商業施設新聞
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No.566

所変われば


松本 顕介

2016/7/26

 所変われば品変わる――。先日いつもとは違う取材の機会を得た。三井不動産が10月に開業を予定している「(仮称)ららぽーと湘南平塚」は、Jリーグの湘南ベルマーレとコラボしており、ベルマーレ監修のフットサル場がららぽーと湘南平塚の屋上に設置される。7月2日、両者で湘南エリアを盛り上げようという旨の会見がベルマーレ湘南の本拠地であるShonan BMWスタジアムで行われた。

 ちょうどその日、ベルマーレ湘南VS横浜F・マリノスのカードが組まれていた。会見は試合開始の1時間前に行われるため、会見開始30分前に会場に到着した。すでに多くのサポーターが詰めかけており、早くもアルコールで顔を赤らめている人の姿もそこかしこに。かといってピリピリとしたムードというよりは、商業記者らしく表現すれば、B級グルメイベントに集まっているような和やかさがあった。

 記者控え室に入ると、普段の小慣れた雰囲気とはまるで異なる、エネルギーのようなものが充満している。折りたたみ式のテーブルが4列ほど並べられ、壁側の席には大手スポーツ紙や日刊紙運動部記者専用席を示す紙が貼られている。満席で利用者がいなければそこに座っても構わないようだが、一介の商業記者にそんなところに座る度胸などない。

 周りを見回すと、普段目にする同業記者の顔はなく、巨大望遠レンズで選手の一瞬を切り取ってやろうという真っ黒に日焼けしたカメラマンや、すでに発表された本日のスタメン表を入念にチェックする記者の姿。自分もスタメン表に目をやるのだが、うーんあまり明るくない。いつも見るテナントリストとはわけが違う。

 するとにわかにピッチではサポーターの応援合戦が始まっている。自分の中では完全アウェーを痛感する。そうこうしているうちに、記者会見が始まった。我々のような流通系業界に身を置く記者には興味深い会見であったが、スポ記者達は早くピッチに向かいたいムードを発散していたようだった。

 会見が終了し、せっかくだからフィールドに向かった。プレスパスの強みを活用し、専用通路からピッチに向うと、通路にもれる歓声や照明の明かりは否応なくドキドキ感を増幅させる。フィールド前に立つと、なんとも言えない興奮がこみ上げる。が、次の瞬間、こんなところに突っ立っていては関係者の邪魔にならないだろうか、と居場所のなさに困り、2階の記者席に移動した。

記者席はピッチ全体が見渡せる
記者席はピッチ全体が見渡せる
 記者席は眺めがよく、ピッチ全体が見渡せる。しかしここは観覧のためにあるのではない。番記者はここで試合の雄雌を決するプレーを見つけ出し、記事にするのかと思うと頭が下がる。後でビデオなどで確認するのかもしれないが、常に瞬間瞬間を捉えなければならないはずだ。我々の取材対象物は止まっている(しかしながら経済はいつも動いているが)。その緊張感はなんだかぞくぞくさせた。
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