電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第211回

見えてきたセンチメートル級の高精度測位社会


~自動運転の実現に向けた大きな一歩

2017/8/18

 日本では、準天頂衛星システムの体制拡充や屋内でもシームレスな測位が行える環境の整備などが急ピッチで進んでおり、誰もがストレスフリーで迷うことなく移動できる「高精度測位社会」の実現がすぐ目の前に迫っている。

準天頂衛星システム4機体制整備へ

 2017年6月1日、準天頂衛星システム「みちびき」の2号機が、種子島宇宙センターからの打ち上げに成功した。この衛星システムは日本と経度が同じ、インドネシアやオーストラリアなどのほぼ真上(準天頂)を通る軌道で運用され(静止衛星含む)、米国が運用するGPS衛星と相互に補完することで、より高精度で安定した測位サービスを提供することが可能となる。なお、17年度中にはさらに3号機、4号機が打ち上げられる予定で、18年4月からは4機体制が整うことでセンチメートルレベルの測位サービスが24時間提供される。

準天頂衛星システム「みちびき」(画像提供:内閣府)
準天頂衛星システム「みちびき」
(画像提供:内閣府)
 センチメートルレベルの測位サービスにより、例えば歩行者は、よりパーソナライズされたきめの細かいナビゲーションを享受することができるだろう。建設現場では、携帯電話が圏外となるようなところでも基準点測量を行うことができ、測量の作業効率をアップすることが可能だ。さらに、自動車においては、自車位置の高精度な把握に、高精度マップ(ダイナミックマップ)、高度な車載センサーなどの技術を組み合わせることにより、自動運転の早期実現が期待されている。

オールジャパンで高精度3次元マップの整備

 この高精度マップ(ダイナミックマップ)の整備においては現在、オールジャパンでの取り組みが行われており、国内企業17社が出資(産業革新機構を筆頭株主に三菱電機、ゼンリン、パスコ、アイサンテクノロジー、インクリメント・ピー、トヨタマップマスター、さらに国内主要自動車メーカー10社)する事業会社「ダイナミックマップ基盤(株)」(17年6月に「ダイナミックマップ基盤企画(株)」から社名変更)が、国内高速道路・自動車専用道路全線の高精度3次元地図におけるデータの整備に着手した。


 マップの作成・整備においては、GPSアンテナ、レーザースキャナー、カメラなどの機器を車両に搭載し、走行しながら道路や周辺の建物などの3次元位置情報を高精度に収集する三菱モービルマッピングシステム(MMS)が使用される。また、同社ではダイナミックマップを効率的に作成・更新できる「自動図化技術」と「差分抽出技術」も併せて開発。MMSで得たレーザーの点群(1点ごとに緯度・経度・高さ情報)とカメラ画像から、区画線や標識など地図作成に必要な情報のみをAI(人工知能)を用いて自動的に抽出・認識することで、従来手作業で行っていた図化工程の時間を10分の1以下に短縮することができるという。

 なお、地図データの維持・更新においては、旧ダイナミックマップ基盤企画が、ヤマト運輸と輸送車両を活用したデータ収集の実証実験を進めていくことで合意しており、より低コストで維持・更新できると期待される。

電子デバイス産業新聞 編集部 記者 清水聡

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