商業施設新聞
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No.583

博多のいちばん長い日


松山 悟

2016/11/22

博多駅前道路陥没、「JR博多シティ」から撮影
博多駅前道路陥没、「JR博多シティ」から撮影
 11月8日午前5時15分ごろ、福岡市博多区のJR博多駅前から複合商業施設「キャナルシティ」方面に向かう「はかた駅前通り」に50mほど入った場所が陥没した。5車線の道幅いっぱいの約30m四方、深さ約15m。原因の詳細は調査中だが、市営地下鉄七隈線延伸工事が主要原因だと市が認めている。

 午前9時45分、弊社福岡支局にいた筆者はスマホのけたたましい音に驚く。「地震が来るのか」と、すぐスマホを見たら、福岡市の避難勧告発令だった。大規模陥没がさらに広がる可能性とライフラインが切断され、辺りにガス臭が漂っていることから、周辺ビルに避難勧告が出されたものだった。

 幸い福岡支局は対象外の地域だったが、筆者はカメラを持って歩いて3分ほどの現場に駆け付けた。しかし、現場には近づけなかった。事故現場を中心に半径50mほどは立ち入り禁止になっており、消防車やパトカーが詰めている。

 大規模陥没は一挙に陥没したわけではなく、道路2カ所から崩れ始め、徐々に広がっていったという。工事関係者は現場に水が流れ込み始めた時点で避難するとともに、道路の通行止めの措置を取った。このことが、死傷者を出さずに済んだ。この事故が通勤時間帯に起きていたらと思うと悪寒が走る。

 朝のニュースで全国に流れたのだろう。遠方の知人友人から安否を気遣ったメールやLINEをたくさんいただいた。ありがたいことだと感謝の念が沸く。

 JR博多駅周辺の商業施設のうち「アミュプラザ博多」「博多阪急」は通常営業したが、「KITTE博多」「JRJP博多ビル」「博多デイトス」「サンロード地下街」は臨時休業した。近接するホテルも営業できず、予約客を他のホテルに振り替えるなどの混乱が続いた。店舗も停電のため、冷蔵庫の食材を破棄処分するところも出た。

 思わぬ事態だったが、復旧は予想以上に早かった。

 11月14日現在、事故発生以来、工事関係者の不眠不休の作業で、ライフラインはほぼ復旧し、埋め戻し工事は仕上げ段階まで来ており、安全性が確認され次第、道路の通行が再開される見通しだ。ただ、ライフラインは迂回ルートを使っており、本格復旧はこれからとなる。

 停電、ガス漏れ、一部銀行のATM停止などのライフラインの切断で、身動きが取れない状態は、パニックに繋がる恐れがある。いつも当たり前のように暮らしているが、都会はもはや人工基盤の上にある街だ、ということを思い知らされた。
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