電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第229回

日本サイプレス(株) 代表取締役社長 長谷川夕也氏


IoT事業買収のシナジー効果大
日本ではゲーム、プリンターにも注力

2017/7/7

―― 2016年度(1~12月)と足元の状況を。
日本サイプレス(株) 代表取締役社長 長谷川夕也氏
 長谷川 16年度は前年度比17%増の売上高約19億ドルとなった。17年度は21億ドルを計画しており、第1・第2四半期ともに右肩上がりで推移している。
 16年は大きなトピックスが3つあった。1つ目は、創業者兼CEOのT・J・ロジャースが4月に引退し、8月に車載を含むプログラマブル システム製品の事業部長だった37歳のハッサン・エルコーリが就任したこと。2つ目は、Wi-FiやBluetooth、ZigBee製品など、ブロードコムからIoT無線通信事業と関連資産を買収したこと。3つ目は、前工程の主工場だったファブ4(ミネソタ州)の売却を決定したことだ。

―― エルコーリ氏はCEO就任後、新戦略を発表されましたね。
 長谷川 「サイプレス3.0」という17年からの新ビジョンを発表した。フォーカス分野として(1)オートモーティブ、(2)IoT、(3)インダストリアルの3つを掲げ、開発投資や人員補強などを積極的に実施していく。(1)は、全社収益の4割を、日本では6割を占める大きな事業だ。マイコン、タッチコントローラー関連製品を引き続き拡販していく。(2)は、ブロードコムとサイプレスのシナジー効果が非常に大きく、17年は当初売上目標数値の2倍になる見通しだ。例えばBluetooth Low Energy分野では、自動車のインフォテインメント、高付加価値な白物家電、ゲーム、プリンターでの採用が拡大している。(3)は、長期的かつ戦略的なお客様という位置づけで、会社の収益のベースとなる事業としてビジネスを構築していく計画だ。

―― 新製品について。
 長谷川 40nmプロセスを採用したTraveo2ファミリーを17年にサンプル出荷し、18年から量産を開始する。同製品は、クラスターやボディーECUなど自動車の各アプリケーション向けにカスタマイズされたもの。自動車のどのようなアプリケーションにも対応できるようレパートリーを拡充していく。
 このほか、PSoC6シリーズでワイヤレスインターフェースをサポートしているが、同製品の特徴は、ハードウエアにセキュリティー機能を持たせていること。この発想をTraveoやメモリーにも展開していく。特に自動車では、ソフトウエア上のセキュリティー対策に不安感を持つお客様が多く、自動運転のハッキング対応として要望が非常に高い。
 メモリーでは、例えばマイコン側でセキュリティー機能を持たないものに対し、代わりにメモリーに搭載して誤動作させないようにする。当社はDRAM以外のメモリーをすべて保有しており、引き続き注力していく製品分野だ。

―― 開発投資について。
 長谷川 17年は昨年よりも5000万ドルの追加投資を行う。IoT事業が想定以上の受注を得ており、USB Type-Cコントローラーも多くのアプリケーションに規格の採用が進むなかで伸長している。いち早く市場への製品投入を実現していく考えだ。

―― 生産体制について。
 長谷川 ファブライトを指向しており、委託比率は55%程度だが、今後は高まる見込みだ。前工程では、オースティン工場(テキサス州)のほか、売却したファブ4でも製造を継続しており、マイコンも自社生産すべく体制を整えている。委託先はTSMC、UMC、XMC、グレースセミで、プロセスは65nmまでを自社で手がけ、以降は委託している。後工程はバンコク工場とマニラ工場の自社ファブのほか、ASE、UTL、アムコー、KYECに委託している。

―― 日本市場の戦略は。
 長谷川 日本市場ならではのユニークなフォーカス分野として、ゲーム、プリンター市場を掲げている。ゲームは、日本のお客様2社が市場の85%を占め、日本が圧倒的に強い分野だ。一度プラットフォームを開発すると、長期的にお付き合いができる産業系のような分野でありながら、ボリューム的には民生のような数量を確保できるユニークな分野であり、徹底的に製品提案を進めている。プリンターも日本のお客様が市場シェア7割以上を占める強い分野。ここにもリソースと提案できる製品への投資を進めている。
 IoTは全社で注力する分野だが、日本では3カ月という短期間で数十人の人員を補強する計画だ。
 CEOのハッサンは私と同年代で、フランクに日本市場について話し合えている。また、日本市場の収益は全社の3割を超え、本社も重要視している。このため、日本のお客様のご要望が製品開発に直結しやすいのは利点と感じている。

(聞き手・澤登美英子記者)
(本紙2017年7月6日号1面 掲載)

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