商業施設新聞
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No.618

駅の楽しみ「駅そば」


山田 高裕

2017/8/8

 新聞記者という仕事は基本的に各地を飛び回るもので、必然的に様々な駅に立ち寄る機会も多くなる。その中で筆者が密かに楽しみにしているのは、駅の構内や近くにある、いわゆる「駅そば」だ。

 駅そばというと、とにかく早く、安くそばを出すことを追求していて、味やメニューの多様性といったものは二の次にされている、といったイメージが強い。確かに、駅そばにおいて早くそばを提供することは最重要項目だが、速度を大切にしながらも、味を追求しているという店も少なくない。

限られたスペースで、様々な工夫を凝らす駅そば屋
限られたスペースで、
様々な工夫を凝らす駅そば屋
 味の追求において、「そばの麺をどうするか」というのは重要だ。駅そばは早く提供する必要があるため、通常のそば屋のように麺を一から茹でて、といったことはせず、すでに茹であがった麺を仕入れ、店で湯にくぐらせて提供するといったところが多い。すでに茹でてある麺は、どうしても茹でたての麺と比べると舌ざわりなどの面で劣っていることは否めない。しかし最近は、比較的スペースに余裕があり、什器を配置しやすいホーム外の店舗を中心に、駅そばでも通常の麺を提供するところが増えてきている。

 またメニューについても、各駅共通の平凡なメニューしか用意していないといったイメージがある。確かに、基本となる「かけ」や「たぬき」といったメニューは、大体の店で共通している。しかし揚げ物などのトッピングを中心に、駅ごとに独自の路線を追求している店は多い。かき揚げでも店ごとに具が微妙に異なっていたり、春菊やちくわ、唐揚げなど通常のそば屋にも負けないバリエーションを用意している店もある。また、そばとは異なったメニューを提供し、それが注目を集めている場合もある。筆者がよく利用する総武線の秋葉原駅ホームの店では「ステーキカレー」が名物だし、名古屋駅ではホーム内の「きしめん」が全国的に有名だ。まだ食べたことがないが、姫路では小麦粉とかん水を使った中華麺に和風だしを組み合わせた、独自の「えきそば」が名物となっているらしい。

 こういった独自の取り組みをしている店も、駅そばに求められる「早く食事をすませること」という基本には妥協していない。昨今の商業施設では「滞在時間を長くする」ことが注目されているが、それとは真逆の「いかに短時間で、顧客に満足してもらえるか」を追求した業態が駅そばだ。駅という特殊な場所だけに、街中の施設、飲食店とは根本的に形態が異なるが、これも古くから続く商業の一形態だろう。
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