電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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テレビ市場「16年は台数横ばい」に


~「第30回IHSディスプレイ産業フォーラム」開催(6)~

2016/1/29

シニアディレクター 鳥居寿一氏
シニアディレクター 鳥居寿一氏
 大手調査会社のIHSが1月27日、28日に東京コンファレンスセンター・品川(東京都港区)にて開催する、国内最多の受講者数を誇るFPD市場総合セミナー「第30回 IHSディスプレイ産業フォーラム」。その注目の講演内容を登壇アナリストに全6回にわたって聞く最終回は「TV市場」を担当するシニアディレクターの鳥居寿一氏に話を伺った。

◇  ◇  ◇

―― 2015年のテレビ市場について。
 鳥居 残念ながら前年比でマイナス成長になる見通しだ。ドルに対する各国通貨の為替安がいっそう進んだことでテレビの価格が上昇し、石油価格の下落も影響を与えているマクロ経済の低迷も相まって、さらに需要が低迷した。
 この結果、液晶テレビの出荷台数は、14年の2億2490万台に対し、15年は2億2400万台に減少したとみている。液晶を含めた全テレビの出荷台数も前年比4%減となったと考えている。


―― 16年の市場は反転しますか。
 鳥居 プラス要素がほとんどない。インドなど若干プラス成長が見込める市場はあるものの、為替安の影響によって、オリンピックが開催される予定のブラジルは経済危機に近い状態で、東欧市場も低迷したまま。メキシコのテレビ助成も15年末に終了した。液晶テレビの出荷台数は2億2440万台と横ばいにとどまり、ほぼこれが最大値で上ぶれが期待できないだろう。
 唯一プラス要素があるとすれば、4Kの普及により平均画面サイズの大型化は継続する。15年は液晶テレビの平均で39インチ強になったとみているが、16年には40インチを超える水準になる。

―― 年初に米ラスベガスで開催された家電見本市「CES」に参加したそうですね。ご感想は。
 鳥居 コンシューマー製品に画期的な製品は見当たらず、混沌とした低迷期にあると感じた。テレビに関するトピックスとしては、(1)4K+HDR(High Dynamic Range)、(2)有機ELテレビ、(3)中国勢の台頭が挙げられる。8Kテレビは数社が展示していたが、いずれも98インチと家庭用としては大きすぎ、北米で盛り上がっている印象は受けなかった。
 (1)は、HDRで画質を差異化する動きがいっそう加速しそうだ。輝度コントラストと色再現性が劇的に向上するため、ハリウッドを含めたコンテンツ側がこの流れに乗ってくる。コントラストなどの性能面から、バックライトやフィルムといった部材に対するニーズも進化が期待できる。
 ちなみに、昨年多く見られた量子ドット(QD)テレビの展示は、今回少なかった。LEDバックライトでもUHDアライアンスの規格をクリアできるようになっており、QDテレビの行方はサムスンの今後の出方に大きく左右されそうな印象を受けた。

―― (2)はどうですか。
 鳥居 CESでは、LGディスプレー(LGD)製のパネルを用いてスカイワースやチャンホン、コンカ、パナソニックなどがテレビを出展していた。15年の市場は30万台だったが、参入メーカーの増加によって16年には120万台まで伸びるとみている。
 課題は、(1)4K化と大型化でコストダウンがどこまでできるか、(2)LGD以外にパネル製造に参入する企業があるか(サムスンはどうするのか)、(3)参入するテレビブランドが増えるのか、(4)画面サイズのバラエティーが増やせるか、(5)全メーカーが同じパネルを用いてもセットとして差別化できるのか、の5つある。
 価格は液晶テレビの2.3倍と高く、価格競争できるレベルにない。現状で液晶に対して大きな優位性がない。すぐに規模を追うべきではなく、プラズマテレビの失敗の教訓を生かし、プレミアム商品としての地位をいかに保てるかがカギになる。

―― (3)ではシェア構造が変化していきそうですね。
 鳥居 CESでは、ブースの位置や規模、テレビの展示台数、どれを取っても中国ブランドの存在感が前年より増していた。既存ブランドに加え、シャオミーやLeTVといった新興ブランドもテレビへの参入に意欲的であり、日本から韓国、韓国から中国へという時代の流れを感じさせるに十分だった。
 北米市場は中国と同じく「ビッグ&チープ」(大型&低価格)なテレビが好まれるうえ、ウォルマートとベストバイという2大小売りが販売チャネルを握っており、中国勢にとっては参入しやすい市場だ。現在はまだ国内向けが多数を占めるが、時間をかけて北米市場への攻勢を強めていくだろう。東芝とシャープが北米のテレビ事業に関してブランドをライセンスしたことも手伝い、テレビのシェアは日本勢が低下、中国勢が上昇という流れになっている。
 現在大きなシェアを持つ韓国勢は、3Dやカーブド、スマートテレビといったトピックスでシェアを維持してきたが、今回のCESには目立った展示はなかった。16年の韓国勢のシェアは横ばい維持が精一杯だと考えている。

(聞き手・編集長 津村明宏)



 「第30回 IHSディスプレイ産業フォーラム」の詳細情報は
https://technology.ihs.com/events/552152/30th-ihs-display-japan-forum
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