電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第218回

半導体/ディスプレーの設備投資拡大で2016年の製造装置は23.1%増


~ウハウハの大活況で超明るい新年会、しかして2017年は慎重姿勢~

2017/1/27

 「2016年の半導体およびディスプレーに対する設備投資は実に順調であり、何と前年比23.1%増となった。データサーバー向けの3D-NANDフラッシュメモリー、車載関連のセンサー、さらには次世代電子ディスプレーの有機ELがいずれも高成長が見込まれるため、設備増強の動きが相次いだのだ」

 静かな口調ではあるが、多少の喜びの表情をたたえてこう語られたのは、一般社団法人 日本半導体製造装置協会(SEAJ)会長の牛田一雄氏である。1月12日に東京・如水会館で開催されたSEAJの新年会の冒頭挨拶の時であった。牛田氏は今年、創立100周年を迎えるニコンの代表取締役社長である。周知のようにニコンはステッパーの開発などで世界に知られる装置メーカーであり、一時代を築いてきた輝かしい過去を持っているのだ。

 しかして牛田会長は、17年の世界の装置販売は0.5%の成長と述べられ、慎重な姿勢であることを示唆された。米国のトランプ新政権誕生で保護貿易の懸念が強まり、輸出関税の点で日本の製造装置に不利が生じるかもしれないと考えたのだ。さらに、爆裂するトランプ大統領は法人税を35%から15%に下げると明言しており、これまた高い法人税で戦う日本法人には不利に働く。SEAJとしては強く政府に法人税の引き下げを要求しているようだが、まだしっかりとした具体案が出てこないのは電子デバイス関連の企業には不安材料といえるだろう。

 次いで、来賓挨拶で壇上に立たれたのがソニーセミコンダクタソリューションズの代表取締役社長の清水照士氏である。清水氏はソニー半導体の外販比率は90%に達しているとして、とりわけハイエンドが伸びていく方向にあると示唆された。そしてまた最先端の車載向けCMOSイメージセンサーのビデオを公開されたが、これは実に驚くべきものであった。

 これまでの特性に加えて100℃の高温でも動くことを達成し、LEDのフリッカーを止める技術も確立している。自動車のTier1メーカーからものすごい評価を得ているというのだ。これもあってかTier1大手のデンソーはソニー製のCMOSイメージセンサー採用を決定しており、これに連動しトヨタ自動車もソニー採用に動いている方向だ。

 「スマホ向けセンサーについては今後搭載個数も増えていき、また中国メーカーなどもハイエンドタイプを多く使い始めている。車載センサーも伸びてくるだろう。2017年については、もう少し設備投資しなければ、とても間に合わない」(清水氏)

 政府を代表するかたちで挨拶の講壇に立たれたのは、経済産業省の大臣官房審議官の三田紀之氏である。三田氏は、日本こそがIoT革命の先頭に立ち、生産およびビジネスの成功モデルを世界に提供し発信すべきだと述べられた。また、SEAJが進めるインドにおける半導体市場の開拓調査を経産省も全面支援していくという方針を明らかにされた。

ウハウハのSEAJ新年会の鏡開き
ウハウハのSEAJ新年会の鏡開き
 その後、大きな酒樽を叩き割っての鏡開きが行われ、会場は一気に大盛況に包まれていった。一昨年や昨年あたりとは様相が明らかに異なり、あちこちで明るい談笑の声が大きく上がっていた。筆者は大概の場合、こうした談笑の渦には入らず、いの一番にローストビーフの列に並び2~3皿は軽く食べてしまう。その後も高い料理の順番にいそいそと並び、ひたすら食べ続ける。談笑などしていたら、おいしい料理はみな食べられてしまうからだ。こうしてひたすらガッつく筆者に多くの人が声をかけてくるのだが、食べることに忙しく適当な返事をしていたことをこの場を借りてお詫びを申し上げたい。

 それはともかく、これだけ超明るいウハウハのSEAJの新年会は久方ぶりのことであった。IoT革命がもたらす電子デバイスの設備投資活況は一時的なものではないのだ、という確信を得たようにも思う。中締めで挨拶に立たれた荏原製作所の辻村学専務は、もはや舞い上がっているとしか言いようのない満面の笑みでこう叫ばれた。

 「こんなに注文が来たら、作り切れないと思っている人も多いでしょう。でも、みんな明るいからいいじゃないですか。過去150年をさかのぼっても半導体を超える革命は出ていません。半導体は不滅です。またSEAJも永遠に不滅であります」


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。30年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 社長。著書には『半導体業界ハンドブック』、『素材は国家なり』(長谷川慶太郎との共著)、『ニッポンの環境エネルギー力』(以上、東洋経済新報 社)、『これが半導体の全貌だ』(かんき出版)、『心から感動する会社』(亜紀書房)など19冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長 企画委員長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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