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第167回

三菱電機(株) FAシステム事業本部 機器事業部 主席技監 小平紀生氏


20年度に16年度比2倍以上に
知能化・FAとの親和性に強み

2016/4/22

三菱電機(株) FAシステム事業本部 機器事業部 主席技監 小平紀生氏
 三菱電機(株)(東京都千代田区丸の内2-7-3、Tel.03-3218-2111)は、FA関連製品で世界トップクラスのシェアを有する。そのなかで産業用ロボットについても40年近い歴史を持ち、電機・電子業界向けの組立ロボットを中心に近年販売を拡大させている。今回、FAシステム事業本部 機器事業部 主席技監の小平紀生氏に話を伺った。

―― 貴社のロボット事業について。
 小平 1970年代末期から開発に着手し、80年代初期から外販を開始。社内の電機・電子や半導体の工場でもしっかり使い込むことで技術を鍛えた。現在でも電機・電子の組立に使用するロボットに強みを持ち、可搬重量が20kg以下の垂直型や水平型をメーンに、最大70kgの可搬に対応できる製品もラインアップしている。近年は電子化が進む自動車関連でも電機・電子の組立用途が拡大し、引き合いも増えている。

―― 製品の強みは。
セル生産のような難易度の高い作業も可能
セル生産のような難易度の高い作業も可能
 小平 ロボットの知能化ソリューションに早くから取り組み、3次元/2次元のビジョンセンサーや力覚センサーなどを活用し、セル生産のように多様で高難易度な作業の自動化も実現している。押し付けの力を調整しながらの嵌め合い作業や、位相を合わせながらの複雑な組み付け作業などの複合作業が特徴だ。

―― 貴社ではFA関連機器も多数扱っておられます。
 小平 その部分は当社の大きな強みとなっており、ロボット以外にも顧客に最適な自動化・合理化ソリューションを提案できる。もちろんロボットとFA関連を組み合わせたソリューション提案も強化しており、例えば当社のシーケンサーはロボットのCPUを組み込むことができ、1台のシーケンサーで最大4台まで協調制御できる。こういったFA関連製品との親和性の高さは当社ならではの強みと言えるだろう。

―― そのほか取り組まれていることは。
 小平 自動化システムを構築するうえで必要なハードウエア、ソフトウエア、サポートツールなどをパッケージ化した製品の販売を強化している。パッケージ化することで顧客ならびにシステムインテグレーター(SI)の設計やプログラミングに対する負担を低減し、簡易な立ち上げを可能にする。現在、コンベアトラッキングやバリ取り・研磨作業など複数の用途に対応した製品を展開しており、今後ラインアップを順次拡大していく方針だ。

―― 生産ならびに需要動向は。
 小平 ロボット製品の生産は名古屋製作所(名古屋市東区)管内ですべて行っている。市場の拡大を見越し2年ほど前から増産対応も進め、今後の需要増にも対応できる体制を敷いている。ロボット製品の需要はリーマンショックのあと年々増加しており、2014年度は過去最高を達成した。15年度もその好調さを維持するかたちで需要が増加しており、前年度比2割前後の増加となる見通しだ。市場としては中国を中心としたアジアや欧州など海外市場が伸びており、リーマンショック前の輸出は40%前後であったが、現在は60%を超えている、ただし国内需要も堅調になってきており、難しい自動化へのチャレンジの気運も高まっている。

―― ロボットに搭載する電子デバイスについて。
 小平 ロボットの小型化や低消費電力に貢献できる電子デバイスは常に求めている。ただ、そういったこと以上に重要なのは、ロボットと電子デバイスの業界間の連携をもっと強化することだ。もちろん電子デバイス製品の機能向上などは重要なポイントであるが、そういったことは中国など海外でも同じような取り組みが進んでおり、ヒトもカネも多く投入されている。日本がロボット分野での強みを今後も発揮していくためには、業界の垣根を越えて課題を共有し、ロボットの超軽量化、ケーブルレス、樹脂化など、1歩も2歩も先の取り組みを進めていくべきだと考えている。

―― 16年度以降の方針を。
 小平 伸長している海外のみならず、国内市場にも注力していく。国内はロボットに求められる作業が年々高度化しており、当社としてもその対応力を高めていきたい。海外においては、当社は世界各地にFAセンターを持ち、海外販社ごとにSIのネットワークも整備し、きめ細かいサポートが行える体制を構築している。ただ、市場の伸びを見ていると、海外でのSIやサポート体制をさらに強化していく必要があるだろう。ロボット製品の需要は、各国の政策や自動化ニーズの高まりを受け、16年度以降も堅調に推移すると見ており、16年度は前年度比2桁増を、そして20年度には16年度比2倍以上の事業規模にすることを目指す。

(聞き手・浮島哲志記者)
(本紙2016年4月21日号9面 掲載)

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