電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第239回

ミネベアミツミ(株) 取締役 常務執行役員 技術本部 副本部長 ミツミ事業本部 副本部長 麻生博史氏


メカトロとエレキのシナジー追求
アナログ好調、前年度比15%増の見通し

2017/9/15

ミネベアミツミ(株) 取締役 常務執行役員 技術本部 副本部長 ミツミ事業本部 副本部長 麻生博史氏
―― 2015年12月にミネベアと経営統合すると発表されました。
 麻生 17年1月27日付で新会社のミネベアミツミ(株)が発足した。メカトロニクスに強みを持つミネベアと、エレクトロニクスに強みを持つミツミとでシナジーを発揮していく。近年ミネベアでは、主軸のベアリングだけでなくバックライトユニットやモーター、LED照明といった出力系のデバイスも手がけてきており、ミツミはセンサーやDC/DC、ICといった入力・変換系デバイスに強みを持つ。両社のシナジーでIoT分野にも進出していく。

―― 事業の状況について。
 麻生 半導体事業の売り上げの詳細は言えないが、前年度比15%増を達成できる見通しだ。2年前に黒字化を達成しており、その流れを継続させていく。足元の状況は、車載向けをはじめとして全体的に好調だ。コンシューマーも産業機器も市況が好調で、カスタムのアナログデバイスが牽引している。ただし、この活況の要因については、もう少し冷静に何が背景となっているかを見極めなければならないと考えている。

―― 生産体制は。
 麻生 前工程は千歳事業所が担い、6インチを4ライン保有する。生産能力は3.5万枚/月だ。同所はファンドリービジネスも手がけ、全体の2割程度を占める。現状は生産がタイトで、TSMCなど複数の外ファブを活用している。微細化を追求する方針はなく、アナログ主体で低消費、低オフセットなどの技術をさらに深耕していく。15年度にはIGBT用の裏面装置を導入した。近々で大規模な設備投資計画はないが、次に行うときは8インチの導入を考えている。
 ミネベアは歴史的に生産効率の改善・向上に重きを置いた舵取りをしており、統合後はミツミも、ミネベア主導のもとで生産体制の改善を進め、より加速して実施している。
 後工程はセブ・ミツミ(フィリピン)が担い、かなりタイトな生産が続いているため、増強については後工程の方を先に実施することになりそうだ。このほか、電池、電源、センサーを主体とした研究所として厚木事業所がある。17年の設備投資は例年どおり10億円を計画している。

―― 注力製品の搭載が拡大していますね。
 麻生 当社が注力する製品の(1)リチウムイオン電池保護IC、(2)圧力センサー、(3)DC/DCコンバーターが好調だ。 
 (1)では、市場6割のシェアを持つ。スマートフォン向けが大半を占め、玩具やデジカメ、ノートPCなどでも採用が拡大している。昨今は急速充電が増えたことからより安全面への要求が高まり、保護ICは2個搭載が進んでいる。さらに低損失で安全性が高い製品を開発中で、17年度内にリリースする計画だ。
 (2)では、電子血圧計向けで市場シェア20%を堅持している。新たに、技術本部と連携し、その他のセンサー、例えば、気流センサーや温湿度センサーなどの新開発を進めている。
 IoT化を見据えると、センサー社会になっていくのは必須だ。そこで、技術本部ではセンサーマップの作成に取りかかっている。これは、思いつく限りのセンサーの種類を書き出し、そこに必要な要素技術も書き出してマトリックス化するもの。これにより、当社が手がけるべき注力センサーの絞り込みをしていきたいと考えている。
 (3)は、車載向けにDC/DCコンバーターの搭載が進んでいる。コンシューマー向けも手がけており、製品構成比率は半々程度。車載向けが伸びてきている。車載は注力分野であるため、今後も新製品の投入などでさらに伸ばしていきたい。

―― 新会社がスタートしました。抱負を。
 麻生 アナログを主体とした半導体技術を磨き、もっとアグレッシブに世の中に打って出ていきたい。会社の規模が大きくなったことで、今後必要な技術や製品があれば、M&Aを実施することで積極的に取り入れていくことができるだろう。新製品については、ミネベアのモーターやひずみセンサーなどの既存製品を、ミツミの半導体でブラッシュアップさせたようなものを考えており、18年度以降に順次市場投入する予定だ。期待していただきたい。

(聞き手・澤登美英子記者)
(本紙2017年9月14日号3面 掲載)

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