商業施設新聞
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No.599

愛友市場が愛友ウォークに


今村 香里

2017/3/21

 2月10日に広島駅前の再開発ビル「エキシティ ヒロシマ」(広島市南区松原町)がプレオープンした。これでようやく、広島駅南口前の再開発A・B・Cブロックが完成し、新しい時代がスタートしたように感じる。

 エキシティは、地下1階地上11階建ての商業棟、地下1階地上46階建ての住宅棟で構成する延べ約10万m²の大型再開発ビルだ。今回プレオープンしたのは、住宅棟と商業棟低層の区画の一部。今後は核店舗の「エディオン蔦屋家電」と、フィットネスクラブの「ゼクシス」が4月にオープンし、グランドオープンとなる予定だ。

発祥の年号を刻んでいる愛友ウォークの看板
発祥の年号を刻んでいる愛友ウォークの看板
 注目したいのは、再開発前にこの地にあった商店街“愛友市場”にちなんだ「愛友ウォーク」というゾーンだ。天井高をあえて低くし、昔ながらの商店の路地を思わせるような空間となっており、「旬屋」(青果)、「ひらた」(お好み焼き)、「山口雑穀店」(雑穀店)、「つつむ」(肉まん)、精肉店「牛賢」(精肉店)が軒を連ねている。

 愛友市場は、戦後の広島駅前にあった闇市が発祥だと言われている。再開発以前の姿は実際に見たことはないが、飲食店、日用雑貨店、八百屋などの商店が路地にずらりと並んでいて、建物が近代化した現在では貴重な場所なのではないだろうか。

 再開発組合の幾久副理事長は、地権者としてお好み焼きの「ひらた」を出店している。プレオープンの式典では、「親が戦後からこの地で商売し一時は賑わったが、1970年頃から徐々に衰退した。その頃、再開発の話が出たがまとまらず、ようやく今日完成した。以前の活気を取り戻し、今後も立派な街になるよう店舗が一体となり頑張っていきたい」と挨拶した。

出店者の中でも古い山口雑穀店
出店者の中でも古い山口雑穀店
 聞くところによると、この場所で古くから営んでいた店舗はほとんど戻ってこなかったという。最初の計画段階では、入居するという店主も多かったが蓋を開けてみれば少なかったという感じだろうか。要因としては、事業がスムーズに進まなかったことや、店主が高齢で後継者もおらず、再開発を機に店を辞めてしまうということが挙げられる。少し寂しい気もするが、時代の流れとともに街が変わる中で、こうした事例は仕方ないことかもしれない。

 愛友ウォーク出店者の中で古いのは、副理事長が営むお好み焼き店と、山口雑穀店と聞いた。山口雑穀店の人になぜ再出店したかを聞くと「まあ、親がやっていた(残してくれた)からね」と特段の理由はなかったが、この地に愛着があることは感じられた。

 愛友ウォークの内看板には、戦後に創立した1946の年号を刻むなどし、当時の面影を伝えている。ここは時代や形態が変わっても、後世に受け継がれ“生き続く場所”なのだと思う。
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