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有機ELテレビはプレミアム


~「第33回IHSディスプレイ産業フォーラム」開催(5)~

2017/7/28

シニアアナリスト 朴慶善氏
シニアアナリスト 朴慶善氏
 大手調査会社のIHSマークイットは、7月27~28日に国内最多の受講者数を誇るFPD市場総合セミナー「第33回 IHSディスプレイ産業フォーラム」を東京コンファレンスセンター・品川(東京都港区)にて開催する。本稿では、その注目の講演内容を登壇アナリストに6回にわたって聞く。第5回は「TV市場Part2 OLED TV編」を担当するシニアアナリストの朴慶善(Park, Kyung-Seon)氏に主要テーマを伺った。


 ―― 有機ELテレビへの新規参入が相次いでいます。その背景は。
 朴 テレビの製品ライフサイクルが2017年を機に変わったからだ。液晶テレビ市場は、すでに台数のピークを打って減少トレンドに入り、安価かつ大型であればよく、差別化が難しくなった。だが、有機ELは、液晶と比べて明らかに高画質で、誰が見ても綺麗だと分かる新技術であり、消費者に訴求しやすい。
 ソニーのテレビ事業を振り返ると分かりやすい。10年前にプラズマテレビからいち早く撤退し、液晶テレビでも構造改革を繰り返しながら、減少トレンドのなかでハイエンド市場に集中する戦略をとった。今年から有機ELテレビに参入したのは必然ともいえる。
 アップルもiPhone発売10周年の今年、有機ELを採用する。液晶のまま世代を重ねても、販売台数の減少トレンドを止められないと考えたからだろう。

 ―― ただし、まだ出荷台数は少ないですね。
 朴 17年の有機ELテレビ市場は140万台とみており、ここにLGエレクトロニクスやソニー、パナソニックなど12ブランドが参入している。ここ1年で参入ブランドは2倍に増えた。壁掛けや音響などで差別化が図りやすく、1500ドル以上のプレミアムテレビ市場では37%、3000ドル以上では半分以上のシェアを獲得し、液晶テレビ市場を侵食している。

 ―― 高級テレビとして受け入れられたのですね。
 朴 現在は液晶テレビ+10インチの価格が対象になっている。例えば、55インチ4K有機ELテレビは、65インチ4K液晶テレビと同じ価格帯である。今後は85インチ4K液晶テレビに対抗するため、75インチ4K有機ELテレビが登場してくるとみている。

 ―― 普及への課題は。
 朴 (1)価格がまだ高い、(2)テレビ首位のサムスンが当面は有機ELテレビを商品化しない、(3)パネルの供給能力に限りがある、の3つだ。有機ELテレビ市場が1000万台を超えない限り、成長ステージに突入したと言うには早い。しかし、パネルの供給メーカーはLGディスプレー(LGD)1社しかなく、同社の増産投資だけに頼ると、1000万台を超えるのは22年以降になる。

 ―― インクジェット成膜技術の実用化が参入を加速しないでしょうか。
 朴 量産技術の確立が非常に難しい。LGDも採用の計画を遅らせており、21年時点でも現状の蒸着WOLED方式を採用していると想定している。実用化できれば、22年以降に中国FPDメーカーが参入してくる可能性はある。

 ―― 現在あるテレビ用有機ELパネルのサイズは55/65/77インチのみで、75インチはまだ実用化されていませんね。
 朴 LGDが75インチの開発を進めており、これを19年に実現する投資計画が浮上してくるとみている。8.5Gから異なるサイズのパネルを多面取りする、または10.5Gから75インチを多取りする、どちらかの方法で投資計画を立てると考えている。

(聞き手・編集長 津村明宏)



「第33回 IHSディスプレイ産業フォーラム」の詳細情報はセミナー事務局(E-mail : technology.events@ihs.com、Tel.03-6262-1824)まで。
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