電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第176回

SIIQ、オール九州の新産業創出を支援


立地企業の要素技術、大学シーズをデータベース化

2016/12/9

 九州半導体・エレクトロニクスイノベーション協議会(SIIQ、福岡市博多区博多駅東2-15-19、Tel.092-473-6649)は、経済産業省が進める「産業クラスター計画」の推進機関として2002年5月に設立され、設立15年目に入っている。この間、全九州半導体技術フォーラム、ビジネスマッチング会、シーズ調査および発信会、企業連携型人材育成事業などを、毎年、継続して開催しており、九州に立地する電子デバイス関連企業の新事業・新技術創出および企業間のネットワーク強化、アライアンス促進を支援している。

会長は上田康弘氏、会員数約200

 15年4月から上田康弘氏(ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング(株)代表取締役執行役員社長)が3代目のSIIQ会長に就任している。初代会長は佐々木元氏(日本電気(株)元会長、SIIQ名誉顧問)、2代目会長は久留巣敏郎氏(現・Sony Electronics(Wuxi)Co., Ltd. 董事・総経理、17年1月1日付でソニーセミコンダクタマニュファクチャリング(株)執行役員副社長に着任)。

 会員数は195(16年12月1日現在)。近年、200前後で新陳代謝があるようだ。会員の内訳は企業60%、個人会員20%、大学・高専9%、産業支援機関6%、自治体5%。
 連携機関として、おおいたLSIクラスター構想(大分県)、セミコンフォレスト推進会議(熊本県)、九州環境エネルギー産業推進機構(K-RIP)などがある。

IoT時代の技術革新にオール九州で挑む

 SIIQ設立4年が経過した06年3月、時代の変化に即した半導体関連産業の成長を実現するために「九州シリコン・クラスター新発展戦略」を策定。さらに会員ニーズを踏まえたビジネスに直結する事業を行うために、会費制を導入(07年度)するとともに、産業界主導の部会設置・改組(07年5月~)などの組織改革を断行した。

 11年度から15年度までの5年間は“発展期”と位置づけ、「半導体・エレクトロニクス産学振興ビジョン」を策定し、新分野・新市場展開を通じたビジネス創出を目標に、研究会・商談会や海外展開支援事業を中心に活動。

 そしてIoT(Internet of Things)時代を迎えている現在、環境や医療、教育、交通など公共システムを含む様々な生活領域において、これまでにない革新的な技術やサービスの創出が不可欠になるとし、このビジネスチャンスにオール九州で挑む。

事業を推進する2部会

 SIIQは現在、「イノベーション創出部会」「ニュービジネス創出部会」の2部会を編成し、事業展開している。

 「イノベーション創出部会」では、14年3月に九州管内21大学の2500を超えるシーズの中から、事業化の可能性が高い70の技術シーズを選定し、「九州発大学シーズ70選」を発刊。これをベースとした個別プロジェクトを組成し、事業化に向けた研究会を立ち上げている。また、16年3月には、企業編となる企業技術70選「世界を変える!九州テクノロジー」を発刊した。

 「ニュービジネス創出部会」では、九州域内外の大手半導体と九州の中小企業とのビジネスマッチング事業を実施するとともに、SIIQ会員相互のネットワーク形成を目的に、会員企業プレゼンテーションを行い、夕食会やゴルフ交流会も共にし、親睦を深めている。

 「グローバルビジネス創出部会」では、ホーチミン半導体協会とMOU締結(13年11月)などアジア地域の現地産業支援とのネットワークを活用した産業交流事業を実施しているほか、グローバル人材の確保・育成を目的とした事業を実施している。

SIIQ統括コーディネーター、牧野豊氏に聞く

SIIQ統括コーディネーターの牧野豊氏
SIIQ統括コーディネーターの牧野豊氏
 SIIQの統括コーディネーター、牧野豊氏に近況を伺った。牧野氏は1973年に松下電器産業(株)に入社。生産技術研究所生産設備設計部門に配属され、電子部品・電子機器の生産技術・生産設備設計に従事し、電子部品実装機の開発を手がける。43歳の時から、アメリカ松下テクノロジー(株)の取締役として、約6年間の海外勤務を経験。最終職歴はパナソニックファクトリーソリューションズ(株)企画部部長。定年退職後、10年6月からSIIQ統括コーディネーターに就任している。現在65歳。

―― 統括コーディネーターの職務は。
 牧野 主に海外市場開拓、産産連携、産学連携になります。

―― 海外市場の開拓状況は。
 牧野 ベトナムのホーチミン半導体協会とMOUを締結したほか、今ではマレーシア、台湾、ドイツ、米国、イスラエル、インドなどとネットワークを形成しています。

―― イスラエルのテルアビブに行かれたそうですね。
 牧野 公的な使節団に参加させていただきました。

―― 率直なご感想は。
 牧野 テルアビブはビジネス都市で、大企業はないのですが、スタートアップが3000以上存在します。様相はシリコンバレーと同じです。スタートアップは一匹狼が多く、ITのアイデアと簡単な実証を加えて販売しているものもありますが、世界中から引き合いがあり、玉石混交のなか、投資家は安いからまとめて買う、といった印象でした。

―― まさにグローバル展開ですね。
 牧野 先日、SIIQにもサウジアラビアの企業から引き合いがありました。大学シーズの1つだったのですが、引き合いの理由を尋ねると、石油枯渇後に役に立つ技術になるかもしれないということでした。

―― 想像を超えますね。さて、九州の半導体、エレクトロニクス企業の特徴は。
 牧野 九州には製造装置メーカーや材料・部材メーカーなど、半導体関連事業所が約900社あります。これだけ集積している地域はほかにないということです。

―― 立地企業の長所と短所は。
 牧野 技術レベルはかなり高いです。特に今は製造装置メーカーが伸びています。短所は、技術力は持っていても営業が苦手というところでしょうか。

11月18日にソニーセミコンダクタマニュファクチャリング長崎TECで開かれたSIIQ会員交流会の様子(写真提供・SIIQ)
11月18日にソニーセミコンダクタ
マニュファクチャリング長崎TECで開かれた
SIIQ会員交流会の様子(写真提供・SIIQ)
―― オール九州での取り組みにについて。
 牧野 県単位での垣根はあります。でも、他の地域に比べたら垣根は低いです。九州はアジアに向けて地の利もありますし、SIIQ会員同士で横の連携も広がっています。

―― 個人的に何かご意見がありますか。
 牧野 景気には波がありますよね。企業が不況の時こそ、SIIQの役目があり、大学シーズの紹介や企業マッチングなど、新しい玉を仕込まなければいけない時期です。

オール九州が一丸となった成果に期待

 15年に及ぶSIIQの活動のなかで立地企業の要素技術、大学シーズを正確に把握し、データベース化しており、分野別、工程別に企業群が分かり、これを礎に今後ますます横連携、グローバル展開が期待される。IoT時代を迎え、異分野の産業が融合し新産業が誕生する時、オール九州が一丸となった成果を見てみたい。

電子デバイス産業新聞 福岡支局長 松山悟

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