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第250回

常に危機感を持ちクリエイティブな中小企業だけが生き残る


~「従業員に博士号を取れ」と発破をかけるYAMAKINの山本裕久会長~

2017/9/8

 「今や人材不足は日本列島にいる企業すべての問題だろう。とりわけ知名度のない中小企業にとっての人材確保は困難を極めている。しかして当社は高知大学、高知工科大学などで積極的に講義を担当し、特にベンチャービジネス論という講義が有効なリクルートの決め手となっている。若い学生たちにベンチャー哲学を講義するのは、私を含めて多くの社員たちだ。ここで講義を受けた学生たちは、強烈にYAMAKINという企業イメージを受け取り入社してくるのだ」

YAMAKINの山本裕久会長
YAMAKINの山本裕久会長
 目を輝かせながらこう語るのは、大阪に本社を持ち高知にすべての量産拠点を構えるYAMAKIN(大阪市天王寺区真田山町3-7、Tel.06-6761-0500)の山本裕久会長である。同社は歯科材料の開発製造を得意とする企業であるが、山本氏の実父が始めた貴金属地金の売買を家業とする山本商店が前身である。いわば貴金属のブローカーであるが、山本氏はたった一人でこの山本商店を引き継ぎ、単なる販売業から開発・製造に事業をシフトし成功を収めたのだ。

 「強度が世界トップクラスのナノジルコニアと呼ばれる歯科材料の製造は当社の得意技だ。最近では合金技術、ジルコニアの技術などを工業用に横展開している。ここのところ、半導体デバイス関連企業からお声がかかることが多く、その分野にも本格参入しようと思っている」(山本会長)

 さてYAMAKINは1957年5月に設立、直近の年商は約180億円、人員は278人を擁している。ここに来て売り上げは順調に拡大しているが、山本会長は2017年からが第3の創業期であると位置づけ、徹底的なイノベーションを全社に呼び掛けている。ひたすらに創造性を追求し、新たな商品開発がYAMAKINの将来を築くと信じているのだ。

 「従業員にはひたすら博士号を取れと発破をかけている。すでに10人の博士が在籍しており、仕事をしながら高知大学医学部に在学中の1人を加えれば11人になる予定だ。私自身も裸同然で家業を引き継いだが、10年かけて高知工科大学で学術博士を取得した。この経験が、学問追求の人材こそが経営資源になるのだという哲学につながっていく」(山本会長)

 ところで、高知における人材は非常に優れているんですか、と聞いたところ、「あるところでは全然ダメ」という答えが返ってきた。他県に比べてあまり一所懸命に地道に働かないと冷たい分析をしているのだ。ところが、である。高知人の感性はずば抜けてすごいものがあるというのだ。

 一例を挙げれば、高知県はマンガ王国土佐として全国に知られている。『アンパンマン』で有名なやなせたかし氏をはじめ、『土佐の一本釣り』の青柳裕介氏、『赤兵衛』の黒鉄ヒロシ氏など著名な漫画家五十数名を輩出している。この事実を見ても高知県人の感性が素晴らしいことがよく分かる。そしてまた、維新回天の大事業を成し遂げた坂本龍馬もまた感性の塊であり、女性には超モテモテの人であった。

 「感性の鋭さを評価して高知に進出し、すべての量産工場を高知県に集中しているが、これは大正解だと思っている。産学連携をやるにしても大阪や東京のように手続きが面倒でない。何しろ大学の数が少ないのであるから、即断即決で立ち上げられる。また大学の先生たちのネットワークがいっぱい使える。学問を追求する人材も多く取れるのだ」(山本会長)

 山本会長によれば、基礎研究が最も大切であり、博士をどんどん作り、若返りを図っていけば企業は伸びていくという。中小企業にこそクリエイティブが必要なのだともいう。常に危機感を持ち、5年先、10年先を見通す先見性を養えば、中小企業には無限の可能性が広がっているのだ、と思えてならなかった。


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。30年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 社長。著書には『半導体業界ハンドブック』、『素材は国家なり』(長谷川慶太郎との共著)、『ニッポンの環境エネルギー力』(以上、東洋経済新報 社)、『これが半導体の全貌だ』(かんき出版)、『心から感動する会社』(亜紀書房)など19冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長 企画委員長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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