電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
新聞情報紙のご案内・ご購読 書籍のご案内・ご購入 セミナー/イベントのご案内 広告のご案内

世界一目指す中国の政策を注視


~11月30日 世界の5G&IoT産業分析セミナー(3)~

2017/12/1

ディレクター 南川明氏
ディレクター 南川明氏
 大手調査会社のIHSマークイット テクノロジー部門は、11月30日に東京コンファレンスセンター・品川(東京都港区)で5G&IoTをテーマにしたセミナーを開催する。登壇アナリストに注目の講演内容を聞く第3回は「IoT普及に必要な5Gインフラ投資」と題して講演するディレクターの南川明氏に話を伺った。

 ―― IoTや5G投資のトレンドは。
 南川 中国の動きを注視している。近年は世界一になるという野望を隠さなくなり、「2049年に世界No.1」を目指した政策を打ち始めた。
 これまでは世界の工場として製品を輸出して外貨を稼いできたが、人件費の高騰で競争力を失った。国内では、実に米国が過去100年間で使用した量のセメントを13~15年のわずか3年で使って道路や鉄道、橋梁といったインフラを相次いで整備し、GDPの押し上げを図ってきたものの、今はほとんど赤字で利益を稼げていない。もう建物は作れない。
 このため、今後はスマートファクトリーやスマートシティ、電気自動車(EV)化と自動運転といったプロジェクトに取り組み、プロジェクトごと輸出して外貨を稼ぐモデルを推し進めるとみている。この輸出ルートになるのが一帯一路だ。

 ―― 中国が考えているロードマップは。
 南川 20年までに整備を進める5Gインフラが第一歩になる。次いで、25年までにEV化による自動運転を実現し、30年にはスマートシティでゼロエミッションの達成を目指す。うまくいくかは別として、スケジュール自体は欧米よりも早い。もちろん、これと並行してスマートフォンによる決済システムやライドシェアなどのサービス拡充、IoTインフラを支える半導体産業の育成・振興にも取り組む。新しいテーマに積極果敢に挑戦し、製造強国になるつもりだろう。

 ―― 中国が野望を実現するための課題は。
 南川 最も大きな問題は電力だ。EVシフトを推し進めるなら、充電に膨大な電力を要する。例えば、日本の自動車8000万台の半分がEVになると、原発3基分の電力が必要だ。将来的には、EVの充電だけで世界の電力の15%を消費するともいわれる。また現在は、充電に時間がかかりすぎるのも問題だ。
 中国は現状、発電量の60%を石炭火力に頼っている。電池の生産も含めたCO2排出量を考えれば、EVよりもハイブリッド車のほうがトータル排出量を少なくできるが、中国の自動車メーカーはハイブリッド技術では日本メーカーに勝てないため、EVを推す。だが、中国はまだエネルギー政策を明確にしておらず、これをどうするか考えていく必要がある。IoTは、エネルギーを効率的に使用し、使用量を削減するツールの1つになる。

 ―― 日本はどうしていくべきですか。
 南川 強いところをさらに強くすべきだ。サービスを強化するシナリオを描くのは苦手だが、FAなどのインダストリアル分野やロボットは強い。半導体の微細化ではすでに世界の先端にいないが、徹底的な低消費電力化やアーキテクチャーの変更、パッケージやモジュール化といった部分では存在感を高めることができるはずだ。

(聞き手・編集長 津村明宏)



 「世界の5G&IoT産業分析セミナー」の詳細情報は同社事務局(E-mail : technology.events@ihs.com、Tel.03-6262-1824)まで。
サイト内検索