電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第207回

(株)ソシオネクスト 代表取締役会長兼CEO 西口泰夫氏


5年以内のIPOに向けて発進
IoT対応デバイスが最大の武器

2017/2/3

(株)ソシオネクスト 代表取締役会長兼CEO 西口泰夫氏
 (株)ソシオネクスト(横浜市港北区新横浜2-10-23、Tel.045-568-1000)は、パナソニックと富士通のシステムLSI設計部門が統合して作られたカンパニーであり、2015年3月に事業を開始した。SoCおよびそれを核とするソリューション/サービスの設計・開発・販売を行うことをメーンとし、本格軌道に乗り始めている。16年3月期は約1400億円の売り上げを上げたと推定され、実に営業利益は11%を超えたという。代表取締役会長兼CEOである西口泰夫氏に話を伺った。

―― 活動を開始してもうすぐ3年目ですね。
 西口 ありがたいことに事業は順調に推移している。当社の武器は何といっても人材の質が高いことだ。2700人の技術者集団であり、海外にも400人がシフトされている。独立系の半導体設計集団としては、おそらく世界最大規模ではないだろうか。とりわけ旧パナソニック、旧富士通で活躍したベテラン陣の存在が物を言っている。

―― さて、IoT時代の本格到来ですが、この対応については。
 西口 私たちが持つ映像、イメージング、ネットワーク、コンピューティング分野での技術の蓄積は、まさにIoT時代に対応している。強い追い風が吹き始めたと感じている。当社が世界No.1を持つデバイスは多く、高速光ネットワークのAD/DA、事務機器、ネットワークSoCなどはトップシェアであり、お客様の信頼を得ている。ネットワークSoCについては、他の追随を許さない信頼性の高い独自の先端IP技術を持っている。100G、400G、1Tへと展開する光ネットワークのバージョンアップに対しても高速かつ低消費電力のデバイスを提供できる。

―― カスタマイズチップも増えてきますね。
 西口 そのとおりだ。コンピューティング的には分散処理が増えてくると見通しており、カスタマイズのサーバーやチップが求められる。ドローン、ロボット、ウエアラブル、デジタルサイネージなどの分野からのSoCの引き合いも増えてきている。また、テレビは8Kハイビジョンに向かっているが、ここでもIoT対応のネットテレビが増えてくるわけであり、当社の持つSoC技術が生かされるところだ。
 テレビ、カメラ、ドキュメントなどの画像処理アプリケーションでは、当社の実績のあるASSPをコアに豊富な各種IPを組み合わせ、お客様の仕様にカスタマイズしている。また、IoT機器向けには高いレベルのセキュリティーチップ、超小型・低消費電力のセンシングが必要だが、これも得意技の1つだ。

―― 今後の人材戦略については。
 西口 質の高い現在の人材の持つ知的財産を新しい人たちに継承していくことが重要だ。海外拠点の拡大も進んでおり、海外における人材登用も今後のポイントだろう。当社は開発したソリューションを世界中に発信していくが、中国や台湾などのアジア地区をはじめ、新たに設立したイスタンブール拠点など、世界各地でお客様の開発・製造拠点に根差した開発・サポート体制を構築していく。

―― 次世代ディスプレーへの対応も重要ですね。
 西口 放送・ネットワークコンテンツの世界では、4Kから8Kへと映像の高精細化が進んでいる。表示デバイスの世界で普及し始めているのは有機ELや量子ドット技術を使った新しいディスプレーだ。当社は最新のディスプレーに対応する各種インターフェースやコーディック処理、AV信号処理、暗復号処理をワンチップに集積したシステムLSIおよびインターフェースLSIなどを開発している。

―― 今後の拡大方向については。
 西口 もちろん、売り上げのパイの拡大は一定程度必要であるが、何といっても利益率が問題だ。今後も引き続き10%以上の営業利益を継続するべく努力していく。5年以内のIPO実現に向けてのスタートが切れたと感じており、今後ロードマップ作りを進めていく。M&Aについても想定内にはある。

(聞き手・特別編集委員 泉谷渉)
(本紙2017年2月2日号1面 掲載)

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