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第21回

日本ヘリウム、川崎市にヘリウムガス充填の新工場竣工、レアガスの取り扱いも開始


2018/6/12

新工場外観
新工場外観
 エア・ウォーターグループの日本ヘリウム(株)(川崎市川崎区塩浜3-10-1、Tel.044-281-2211)は、川崎市にヘリウムガスを充填する新工場を建設し、このほど竣工した。新工場では、従来扱っているヘリウムだけでなく、ネオン(Ne)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)のレアガスの取り扱いも開始する。

 日本ヘリウムは、1969年7月設立。日本で最初の特殊断熱コンテナによる液化ヘリウムの長距離輸送に成功した、日本におけるパイオニア的なヘリウムメーカーである。

 今回、横浜市鶴見区にあった横浜工場が手狭になったことから、新工場を建設し移転した。新工場は、川崎市川崎区塩浜3-10-1の敷地6967m²に2階建て延べ床面積約2300m²で建設、横浜工場の約2.8倍の広さとなった。

白井清司氏(左)と萩原健氏
白井清司氏(左)と萩原健氏
 建設地は川崎化成の工場の跡地で遊休地として他社に貸していたが、「これだけの土地があるということはグループとして活用できる」(エア・ウォーター(株)代表取締役社長 白井清司氏)ことからこの場所に建設した。工場内には、液化ヘリウム充填ラインが5系列、圧縮ヘリウムガス充填ラインがボンベ・カードル・トレーラー合計で18系統、混合ガス充填ラインがボンベ・カードル各1系統、レアガス(Ne、Xe、Kr)充填ラインがボンベ各1系統整備されている。ヘリウムの生産量は300Nm3/時で、横浜工場に比べ10%の能力増強。投資額は約11億円。

 ヘリウムは医療分野のMRIや産業分野のNMR、将来のリニアモーターカーなどの電磁コイル冷却に液体ヘリウムが使用される。また、光ファイバーや半導体メモリー、液晶パネルの製造、アルミなどの高度な溶接時、分析器のキャリアガスなどに使用されている。ほとんどが強固な岩盤の下にたまっている天然ガスの不純物としてしか入手できず、米国をはじめ世界数カ所の天然ガス田からしか産出できない。エア・ウォーターグループは、11~13年のヘリウムの世界的な需給逼迫時以前は、全量エアープロダクツから米国産の物を輸入していたが、現状米国からの輸入は3分の1、カタールが3分の1から4割、その他ロシアなどからの輸入となっている。

 日本ヘリウムでは、コンテナで輸入した液体ヘリウムを液体ヘリウム専用容器であるデュワーに小分け充填、またはガス化したヘリウムをシリンダーなどへ小分け充填し、全国のユーザーに安定供給している。新工場では同社が独自開発したガス回収システムを導入することで、充填ロスを極限まで抑え、製造量の増加を実現するとともに液体ヘリウムの納期短縮などにより競争力のある製品を市場に供給できる体制を整えた。

 新工場は、エア・ウォーターグループのヘリウム事業のセンター工場の位置づけ。従来は、輸入されたコンテナをそのまま国内4カ所の充填工場に運び、デュワーなどに小分け充填していたが高圧のコンテナからそのまま充填するため、ロスが大きかった。今後は新工場で減圧したコンテナを各工場に運ぶことでロスを最小限に抑えていく。

 新工場では、Ne、Kr、Xeというヘリウムと同じ、元素の周期表の右端の18族に所属するレアガスといわれるガスの小分け充填設備も備え、業務の幅を広げた。

 新工場の敷地にはまだ余裕があり、施設の増設余地がある。現状駐車場として活用しているが、「今すぐというわけではないが、今後様々なガスを扱っていく事も考えている」(日本ヘリウム代表取締役社長 萩原健氏)。

 また、エア・ウォーターグループでは、シェア2割を目指しヘリウム事業を強化中。新潟に充填工場を設置し、人員も増員している。「日本海側の充填工場は他社を含めても当社の新潟しかない。将来のロシアからのヘリウムを取扱量増に対応するには新潟が重要になる。新潟には物流センターも整備しており、将来は低温物流も使って産業ガスの物流を行うことも視野に入れている」(白井氏)としている。
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