットによる新たなサービスをいかに創出していけるかが、日本のロボットがグローバルで競争力を維持するためのカギとなるだろう。

―― 日本のロボットは。
 大永 数年前までは、技術先行型のエンターテインメント系ロボットが多く、実用性に疑問符がつくものも少なくなかった。しかし、ここにきてマーケットをきちっと見据え、ビジネス面をしっかり考えたロボット開発がベンチャーを中心に増えてきたと感じている。当社ではそういった日本の製品を米国に紹介するとともに、シリコンバレーを中心とした米国の新しいロボット製品を日本で展開していき、日米のロボット市場をつなぐ架け橋として今後もロボット分野の発展に貢献していきたいと思う。

(聞き手・本紙編集部)
(本紙2015年10月8日号1面 掲載)

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