商業施設新聞
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No.621

地方都市で「ハレの日」に行くところ


高橋 直也

2017/8/29

 8月27日、川崎市の小型百貨店「西武・そごう武蔵小杉ショップ」が閉館した。2014年11月に開業した武蔵小杉駅近くの商業施設「グランツリー武蔵小杉」内に出店した店だった。ショッピングセンター内に百貨店の小型店は増えてきたが、「西武・そごう武蔵小杉ショップ」の内装などは小型店とはいえ、上質で百貨店らしさが漂っていた。個人的には躍進を期待していたのだが、残念ながら短命の店舗となった。短期間での営業終了ということから、早めに店舗を入れ替え、館としての集客力を増強していくのだろう。

「都心の旗艦店は元気がいいが……」
都心の旗艦店は元気がいいが……
 閉店した理由は、高価な商品など百貨店としてのMDが評価されなかったためとみられる。武蔵小杉といえば、次々に高層マンションが完成しているエリア。マンションの値段はなかなかもので、富裕層は一定数いるはずだ。一方で、駅から少し離れると『庶民の街』でもあり、街全体からは支持されなかったのかもしれない。また、開業時から「大丈夫かな?」と気になっていたことは、『百貨店=ハレ』と考えるなら、近所の施設ではなく、渋谷や銀座など大きな街に出かけるのではないかという気がしていた。最終的には色々な要因が組み合わさって閉店したのだろうが、百貨店の新店が早々に営業終了したことは、『旗艦店以外の百貨店は厳しい』という現状を浮き彫りにした。

 百貨店は特に人口の少ない地方都市が厳しいと言われている。地方店が厳しいのは、時代が変わったからだ。某百貨店の社長によると、地方店は数十年前、地方都市に人口が増え、若者が多かった時代に、都心の旗艦店の『小型版』として出店した。かつてはハレの日などに使われていたが、いまは地方の景気が悪く、人口減少も目立ち、売り上げは減少傾向にある。

 一方で、百貨店の地方店でも、食品は比較的堅調だ。「地方」と言っては失礼かもしれないが、興味深いのは西武所沢店(埼玉県所沢市)だ。同店は食品フロアを拡大リニューアルし、5月26日にグランドオープンした。従前の地下1階に加え、百貨店としては珍しく、婦人服売り場だった地上1階も食品売り場に転換した。改装後は食品部門だけでなく、全館の客数、売上高が増加した。

 『食』という生き残りの指針が見つかったと言えるが、食の強化は品揃えによっては食品スーパーのようになってしまう。もちろん、高品質な商品を揃えるなど日常的に利用する食品スーパーとの差別化はできる。しかし、上質な洋服や雑貨を眺めたりするのはワクワクするものであり、あまり食品に品揃えを振りすぎると『ハレの日感』がなくなってしまう。

 もし、地方百貨店が食中心の業態になった場合、地方の人はハレの日はどこにいくのか。おそらくショッピングセンターだろう。地方都市でも大型のショッピングセンターを中心に家族の取り込みに向けて様々なイベントを開催している。ただ、ショッピングセンターは手ごろな価格を意識した施設も多く、日常の延長線上にある気がする。やはり百貨店としての非日常のハレ感はどこかに残してほしいと思うのだ。「そうは言っても従来のような上質なMDではもうやっていけない」と言われたらそれまでなのだが、百貨店だからこそ提供できる『非日常』は失わないで欲しい。
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