電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第269回

笑いが止まらない半導体製造装置メーカーは自らの設備投資も積極的


~「人間の欲望がある限り半導体は不滅だ」と辻村会長は叫ぶ~

2018/1/26

 喜色満面とはこのことだろう。平成30年のSEAJ(日本半導体製造装置協会)の新春賀詞交歓会(1月12日 如水会館)は、どなたの顔を見ても喜びに満ち溢れていた。そして今年にさらなる期待感もあり、会場はあちこちで笑いの渦に包まれていたのだ。

 SEAJ会長の辻村学氏(荏原製作所専務)の挨拶もまた超明るいものであった。今やお得意のフレーズとなった「学の法則」を高らかに歌い上げ、会場の爆笑を誘っていたのだ。それはすなわち、次のような言葉であった。
 「人間の欲望がある限り半導体産業は不滅だ。そしてまたSEAJも永遠に不滅なのだ」

SEAJの恒例の新年鏡わり(挨拶はマイクロンメモリジャパンのロッド・モーガン氏)
SEAJの恒例の新年鏡わり(挨拶はマイクロンメモリジャパンのロッド・モーガン氏)
 その後、恒例の鏡割りの儀式となったが、時代を象徴してのことであるか、マイクロンメモリジャパンのトップであるロッド・モーガン氏が祝杯の挨拶を述べた。筆者の記憶では欧米人がこうした会の挨拶を仕切るのは誠に珍しい。装置の世界はグローバリゼーション、という言葉が聞こえてくるようでならなかった。

 さて、半導体製造装置は時ならぬ一大半導体設備投資ブームにビッグインパクトを受け、2017年で何と前年比26%の伸びを示したという。18年についても10%以上の2桁成長を予想するという活況ぶりだ。

 ディスコの関谷社長は、「人を増やすより、やる気を上げる方が効果が大きい」として、ボーナスを春、夏、冬に加え、秋も新設するというサプライズな発表を行っている。ちなみに18年秋は2.4カ月を見込むという。こうした大盤振る舞いに対し、構造不況に苦しむ我が出版業界はただ指をくわえて「ぐやじい。マジにうらやましい」とつぶやくほかはなかった。

 上げ潮に乗る日本の半導体製造装置メーカーであるが、ある調査によれば主要7社の17年度設備投資は何と前年度比65%増にもなるというのだ。現在、半導体アプリの中核に座っているスマートフォンが戻ってきており、EV、コネクテッドカーなどの技術革新が進む自動車向けの半導体にも勢いが出てきた。それに加えてデータセンター、ロボット、各種FAなどのIoT需要がバカにならないほどの量になってきているのだ。

 業界トップの東京エレクトロンの17年度投資は、実に前年度比2.4倍の500億円投入となり、エッチングを担当する宮城に新開発棟、新物流棟の建設に踏み切っている。スクリーンもまた洗浄装置の研究開発用設備を強化すべく、前年度比53%増の127億円を突っ込む。エッチャーが好調な日立ハイテクも前年度比55%増の223億円を投入し、次世代開発用の設備を着々と整えつつあるのだ。

 こうした状況下で「装置ばかりが大活況で、日本のデバイスメーカーはあまり元気がないもんね」とおっしゃる輩は実情が分かっておられない。実のところ、国内半導体メーカーの17年度生産額は少なくとも12%増以上であり、同設備投資額はおそらく15%以上が見込まれ、久方ぶりの2桁成長となっているのだ。

 日本勢のスケールは世界から見れば著しくシュリンクしているが、どっこいニッポン半導体は生きている。そしてまたIoT時代を迎え、6インチや8インチの設備が活況になれば、これを多く保有する日本勢にもチャンスが巡ってくる。とりわけ、車載向けSiCパワー半導体に対する設備投資は過去最高になることは間違いない。

 ところで、会場で会ったある大手装置メーカー幹部が、受注激増の喜びにあふれながらも少しだけ眉を曇らせ、こう述べたことをよく覚えている。

 「いつか来たこの道をまた行くのではないか、という不安感は払拭できない。ITに加えてIoTという巨大アプリが出てきたことで、これまでのように激しいアップダウンを繰り返すシリコンサイクルは消えたという声もある。ただ過去の経験則でいえば、天国の後に地獄が来るは、この業界の定め。それを考えるとお屠蘇に酔いしれながらも、時々は夜中にはっと目を覚ましてしまうことがある」


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。30年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 社長。著書には『半導体業界ハンドブック』、『素材は国家なり』(長谷川慶太郎との共著)、『ニッポンの環境エネルギー力』(以上、東洋経済新報 社)、『これが半導体の全貌だ』(かんき出版)、『心から感動する会社』(亜紀書房)など19冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長 企画委員長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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