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第236回

ファナック(株) 取締役専務執行役員 ロボット事業本部長 稲葉清典氏


ロボットの生産体制を積極増強
製造業IoTサービスが9月始動

2017/8/25

ファナック(株) 取締役専務執行役員 ロボット事業本部長 稲葉清典氏
 ファナック(株)(山梨県忍野村、Tel.0555-84-5555)がロボット事業の体制を強化している。茨城県筑西市で新工場の建設に着手したほか、製造業向けIoTプラットフォームの始動も間近に迫っており、ロボット事業の拡大に向けた施策を次々と打ち出している。取締役専務執行役員でロボット事業本部長の稲葉清典氏に話を伺った。

―― ロボット製品の需要動向について。
 稲葉 2016年度(17年3月期)における当社のロボット事業は、売上高が前年度比1%増の1900億円だった。上期が円高で推移した影響などにより金額ベースでは微増にとどまったが、台数ベースで見ると20%近く伸長した。

―― 市場・用途別では。
 稲葉 市場別に見ると中国の伸び率が最も高く、当社の最大市場である米州地域も堅調だった。そのほか国内や欧州でも販売が拡大し、これらの主力市場ではいずれの地域も2桁%以上の伸びを見せた。用途別では、自動車分野の成長も好調であったが、一般作業分野の成長が自動車分野の成長をさらに上回った。3C(コンピューター、家電製品、通信機器)や3品(食品、医薬品、化粧品)といった分野の伸びが目立っている。

―― 生産面での取り組みは。
新工場の完成イメージ図
新工場の完成イメージ図
 稲葉 ロボットの需要増を受け、生産体制の拡大を図っている。まず本社工場ではロボットの生産能力を現状の月産5000台から17年内に6000台へ引き上げる。このほか、茨城県筑西市にある「筑波工場」の一部をロボット製造ラインに転換し、月産1000台の供給体制を整備した。
 さらに7月から同じ茨城県筑西市にある「茨城県つくば明野北部(田宿地区)工業団地」にてロボットの新工場建設に着手した。加工、塗装、組立、試験が一気通貫で行え、先端のIoT技術も導入した生産効率の高い工場となる予定で、18年秋の本格稼働を見込んでいる。新工場での生産能力は月産2000台を計画しており、状況に応じて4000台に拡張することが可能である。当社全体では16年度末の月産5000台から18年度内に9000台の体制、状況に応じて1万1000台の体制を構築する予定だ。

―― 開発面について。
 稲葉 当社ではロボットの開発、システム、製造の部隊が密に連携し、ロボットの可能性を広げる様々な取り組みを進めている。そのなかで現在、加工分野でのロボットの活用に力を入れている。当社ではFA事業本部で世界トップシェアのCNC(コンピューター数値制御装置)などを扱っており、工作機械メーカーと長年お付き合いをさせていただいている。また、ロボマシン事業本部においてロボドリル(小型切削加工機)、ロボショット(電動射出成形機)、ロボカット(ワイヤカット放電加工機)といった様々な加工機を扱っている。そして、自社工場には、3600台以上のロボットをはじめ、これらの加工機を含めた自社商品を導入している。
 このようなネットワーク、自社工場から得る知見や技術を活用し、加工機にロボットを組み合わせたシステムの提案を強化している。特に、ロボットシステムを簡単に導入できるQSSP(クイック&シンプル・スタートアップ・パッケージ)はその知見、技術を最大限に活かしたプロジェクトである。採用件数も拡大している。

―― そのほか注力されていることは。
 稲葉 事業部の垣根を超えた「ワンファナック」としての取り組みを強化している。その取り組みを商品ポリシーである「高信頼性」についても行っている。16年度に本社工場内に大型の信頼性評価棟を設置し、FA事業本部、ロボマシン事業本部、そしてロボット事業本部の信頼性評価機能を集約した。3事業部の商品を一体的に評価することにより、知見の融合も進めている。先に述べた加工分野の取り組みも「ワンファナック」としての取り組みの1つであり、FA事業本部やロボマシン事業本部が持つ知見を活かし、切削液への耐性が高いロボットの開発などにつなげている。

―― ロボットに搭載する電子デバイスについて。
 稲葉 電子デバイスについても、信頼性評価棟において温湿度、通電、圧力、加速、切削液への耐性など様々な試験を行っている。信頼性の高さはロボットに搭載するうえで必須の条件となる。それとともにニーズが高まっているのが放熱性だ。ロボットのコントローラーは粉塵などを防ぐため密閉度が高い構造を採用しており、CPUをはじめとした電子デバイスには高い放熱性能が必要になる。また今後、人工知能などの技術とロボットの融合が進むことで、電子デバイスの性能も上げていく必要があり、これまで以上に放熱性が重要なポイントとなる。

―― 生産の高度化に関する取り組みは。
 稲葉 製造業向けのIoTプラットフォーム「FIELD(FANUC Intelligent Edge Link and Drive)システム」の準備が最終段階に入っている。このシステムは様々な企業が参画できる製造業初のオープンプラットフォームで、参画企業がシステム上で生産性向上と効率化を実現させるソリューションを構築することができる。また、人工知能(機械学習機能)などを活用し、機械が互いに柔軟かつ賢く協調する高度な生産システムの実現を目指している。
 本来は2016年後半からの提供開始を予定していたが、300を超える想定以上の企業からの参画の希望を受けるなど、反響が非常に大きかったことから、準備期間を予定より延長した。そしてその準備も最終段階に入っており、9月からサービスの提供を本格的に開始する見通しだ。

―― 今後の見通しや方針について。
 稲葉 景気の動向を注視していく必要があるが、17年度におけるロボットの販売・受注も堅調に推移しており、中期的にもこの傾向が続くと見ている。そのような市場拡大に対応するため、先に述べたとおり、当社としては新工場が稼働する18年に月産9000台の生産体制を構築し、需要に応じて同1万1000台まで増やすことも検討している。生産の増強や先に述べたような取り組みを複合的に進め、シェアのさらなる拡大を目指していく。注力している加工分野など、既存の分野でさらにロボットの活用範囲を広げていくこととあわせて、その他の一般産業分野など、新規分野にロボットを普及させるための新しい提案をしていくことも当社が手がけるべき重要な取り組みだと考えている。

(聞き手・浮島哲志記者)
(本紙2017年8月24日号1面 掲載)

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