電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第217回

2020年ワールドロボットサミット開催に向け全力投球のニッポン


~ロボット関連3団体の平成29年新年賀詞交換会は超盛り上がっていた~

2017/1/20

 新年会ラッシュが続く毎日である。各種工業団体、大手企業、さらには会社としての付き合い、個人ベースまで含めれば、今年も実に28回の新年会に出席させていただく幸運(不幸という人もいる)に恵まれている。

 しかして、これだけの数をこなせば、それこそ新年会のはしごも多く、15~25分いただけで「こんちわ、さよなら」と退場してしまうことも多い。全くもってお前は何のために来たのだ、という非難がましい目線を浴びながら新年会のはしごをしていると、あまりに情けなく涙がこぼれることもある。大体が新年会というのは、気のおけない仲間と功利計算もなく、駆け引きもなく、新春の寿ぎを酒で酌み交わすというのが本当であるが、そうした機会は1~2回もあればいいほうなのだ。

 それはさておき、1月11日に東京・白銀台の八芳園で開催された、ロボット関連3団体の新年賀詞交歓会は超盛り上がっていた。何しろ安倍首相が先導し、政府肝いりのロボット新戦略が3年目に入る年であるからして、力強い様々なコメントが多く聞かれたのだ。

挨拶される日本ロボット工業界の会長 稲葉善治氏
挨拶される日本ロボット工業界の会長
稲葉善治氏
 スピーチのトップを切ったのが日本ロボット工業会の会長である稲葉善治氏(ファナック(株)代表取締役会長兼CEO)であった。同氏は「2016年のロボット需要は70%を占める海外の情勢が良くなかったために、国内は健闘したものの、世界全体の産業用ロボットは3%増にとどまった」と、まずは残念そうな表情を浮かべた。しかして、17年については中国の高い自動化意欲、欧州のインダストリー4.0推進、さらに日本の製造業の国内投資回帰などのプラス要素が奏功するとして、今のところは前年比7%増の7500億円はいくだろうと予想していた。
 そしてまた、政府が強烈にバックアップするロボット革命イニシアティブ協会と連携を深め、産学連携の推進、国際標準化の推進も期待できるとコメントされた。

 「今年は2年に1回の国際ロボット展も開催される。3団体の1つである製造科学技術センターと提携し、ロボットの性能評価の仕組みづくりを進める。同じく提携する3団体の1つであるマイクロマシンセンターとも組んでIoT推進のための研究開発に注力する。MEMSデバイスは今や1.4兆円の規模まで拡大しており、ロボット推進のコアとなっていくだろう」(稲葉氏)

 次いで来賓を代表して経済産業省の製造産業局長である糟谷敏秀氏が講壇に立ち、静かではあるがはっきりとした口調でロボット業界全体に檄を飛ばしたのだ。少子高齢化のこの日本にあって経済成長を果たすためにはロボット新戦略を推進する他はないとの立場で、人材育成や大型イベント開催についてコメントされた。

 「ロボットはただ購入しただけではすぐ使えない。これを合わせ込むためのシステムインテグレーターが必要であるが、これが非常に不足している。政府としてはこのインテグレーターを3万人に倍増すべく様々な補助を行う。これによって中小企業へのロボット導入が加速するだろう。そしてまた、2020年には東京オリンピックが開催されるが、この年に何と日本でワールドロボットサミットという一大イベントが開催されるのだ。政府・民間を挙げてこのイベントの大成功を勝ち取っていきたい」(糟谷氏)

 会場のあちこちでは談笑の渦が多くできていたが、非常に目立ったことは外国の人が多かったことだ。日本のロボット産業を活用しようという諸外国の活動が活発化しているのだ。そしてまた日本のロボット産業に食い込みたいという外国のハード/ソフトの企業が多いこともよく分かった。

 超盛り上がりの新年賀詞交歓会ではあったが、中国の成長鈍化がもたらす影響は大きく、ここ1~2年は世界のロボット普及もかなり減速しているとの事実がある。海外の伸びを期待するよりも国内製造業の多くがIoT革命に邁進し、ロボットをフル活用する設備投資を断行することのほうが、よっぽど効果があると思えてならなかった。


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。30年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 社長。著書には『半導体業界ハンドブック』、『素材は国家なり』(長谷川慶太郎との共著)、『ニッポンの環境エネルギー力』(以上、東洋経済新報 社)、『これが半導体の全貌だ』(かんき出版)、『心から感動する会社』(亜紀書房)など19冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長 企画委員長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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