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第173回

STマイクロエレクトロニクス オートモーティブ製品グループ ディレクター 八木正幸氏


ADASにトータルソリューション
ミリ波レーダーはCMOSRF開発も視野

2016/6/3

STマイクロエレクトロニクス オートモーティブ製品グループ ディレクター 八木正幸氏
 自動車産業では現在、自動運転の実現に向けて先進運転支援システム(ADAS)の高機能化・高性能化が急ピッチで進んでいる。
 STマイクロエレクトロニクス(スイス・ジュネーブ、日本法人=東京都港区港南2-15-1、Tel.03-5783-8220)は、画像処理プロセッサーやレーダー用IC、センサー、測位チップといったADAS向け製品に加え、各種電子制御用ユニット(ECU)、車載用サブシステムのコアとなる車載用マイコンやスマートパワー製品、車車間・路車間通信用ソリューションなど、幅広い車載製品群を有しており、より安心・安全で快適な次世代自動車の実現に向けて事業の強化・拡大を図っている。オートモーティブ製品グループ ディレクターの八木正幸氏に事業の概況、今後の製品開発戦略などについて伺った。

―― 貴社の車載関連事業の概況や強みについて。
 八木 当社では、「スマート・ドライビング」と「IoT」の2つを新たな戦略的事業領域と位置づけており、クルマは非常に重要な注力分野となる。
 車載デバイスとしては、エンジン制御系やシャーシ系、インフォテインメント系に加え、自動運転に向けたADASの領域まで多岐にわたる製品を手がけており、エンジンやボディ制御、ADAS向け製品などでは大きなシェアを獲得している。
 例えば、ADAS向けセンシングシステムでは、モービル・アイ社と衝突防止補助システムのコアとなる画像処理プロセッサーを共同開発するとともに、V2X(車車間・路車間通信)関連では、オートトークス社と共同開発を進めている。各分野で強みを持つ企業と協力し、高い技術優位性(競争力)を実現している。

―― ビジネスの現況と今後の見通しについて。
 八木 2015年の自動車関連事業の売上高は、車載半導体市場全体が数%の成長にとどまったことにより、ほぼ横ばいで推移した。
 一方で、今後の車載デバイス市場は、新規分野の立ち上がりなどから高い成長が予想される。16~17年にかけてはLEDヘッドライトや電動パーキングブレーキ、18年以降では、ADAS搭載の本格化、V2Xなどが牽引役になると期待される。

―― ADASは、自動運転の実現に向けたキーテクノロジーですが、貴社の製品戦略・特徴は。
 八木 先述のとおり、当社ではレーダーシステム(レーダーセンサーや信号処理、ECU)やビジョンシステム(センサーから画像処理IC)さらには、センサーフュージョンECU(車載用32ビットマイコン)も自社で展開しており、半導体メーカーの中で唯一、ADASのトータルソリューションを提供できるサプライヤーであると自負している。
 自動運転をにらんだ製品開発はすでにスタートしており、ADAS関連デバイスのリーディングメーカーとして、それら先端ニーズに対応した製品を今後も開発・提供していく。

―― なかでもミリ波レーダー用トランシーバICは貴社が強みを持つ製品かと思いますが。
 八木 そのとおりだ。当社は24GHzの短距離レーダーで世界トップクラスのシェアを持ち、累計出荷数は3500万個以上にのぼる。
 また、同技術をベースとした長距離用の77~81GHz品も展開しており、現在、送受信機能を兼ね備えたシングルチップ品を開発するとともに、20年ごろをめどにCMOS RF品(現在はBiCMOS SiGe)の開発も視野に入れている。

―― オートトークス社と共同開発を進めるV2Xも、今後の成長が期待されます。貴社の強みやキーポイントは。
 八木 V2Xに限らず、車載関連では、機能安全やセキュリティーの確保は必要不可欠の要素だ。当社では機能安全のマイコン開発に早い段階から取り組んでおり、業界トップクラスの製品・技術を有している。
 さらに今は、この機能安全に加え、セキュリティーモジュールをセンサーフュージョンECUやV2Xシステムにも搭載し、ユーザーが求める〝高いレベルでの機能安全+セキュリティー性能〟を実現している。

(聞き手・清水聡記者)
(本紙2016年6月2日号2面 掲載)

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