電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第184回

(株)JOLED 代表取締役社長 東入來信博氏


世界初の印刷法で19.3型4K実現
PC・業務用や輸送機などに用途展開

2016/8/19

(株)JOLED 代表取締役社長 東入來信博氏
 (株)JOLED(東京都千代田区神田錦町3-23、Tel.03-5280-1600)は、有機EL(OLED)パネルの量産開発加速、早期事業化を目的に、パナソニック/ソニーの有機EL開発部門を統合し、2015年1月5日に発足した戦略的カンパニーである。いわば、日本版有機ELの本格立ち上げを狙いとしたものであり、資本の75%は政府系の産業革新機構が出資しており、ジャパンディスプレイ(JDI)も開発支援、業務支援、共同開発を目的に15%を出資している。パナソニックとソニーの出資比率は各5%。
 開発拠点は京都と厚木にあり、開発・量産検証ラインを石川に持っている。先ごろ、印刷法では世界初となる4K19.3インチ有機ELパネルの開発に成功しており、いよいよ量産技術への期待が高まっている。同社を率いる東入來信博社長に今後の開発の方向性、アプリ開拓、大画面化などについて話を伺った。

―― 画期的な鮮明度を達成した19.3インチパネルの開発に成功されました。
 東入來 印刷法による有機EL開発はいよいよ新たな次元に突入したと考えている。重要なことは、液晶とほぼ同等レベルの消費電力を達成したことだ。これまでのホワイトOLEDは消費電力が大きいという欠点があったが、これを克服した。しかも、印刷法による有機ELとして長寿命を確認しており、少なくとも2万時間以上は行けるだろう。

―― さらなる大画面化が視野に入ってきます。
 東入來 我々はフルHDで低温ポリシリコン(LTPS)と同等レベルの消費電力を実現した12.2インチの開発成功からスタートした。そして、今回の19.3インチの開発成功で、タブレット端末にとどまらず、次世代ディスプレーの世界が視野に入ってきた。IoTを実現するスマート家電なるものが話題になりつつあるが、有機ELこそ、そうした次世代ディスプレーにふさわしいと思う。何よりも、黒が深く、色のキレは素晴らしい。モビリティーも問題ない。印刷法で行けるのかという疑問も多く寄せられたが、我々はきっちりと世界最高レベルの画像を作り上げることができたと自負している。

―― JDIの石川に試作ラインを立ち上げ中です。
 東入來 この4K19.3インチパネルは京都技術開発センターで試作したものだ。京都のプロセスを使ってエンジニアリングサンプルに踏み切った。石川には試作・量産検証ラインを整備しており、17年の年明けにも本格的なサンプル出荷を始め、17年末には量産開始へ向けての動きが加速するだろう。印刷法で疑われている歩留まり向上を一気に図っていく考えだ。

―― 印刷法を使うとコスト力が高まりますね。
 東入來 何しろ工程数が約半分になるわけだから、価格競争力を持つ。4.5Gで結果を出して、より大型基板に移行すれば、さらにコスト競争力を持つ。4Kの30インチクラスも想定しており、20年の東京オリンピックのころには8Kが本格化するだろうが、我々もそこは意識している。飛行機のファーストクラスには30インチクラスのディスプレーが搭載されていく見通しだが、この機内エンターテインメントシステムで使用するディスプレーは積極的に獲得していきたい。

―― 新たなアプリとして想定されるものは。
 東入來 車載の電子ミラーには最適なディスプレーだと思っている。また、JOLEDのパネルはとにかく重量が軽い。この軽いという特徴を生かして鉄道車両といったような様々なディスプレー、さらには紙に代わる電子版の吊り広告などにも使えるだろう。シートディスプレーという世界もIoT時代には重要であり、それこそテーブル、椅子、デスクなどにも有機ELが使われることになるだろう。フレキシブルシートデバイスという分野になれば、印刷法による有機ELが有利なことは間違いない。本格量産に向けて装置や材料の確認も急いでいる。蒸着法による有機EL量産については海外勢に先を越されたが、いよいよ日本勢の反転攻勢の時がやってきたといえるだろう。

(聞き手・特別編集委員 泉谷渉)
(本紙2016年8月18日号6面 掲載)

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