川崎重工業（株）（神戸市中央区東川崎町1-1-3、Tel.078-371-9530）の産業用ロボット事業が好調に推移している。2016年度（17年3月期）は半導体ウエハー搬送用クリーンロボットが過去最高の出荷台数を更新したほか、自動車や電機・電子分野を中心に国内外で販売を伸ばした。常務執行役員でロボットビジネスセンター長である橋本康彦氏に直近の動向などを伺った。

―― 16年度のロボット事業について。
　橋本　年度前半は円高などの影響も受けたが、通期でみるとロボット事業は好調に推移し、金額ベースで前年度比約15％増、台数ベースでは同約25％増と大きな成長を達成できた。用途別に見ても、主力である自動車や電機・電子分野をはじめ、幅広い分野で堅調に推移した。市場別では、中国での伸びが目立ったほか、国内、欧州、東南アジア、米州とグローバルで販売が拡大した。

―― 製品別で伸びたものは。
　橋本　全体的に堅調だったが、特に半導体ウエハー搬送用クリーンロボットと自動車向けのスポット溶接ロボットが好調だった。ウエハー搬送用ロボットに関しては15年度に過去最高の出荷台数を記録したが、16年度はそこからさらに30％程度販売台数を伸ばし、過去最高を更新した。当社のウエハー搬送用ロボットは世界トップクラスの装置メーカーから高い評価を得てグローバルで約5割のシェアを持つが、16年度はさらにシェアを高めた。

―― 人共存型ロボット「duAro（デュアロ）」の引き合いは。
　橋本　電機・電子関連を中心に、これまでロボットを導入したことがない企業からも引き合いがあり、16年度は1000台以上を販売した。16年4月から開始したレンタルビジネスも引き合いが増えている。また、海外でも需要が高まっていることから、中国・重慶市にある「川崎（重慶）機器人工程」に年1000台の生産体制を整備し、4月中に稼働を開始した。

―― ロボットの生産体制および増強計画は。
　橋本　国内では明石工場（兵庫県明石市、年産能力2万台）がメーンで、それに続くロボット生産拠点として、西神戸工場（神戸市西区）内に生産ラインを整備中だ。明石工場で行っているウエハー搬送用ロボットの生産機能の大部分を移管し増強する。17年度内には稼働を開始する予定で、ウエハー搬送用ロボットの生産能力は月産800台から同1300台まで拡大する見通しだ。
　海外では、中国・蘇州市にあるグループ会社「川崎精密機械（蘇州）有限公司」で15年6月からロボットを生産しており、現在、パレタイジング、アーク溶接、大型汎用ロボットを生産している。それらに加えて、小型・中型汎用ロボット「Rシリーズ」の生産も予定しており、蘇州拠点全体で17年内に年産7000台に対応できる体制を整備する予定だ。

―― 開発面について。
　橋本　人の作業をサポートするロボットの開発に取り組んでいる。当社のデュアロをはじめ近年、人とロボットが同じ場所で「共存」できる製品は増えているが、開発中の製品は人とロボットが1つの工程を「協調」して取り組むことをコンセプトにしている。11月29日～12月2日に開催される「2017　国際ロボット展」で発表できればと考えている。
　そのほか、ロボットに搭載するセンサーなどを電子デバイスメーカーと共同で開発する案件も出てきている。電子デバイスの進化はロボットの革新にもつながり、新しい技術などがあればぜひご提案いただきたい。

―― 17年度の方針を。
　橋本　主力の自動車および電機・電子分野を中心に、全方位で展開を強化していく。直近の受注も堅調に推移していることから、17年度も2桁％の増収を目指していきたい。社内的にもロボット事業に対する期待が高まっており、長期的には25年度までにロボット事業で売上高2000億円以上を目標にしている。
　当社としてはこうした拡販活動に加え、ロボットを身近な存在にしていく活動も大事にしていきたい。現状、ロボットは量産メーカーの工場であっても一部の工程にしか活用されておらず、中小企業の方はロボットが縁遠いものだと思っておられることも多い。様々な企業・用途で活用できる製品を開発ならびに提案していくことがロボットメーカーとして取り組むべき本質的な使命であり、当社が先頭を切って行っていく仕事だと思っている。