商業施設新聞
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No.577

あの日、ぼくはペッパーに話しかけることができなかった。


高橋 直也

2016/10/11

 商業施設でもロボットを導入する機会が増えた。特にソフトバンクグループが展開している「Pepper(ペッパー)」は頻繁に見かける。ソフトバンクの携帯電話ショップだけでなく、TSUTAYA、スーパーマーケットなど様々な売り場で導入が進む。公共施設でも館内の案内役として導入実験をするという話題もある。

 一方で、『実験』を進めるということは、まだまだロボットは普及段階なのだと実感する。前述のペッパー君(ペッパーちゃん?)も導入自体は進んでいるが、一般消費者が活用しているのはまだ見たことがなく、利用が進んでいるとは言いがたい。そんな折、ペッパー君を利用しようか真剣に悩む出来事に遭遇した。

 筆者の自宅近くにあるTSUTAYAにもペッパー君が導入されており、何の案内をしてくれるのか説明はなかったが、どうやら商品のありかなどを教えてくれるらしかった。ただ、ペッパー君の近くには商品の在庫を検索する端末があるので、普段はその端末を使っていた。

 その日は金曜日の夜ということもあり、スーツ姿の男女で店が繁盛していた。筆者はビデオレンタルコーナーで『ハンニバル』を探していたが、見当たらなかった。そこで端末で探そうとしたが、数人が順番待ちをしていた。一方、ペッパー君の前には誰もいなかった。端末の順番はなかなか進まず、ペッパー君に聞いてみようかな、と彼の前に立った。

 ペッパー君は筆者に挨拶してくれた。「何でも聞いてください」のようなことを言ってくれたと記憶している。陽気なアメリカ人なら「ハイ、ペッパー。レクター博士がスプーンで脳ミソを食べさせるシーンが見たいんだ。ハンニバルはどこにあるのかな」と話しかけたのかもしれない。しかし筆者は陰気な日本人なので、周囲の客の視線が気になってしまった。要は一人でロボットと会話するのを見られるのが恥ずかしかった。結局、端末に並び直して検索した。しかも所定の場所になかったので、最後には店員に聞くはめになった。

ペッパー君……声をかけてくれてありがとう
ペッパー君……声をかけてくれてありがとう
 後日談というほどでもないが、最近そのペッパー君はいなくなった。色々あって転職したのだろう。

 誰もが筆者みたいな性格ではないと思うが、まだ一般消費者がロボットを使う、ということに抵抗があるのではないか。ペッパー君も技術的には相当すごいと思うのでもったいない。技術の向上とともに消費者に慣れてもらう機会が必要だと感じる。ロボットは工場、物流施設などで活用されており、すでに間接的には人間の生活を豊かにしてくれている。しかし一般消費者を直接ハッピーにしてくれるには、もう少し時間がかかるかもしれない。
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