商業施設新聞
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第65回

三菱地所・サイモン(株) 代表取締役社長 山中拓郎氏


20年に「御殿場」増設、ホテルも設置
深谷市に10施設目も

2017/2/14

三菱地所・サイモン(株) 代表取締役社長 山中拓郎氏
 三菱地所・サイモン(株)(東京都千代田区大手町1-9-7、Tel.03-3275-5252)は、国内9カ所にアウトレットモールの「プレミアム・アウトレット」(以下、PO)を展開している。これまで積極的に新設、増設を行い、直近では御殿場PO(静岡県御殿場市)の大規模な増設を発表した。さらに2018年に10施設目を埼玉県深谷市で開業する予定だ。代表取締役社長の山中拓郎氏に事業の動向、今後の展望を聞いた。

―― 16年はいかがでしたか。
 山中 熊本地震による鳥栖PO(佐賀県鳥栖市)への影響、また、15年の酒々井PO(千葉県酒々井町)2期オープンの反動があり、16年はさすがに15年よりは落ち着いているが、下期に入り堅調に推移している。

―― インバウンドを順調に集客しているようですが、動向は。
 山中 来館が目立つのは御殿場PO、りんくうPO(大阪府泉佐野市)、鳥栖PO、酒々井POで、現時点では来場者数は前年を超えている。購買傾向として高級ブランドが人気であったが、最近は必ずしもそうではなくなってきており、日本人客の購買に近くなったかもしれない。

―― 日本人の購買動向は。
 山中 お洒落なアスレチックウェアも増えており、最近はスポーツカテゴリーに勢いがある。また、飲食、食物販など食系は堅調に推移している。

―― 世間では服が売れない、とよく言われます。
 山中 当社の施設も無関係ではないが、価格の優位性があるので、影響が少ない。また、出店カテゴリーも食系に加え、最近はキッズ系、ペット系、キャラクターグッズもある。期間限定ではdysonも出店しており、非アパレルカテゴリーも人気だ。アウトレットの中でもトレンドが変わってきていると言える。

―― 御殿場POで大規模な増設を計画しています。
 山中 店舗面積1.6万m²、約100店を増設し、さらに小田急グループが運営する日帰り温泉とホテルを設置する。オープンは20年春を予定している。
 我々のビジネスモデルとしてすべての施設において増設を常に構想、検討している。実際、御殿場はすでに3期施設となる。開業した00年の店舗数は83店で購買客数は560万人だったが、15年は約210店、1000万人超に拡大した。
 増設による売上高の目標などは設定していないが、15年のテナント売上高が891億円だったので相応の効果を期待している。また、POとして初めてホテルを併設するが、このホテルを拠点に周辺も観光していただくこと、POでゆっくりと買い物を楽しんでいただくことを期待している。

―― 御殿場でもインバウンドは伸びているようですね。
 山中 我々としても海外の旅行会社に富士・箱根エリアの見どころや魅力を伝え、ツアーに組み込むことを提案している。当社単独では集客に限界があるし、御殿場の周辺には観光名所、温泉があるのでエリアとして盛り上げたい。他のPOも温泉や観光名所が周辺にあり、エリアとしてプロモーションしている。レジャーという大きな体験の一つとして、当社のアメリカの街並みを再現した施設で優雅な時間を過ごしてほしいと思っている。

―― 新施設も計画中です。
 山中 深谷市が新たな観光拠点を設置する事業の一環として、アウトレットモールの優先協議者に選定された。関越道・花園ICの近くに18年に開業する予定だ。POの立地をみると東名高速道路のIC近くに御殿場PO、東北自動車道のIC近くに佐野PO(栃木県佐野市)があるなど各高速道路に近隣する。それもあって関越道の周辺で新設を検討していたところ深谷市の募集があり、手を挙げた。

―― 現在は新施設の構想を進めている最中ですか。
 山中 詳細は検討中だが、他のPO同様に車で90分圏内を商圏とするだろう。さらに花園ICは日本で一番通過交通量が多いICであり、色々な層が訪れることを踏まえたテナントミックスとしたい。もちろん将来的な増設を前提にしている。

―― 日本にアウトレットを新設する余地はまだありますか。
 山中 一概には比較できないが、例えばアメリカの人口をベースに考えてみると3.3億人で日本の約3倍。一方、アメリカはアウトレットモールが200施設程度ある(日本ショッピングセンター協会によると日本は38施設)。これまでのようなスピードの新規開発は難しいと思うが、まだ新設する余地はあるだろう。
 佐野など当社の施設をきっかけに周辺の開発が進んだ事例もあり、アウトレットモールが地元に貢献できると行政の評価もいただいている。さらに行政が高速道路の整備を進めているが、これは郊外に開発する我々にとってはチャンスであり、追い風になるだろう。

(聞き手・副編集長 高橋直也)
※商業施設新聞2176号(2017年1月17日)(1面)
 デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.213

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