商業施設新聞
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No.562

駅の開発は駅それぞれ


若山 智令

2016/6/28

 商業施設新聞では、「駅激戦区 人×商業」という連載記事を掲載している。これは駅を中心とした街づくり、商業集積が盛んに行われていることから、駅にスポットを当て、その周辺の商業動向や新たな開発、街づくり動向などを取材しているものだが、現地に取材へ行くと、これまでのイメージとまったく違う姿が見えたり、新たな発見も多いと気付く。

 筆者がよく取材するのは埼玉県や、神奈川県の横浜市と川崎市などで、開発が進んでいるところ、そうでないところが割とはっきりしている。そんな中でも派手なところは、駅前には商業施設や高層マンション、オフィスなど賑やかな場所もあって、駅周辺だけで街を形成している。だが、それは片側だけの側面で、実際はまだまだ開発が進んでいないところもある。

 一番驚いたのは、東海道新幹線や横浜線などが停車するJR新横浜駅だ。新幹線の停車駅で、横浜アリーナ、日産スタジアムの最寄り駅、かつ“横浜”の名が付けば、それは洗練された場所に違いないと思っていたが、出口によって見せる顔がまったく違った。例えば新幹線側(北口)方面は、駅直結の大型商業施設「キュービックプラザ新横浜」があり、少し歩くと「新横浜プリンスホテル」や「日産スタジアム」などがある。ほかにも、観光客や出張ニーズに対応したビジネスホテルや、オフィスなども多い。駅の取材は北口側から始めたため、「横浜っぽいなあ」という印象を受けた。

「南越谷駅・新越谷駅」のシンボル的商業施設の駅ビル「新越谷VARIE」
「南越谷駅・新越谷駅」のシンボル的商業施設の駅ビル「新越谷VARIE」
 そう思ったのも束の間、横浜線側の篠原口に出てみると、これまでの新横浜とは違った風景が見える。北口の整備された道路や高層ビル群は見る影もなく、のどかな畑や住宅地が一面に広がっている。新横浜駅は新幹線の開業に合わせて作られた駅だそうで、元々田畑や雑木林が立ち並ぶ場所だった。駅開業後は北口だけ開発が進み、篠原口は地権者などと合意がまとまらず、土地区画整理事業も廃止となった過去がある。それが今も残っていて、駅を挟んでまったく違った顔を見せているようだ。

 また、良い意味で裏切られたのは「南越谷・新越谷」のゾーンだ。両駅はJRと東武の駅が向かい合っており、乗換えなどで利便性が高いことから利用者が多く、南越谷駅に関しては乗車人数が埼玉県内で大宮、浦和、川口に次ぐ4番目を記録している。新越谷駅に駅ビルがあることも利用者増加に寄与しているだろう。南越谷駅は武蔵野線というマイナー路線であるが、近くにレイクタウンや吉川美南、新三郷などの開発が進む駅もあり、住民も増えていると聞く。こうした様々な要因が重なって、県内第4位という立派な順位を獲得している。

 駅は街の中心であり、毎日使うものだからこそ、そこにビジネスチャンスや価値、利便性を見つけ、様々な開発がされてきた。これからも駅を中心とした開発は進んでいくだろうし、私たちも駅に注目した街づくりを追いかけていきたいと思う。
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