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No.26

米ミシシッピ州経済開発庁、投資セミナー開催、日産・横浜ゴムが進出事例を紹介


2015/11/17

ミシシッピ州経済開発庁グレン・マッカラ・ジュニア長官
ミシシッピ州経済開発庁
グレン・マッカラ・ジュニア長官
 米国ミシシッピ州経済開発庁主催による「米国ミシシッピ州投資セミナー」が、東京都内で開催された。セミナーの冒頭でミシシッピ州政府駐日代表事務所の小林幸夫代表が挨拶し「ミシシッピ州は投資に最適だが、経済についてあまり知られていない。日産自動車とトヨタ自動車の両工場があるのはミシシッピ州だけである」と語った。

 セミナーでは、ミシシッピ州経済開発庁のグレン・マッカラ・ジュニア長官が「ミシシッピ州の経済環境」のテーマで講演した。

 ミシシッピ州の州都は、ジャクソン。人口は300万人で労働人口は125万人。GDPは947億ドル。50以上の日本企業の工場が立地している。交通ネットワークも整備されており、2500マイルの鉄道網があり、メキシコ湾からは世界中にアクセスすることが可能。

 航空宇宙、農業、自動車、先端製造業、ヘルスケア、エネルギー、造船に注力している。自動車産業では、トヨタ自動車と日産自動車がそれぞれ工場を持つ唯一の州となっている。また、横浜ゴムが10月5日にミシシッピ工場の操業を開始している。

 造船ではVTへルターマリン社が拠点を有している。航空宇宙では、ホンダジェットがミシシッピ州立大学を拠点に研究を進めていた。物流拠点の立地にも適しており、アシックスが拠点の拡張を発表している。食品加工の分野では、カルビーが工場を新設しており、味の素は工場の拡張を計画している。

 電力は1kWhあたり6.75ドル。労働組合参加率は3.7%と低い。会社にとって中立で能力の高い人材が豊富で、忠誠心の高い労働者が多い。製造業の立地に最適な地となっており、政府では現在、有利な投資の意思決定ができるような制度を整備している。また、コミュニティカレッジを通じて労働力の供給も行っている。品質の高いインフラを低価格で提供しており、助成制度や融資制度も充実している。

 グレン・マッカラ長官は「ミシシッピは人口300万人で州というよりファミリーと考えている。ミシシッピに拠点を構える、拡張するというときにメリットを提供できる」と講演を締めくくった。

 次にジェトロ海外調査部米州課 アドバイザーの木村誠氏が「日系企業の北米向け投資の傾向」のテーマで講演し、日本企業の進出状況や傾向などについて紹介した。

 進出企業からは、まず日産自動車(株) 生産企画統括本部 生産企画部部長の西村文孝氏が「日産自動車のグローバル生産と北米戦略について~ミシシッピ州キャントン工場の活動のご紹介」のテーマで講演した。

 日産は、米国にはテネシー州にスマーナ工場とデガート工場を所有しており、ミシシッピ州にキャントン工場を所有している。スマーナ工場は主にパッセンジャービークルを生産しており、電気自動車のリーフも生産している。デガート工場はエンジン・トランスミッションを現地生産している。キャントン工場は、ルノー・日産アライアンスが開始した直後に建設を決定。敷地面積567万m²、建屋面積39万m²で、03年に生産を開始している。大型のクルマを生産しており、14年からSUVのムラーノを生産。同車を生産しているのは同工場のみとなっている。15年中には新たなチャレンジとして大型トラックのタイタンの生産を開始する。工場の周辺にはキャントン、サプライヤーパークを整備し、サプライヤーに立地してもらう予定。環境にも留意しており、省エネなどの活動も進めている。

 同社では、基本的に海外の工場のトップには日本人を立てない方針。海外に出る場合には従業員の質が問題となるが、キャントン工場ではまったく問題がなく、操業開始時の雇用の申し込みも多かったという。

 続いて、横浜ゴム(株) 執行役員、タイヤ生産技術本部長 兼 タイヤ北米工場臨時建設本部 本部長の加々美茂氏が「横浜ゴムの北米戦略とミシシッピ州を選んだ理由」のテーマで講演した。

 同社は10月5日にミシシッピ州クレイ郡に新工場を稼働させている。それまで北米にはJVの工場しかなく供給能力に問題があり、製造が難しいタイヤは日本、ある程度やさしいものはタイから輸出していた。この問題を解決するために新工場を建設した。全米から候補地を選定、港がそばにある、ハリケーン・トルネードなどの災害が少ない、競合他社が近くにいない、自動車メーカーなどに直納ができるなどの条件を満たす場所から3カ所に絞り、優れたコスト競争力、広大な土地、州全体としての協力体制などからミシシッピ州のクレイ郡に決定した。近くにトヨタ、日産の工場があり、原料供給元の日本ゼオンの工場もあるというメリットがある。

 新工場では、当初トラック・バス(TB)用のタイヤからスタートし、乗用車用に展開する予定。TB用で年間200万本、乗用車用で同100万本の生産を想定している。

 同社の工場は、これまでアジアを中心に展開してきた。アジアでは人件費が安いため、人を使ったラインを構築したが、新工場ではワーカーに負担をかけないTB用では最先端の工場を構築しており、今後の拡張も検討している。また、今後欧州などの先進国に進出する際の建屋、設備などは今回の新工場で身に着けた技術を転用していく。

 10月5日に行われた開所式では、フィル・ブライアント・ミシシッピ州知事やミシシッピ州経済開発庁のグレン・マッカラ長官なども出席した。州政府には、インフラの整備や、採用・研修関連、仮事務所の提供など多くの協力を得ており、「非常に親切な人間性を感じた」という。
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