商業施設新聞
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第72回

(株)マザーハウス 取締役副社長 山崎大祐氏


中期で30~50店体制に
17年は関西エリアに注力

2017/4/4

(株)マザーハウス 取締役副社長 山崎大祐氏
 モノが売れない時代と称され、商品にも「ストーリー性」が求められている。ファッションブランド「マザーハウス」の理念である「発展途上国から世界に通用するブランドをつくる」というプロダクトの背景にあるストーリーは多くの共感を呼び、創業10年で国内外で29店と店舗を広げた。3月で創業11年を迎え、第2フェーズに突入する(株)マザーハウス(東京都台東区台東2-7-1、Tel.03-4455-7407)の今後について、取締役副社長の山崎大祐氏にお話を伺った。

―― ブランドの概要から。
 山崎 バッグ、ストール、ジュエリーの3プロダクト戦略で、バングラデシュ、ネパール、インドネシア、スリランカの現地の職人とともにモノづくりをしている。現地トップクラスの労働環境を整え、現地の人たちが経済的にも自立できるようにしてきた。バングラデシュではジュートやレザー、ネパールは上質なカシミアやシルクなど、それぞれの国の強みに合わせた商品を生産している。デザイン、素材開発、生産・販売、アフターケアまで製販一体で手がけている。

―― 多店舗化はいつから。
 山崎 2008年あたりから単店としてやっていくのか、広げるのかの岐路に立ち、当社はアクセルを踏むことを選んだ。10店程度ないとPOSシステムも導入できず、素材開発をしてもロットにも届かない。ビジネスを成功させるためにはある程度の規模が必要だったからだ。
 そこで「Road to 10」と称して売り上げ10億円という目標を掲げ、ブランドを大きくするという共通の認識を持ち、多店舗化を進めてきた。ストーリーがあるのでブランドをデベロッパーに理解してもらうための一助となり、スムーズな出店につながった。ただ、当社は小売出身者が立ち上げたブランドではないので、初期はトライ&エラーで閉店した店舗も多々ある。

―― 店舗展開は。
マザーハウス梅田蔦屋書店
マザーハウス梅田蔦屋書店
 山崎 16年は名古屋星が丘テラス、横浜元町に路面店、コレド室町、梅田蔦屋書店に加え、新業態のジュエリー専門店「ジュエリーマザーハウス」を東京・秋葉原にオープンし、計5店を出店した結果、国内21店体制となった。内訳は路面店6店、商業施設内が15店。路面は足で探した店が多く、今後も実地で歩き、あったらいいなと思う街に出していく。
 当初多かった百貨店よりも最適面積25坪をとりやすくイベントも実施しやすいオープンモール系の商業施設にシフトしている。40~50人を集客するイベントを開催するので、できれば30坪程度が理想だ。

―― 客層も広がりました。
 山崎 今は、モノの「ストーリー」も重視される時代。時流にマッチしたこともあり、それが来店動機になっていたが、今はストーリーに関係なく来店するお客様が増えてきた。当初から、単にかわいい、かっこいいと思ってもらえる商品を作ることを目指していたので、商品力で集客できることは非常に喜ばしい。なお、全店の日報に目を通し、「使いづらい」といった声があれば工場と共有し、すぐに商品を変えることもある。お客様の声を商品に反映できるメーカーならではの強みだろう。

―― ターゲットは。
 山崎 メーンは30~40代の女性だが10~80代と幅広い。男性客の比率も3割で、カップルや3世代の来店も多く、ファミリーが強い館からのオファーが多い。そのため誰も排除しない店作りを心がける。男性も居心地が良く、長時間でも安心できる空間としている。

―― こだわりの店作りについて。
 山崎 手のぬくもりを感じられる雰囲気を大切にしている。主人公は商品。ライティングにもこだわり、角度や色合いなど徹底し、良く見える工夫をしている。コストを抑え、リスクを最小限にする目的もあるが、自分たちで床張りから手がけ、ゼロから店を作る。店舗スタッフも自分の手で何かを作り出す喜びを持つべきだと考えている。今の小売業にはそれが欠けている。喜びを店作りで体感でき、共有できることは非常に大きな意味を持つ。店に対する愛着の深さは強みになっている。

―― 店ごとに個性があります。
 山崎 「店は一つの中小企業で、店長は経営者であれ」と言っていて、店長を中心に戦略立案、人材管理、販売促進案やイベント企画を行い、相当の裁量がある。店はローカルに根差すことを目指し、SCによっては制約もあるが、積極的に地域イベントにも参加している。一例を挙げれば、谷中店の店長は谷中銀座商店街の理事を務めるなど、地域との関わりが深く、各店の多様性につながっている。

―― 既存店が強い。
 山崎 既存店は前年比110%を下回ったことがない。16年は同115%だった。この数字は、リピーターを生み出す“店の力”に尽きる。店では改装も定期的に行い、什器の入れ替えといったプチ改装からゾーニングを変える大規模なものまで、数店で同時進行していることもある。もちろん商品の開発力も大切だが、店頭はお客様と商品をつなげる入り口で接点。常にお客様が答えを持っているので、リアル店舗が果たす役割は大きく、常に活性化させていきたい。

―― 今後の出店は。
 山崎 これまで同様、毎年数店ずつ出していく。現在国内は21店だが、中期的な最適店舗数は30~50店程度だろう。エリアは首都圏に固まっているので、今後は分散していきたい。今、注力しているのは関西エリアで、16年11月に大阪・梅田にオープンしたが、さらに今春1店、今秋に1店を出店する計画だ。また、名古屋や福岡は1店ずつで、人的な面でも負担が大きいので、数店出し、ドミナントを形成していきたい。名古屋は名駅周辺や栄、福岡では博多地区を視野に入れている。優先順位として今は地方中核都市に出す時ではないが、数年後には出店を進めたい。

(聞き手・大塚麻衣子記者)
※商業施設新聞2183号(2017年3月7日)(5面)
 商業施設の元気テナント No.214

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