商業施設新聞
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No.638

新しい東京駅前広場は広くて緑があって……だが


高橋 直也

2018/1/9

 1~2年前、北関東に住む友人と東京駅前を歩いていた時のこと。友人が東京駅前の広場の工事を見て、「サグラダ・ファミリアみたいだ」とつぶやいた。聞けば、東京駅を訪れるたびに工事をしており、いつまで経っても完成しないという意味だそうだ。

 東京駅の整備を振り返ると、2007年5月から駅舎の復原工事を開始。12年10月に竣工して戦災時に焼失した屋根などを創建時の姿に復原し、話題を集めた。その後、14年8月から丸の内駅前広場の工事を開始した。広場が使えないため、東京を訪れた観光客は「引いた写真」を撮ることができず、駅の全景を撮影するのに苦労していた。そんな東京駅だが17年12月7日、ついに駅前広場が供用開始された。

 以前の駅前広場は、中央にロータリーがあり、車のための広場という印象だった。今回の整備では、中央部に芝生や植栽が溢れる空間になり、再整備前と比べるとかなり印象が変わった。ロータリーは左右に寄せられ、落ち着いて駅前を歩けるようになった。個人的には緑がかなり効果的に思える。丸の内は高層ビルで囲まれている立地だ。そこに緑がある空間はほっとできる。ひょっとしたら周辺で働くオフィスワーカーのオアシスとなるかもしれない。が、おやおや?と思う点もある。

 悪い面、というか、これからの課題なのかもしれないが、少々『地味』なのだ。『広場すぎる』、とでも言うべきか。広い空間はあるのだが、人が足を止めるような機能が少なく、丸の内で働くワーカーたちの単なる広大な通路になっている。従前の広場は混み合うこともあり、混雑の緩和は利用者としてもありがたいが、『商業施設新聞』としては賑わいもつくってほしいところだ。

博多駅前のクリスマスマーケット
博多駅前のクリスマスマーケット
 話は変わって12月中旬、出張で福岡市を訪れた。その際、感銘を受けたのが博多駅の駅前広場だ。時節柄、クリスマスマーケットを開催していたのだが、その賑わいがすごかった。広場に露店をいくつも並べ、ホットワイン、ホットチョコ、ビール(寒いのに売れていた)、様々なフード、雑貨を販売していた。露店といっても、テントのような簡素なものではなく、木目調で作られておりしっかりしている。販売員もシェフ風の服装、サンタの服装などに統一されており、クリスマスマーケットの楽しさが溢れていた。はっきり言って商品は安くないが、なんだか楽しくて買いたくなった。マーケット内には椅子、テーブルが設置されており、平日の夜だというのになかなかの賑わい。きらびやかなイルミネーションも施されており、多くの人が駅前に滞在し、活気に満ちていた。

 東京駅の広場も、「整備が完了。以上、終わり」ではなく、広場を活かした賑わいの創出を期待したい。おそらくJR東日本としても何かしら考えているはずだ。以前、東京駅舎にプロジェクションマッピングを投影するイベントが話題になった。日本におけるプロジェクションマッピングは、あのイベントから流行したように思う。東京駅の乗降者数は新宿駅や渋谷駅にはかなわない。しかし、東京駅は、有名企業の本社が集まり、新幹線の拠点であり、日本の中心ともいえる特別な場所なのだ。

 今後、東京駅周辺では延べ68万m²の「常盤橋街区再開発プロジェクト」などの再開発が進み、利用者はますます増えるはずだ。駅前広場の完成は、賑わい創出の環境が整っただけに過ぎない。いわばこれからがスタート。新たな駅前広場がどのように活用されるのか、ものすごく注目している。
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