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第271回

インフィニオン テクノロジーズ ジャパン(株) 事業本部長 針田靖久氏


独300mm工場中心に積極増産
日本市場向けにカスタム対応強化

2018/5/7

インフィニオン テクノロジーズ ジャパン(株) 事業本部長 針田靖久氏
 独インフィニオンテクノロジーズ(日本法人=東京都品川区大崎1-11-2、Tel.03-5745-7100)は、言わずと知れた世界No.1のパワー半導体メーカーだ。産業機器や車載、民生家電など幅広い分野にMOSFETやIGBTなどのパワー半導体を供給している。また、製造面においても、いち早く300mmウエハーによるパワー半導体に乗り出すなど、その存在感は極めて大きい。日本法人で産業機器分野などを中心に事業を統括するインダストリアルパワーコントロール(IPC)事業本部で事業本部長を務める針田靖久氏に現況を聞いた。

―― パワー半導体の概況から教えて下さい。
 針田 パワー半導体は全社売上高の65%(2018年度第1四半期ベース)を占める主力分野であり、調査会社IHS Markitによれば、パワーディスクリート&モジュール分野で18.5%の市場シェア(16年ベース)を獲得し業界トップに位置している。私が統括するIPC事業部は全社売上高の17%を占めており、売り上げのすべてがパワー半導体で成り立っているという状況だ。

―― パワー半導体の現在の需要動向は。
 針田 過去20年間でも見たことがないような、需要の大きな波が押し寄せていると思っている。そのため、この想定を上回る需要に対応するためのパワー半導体の供給体制が、業界全体で整っていないのが現状だ。そのため、我々も生産能力の増強に力を入れており、売上高の14%を設備投資に充てている。

―― 能力増強の状況は。
 針田 独ドレスデン工場の300mm工場の能力増強を積極的に進めている。もともとDRAMの300mmラインだったこともあり、クリーンルームは非常に大きい。現在のところクリーンルームの使用率はまだ3割程度なので、残る7割のスペースに製造装置を順次追加している。また、マレーシアのクリム工場にある200mmラインについてもドレスデン同様に能力を増強しているところだ。

―― 国内メーカーのなかではモジュールでの供給に力を入れるところもあります。貴社のスタンスは。
 針田 我々の特徴の1つでもあるが、ベアダイやディスクリート、モジュールと様々な形態に柔軟に対応できることが強みとなっている。最近ではIPM(インテリジェントパワーモジュール)の供給のほか、さらにモーターアプリケーション向けに、マイコンを組み込んだ「iMotion」製品の拡充も図っている。

―― SiCでの取り組みは。
 針田 1992年からSiCパワーデバイスの開発に着手しており、01年から商用生産を開始している。すでに17年という長い量産実績を有しており、現在はダイオードとMOSFETのほか、フルSiCモジュールも提供している。15年から6インチウエハーによる生産に移行しており、現在はオーストリアのフィラッハ工場で量産している。

―― パワー半導体事業で日本法人として取り組んでいることは。
 針田 パワーモジュールを中心に顧客のきめ細かい要求に応えたカスタム製品の展開に力を入れている。パワーモジュールの生産は主にドイツのヴァールシュタインとハンガリーのツェグレト工場で手がけているが、カスタム品の拡充のため、実際に日本市場向けのデザイン(設計)キャパシティーの割り当てを増やしている。実際に本社のマネジメント層もカスタム品の拡大に向けて来日回数が増えている。こうした取り組みは18年から徐々に業績に貢献してくる見通しだ。

―― 今後の事業目標は。
 針田 インフィニオンとしては、18年度通期の全社売上高として前期比8%以上の増収を目標に掲げている。ただ、日本法人としてはこれを上回る成長目標を打ち出し、私がいるIPC事業部もその一翼を担っており、カスタム対応の強化はその目標達成のための重要な一手となっている。

(聞き手・副編集長 稲葉雅巳)
(本紙2018年5月3日号3面 掲載)

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