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第8回

半導体商社はどこから来てどこへ向かうのか!!(その2)


~「トランジスタの時代到来、米国からの輸入ICも登場」~

2013/5/17

 さて、さらに5年経つと、にわかに世の中はトランジスタの時代になります。真空管より価格の高かったトランジスタが国産のシリコンエピタキシャルが出てきて安価になってきて、学生でも使えるようになりました。東大の入試が学園紛争で無かった年に高校を卒業した筆者は、秋葉原に近い予備校を選び、受験勉強の傍ら、全トランジスタ、50MHz、SSBトランシーバーを作りました。残念ながら、当時のアマチュアの腕ではSSB用のリニア高周波アンプを高出力にはできず、やっと1W程度を出せたのが懐かしい記憶です。

 この時代には、海外からICが入ってきました。アルバイトで、ある電子部品商社でトランジスタの選別を行っていた時に、輸入品として、SN7400Dを見せられました。セラミック・パッケージの論理ICでした。アナログのICとしては、μPA741、μPA709というOPAMP、309KというTO3の15V定電圧ICが記憶にあります。

 当時、このようなICは日本では作れず、米国からの輸入でした。ですので、日本の真空管からスタートした電子部品商社に、輸入業者が割り込んできたかたちです。しかし、当時の通産省に輸入のための米ドル(1$=¥360の固定レートでした)の割り当てを申請に行くと、お役人から、国産を使え、貴重なドルを無駄なことに使うなと怒られながら輸入許可を貰うという時代です。この輸入許可を貰って何とか輸入しての販売ですし、当時の製造技術は米国といえど低く、たびたび農産物に例えられるくらいで、半年くらい製品を出荷できない、といったことがありましたので、在庫を持っての商売でした。そこから半導体の輸入販売は今と違い、儲かるビジネスでした。

 しかし、輸入したICを使い、輸出品を作るので、輸出品の部品ということで何とかICの輸入許可をもらって、徹夜で工場を動かしてでも、L/Cに記載の船積の日には納期を間に合わせるのが製品のメーカーも部品商社も暗黙の了解事項でした。電子部品商社も不足の部品があると、その製造工場へ泊まり込みで行き、車の中で寝泊まりしながら部品ができあがるのを待ち、できた途端に運んで製品化するという、今の中国も顔負けの全日本製造システムで輸出に邁進していました。

 時代は進んだり戻ったりですが、ICが出てきた最初はアナログのICでした。トランジスタ3個を1つのシリコンの上に作り、これをパッケージしただけで、トランジスタのペア組をしなくてすみます。これでOPAMPを作るのがとても楽になりました。これ以前は、トランジスタを組み合わせて基板の上の回路でOPAMPを作っていました。今では信じられないようなことを当時はしていたわけです。

 ロジックのICで世界的に受け入れられて業界標準になったのはT.I.のSN74XXシリーズであることは、この記事の読者の方ならご存知と思います。しかし、ICの出始めの時期には、74シリーズ以外にもTTLはありました。当時のモトローラ社の半導体事業部は、MC8xxというMTLを作っていましたし(PLL用の位相検波器は、T.I.の74シリーズに無かったので後まで残りましたが、他は74シリーズとの競争で消えてしまいました)、他にも、RTLやHiNILといった論理回路のシリーズがありました。74シリーズも、74Lxxというローパワー品、74Hxxという高速品もありましたが、これらも半導体の製造技術の進化により消えていきました。

 この頃のロジックICで後々まで残ったのはECLでしょうか。ECLは、ロジック半導体の技術がバイポーラからCMOSになってきても、残っていました。これはECLの速度を出せる他の技術が現れなかったからで、論理ICにとって100MHzの壁は厚かったということになるのだと思います。

 論理ICが半導体の主流の時代になってくると、商社が技術者を雇い、顧客からの注文での選別や顧客への技術説明をするようになってきています。真空管の時代にはユーザーが良く知っていて論理や計算も容易でしたが、今でも電子技術者の多くがつまずく電流モードで動作するバイポーラ・トランジスタは、真空管が電圧モードで動作しているので電圧計とオシロスコープで容易に計測ができたことと比較すると難しく、真空管に慣れていた当時の設計者は、トランジスタのメーカーからの指導や、その系列の電子部品商社にいる技術者に応援を頼むことが必要でした。必要なのですから商社もメーカーからの天下りの技術者を雇い、時代遅れになった真空管からの脱却を図るようになってきます。半導体商社の始まりです。(続く)
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