電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第39回

日本最強の電子部品業界は絶好調、7~9月期の受注過去最高


~今や世界市場は18兆円で半導体の25兆円に迫る勢い~

2013/11/1

(株)産業タイムズ社 代表取締役社長 泉谷渉

 「他社と同じことは絶対にしない!」というキャッチフレーズに誘われて「電子部品だけがなぜ強い」(日本経済新聞出版社刊 村田朋博著)という本を慌てて読んだ記憶がある。世界を相手に敗戦が続いた日本のITハイテク産業の中で、電子部品業界だけは今なお高いシェア、競争力、技術力を持っているのだ。村田製作所の積層セラミックコンデンサー、京セラのセラミックパッケージ、イビデンのプラスチックパッケージ、TDKのHDDヘッド、日本電産のHDDモーター、日本セラミックの赤外線センサーなど世界トップシェアを持つ企業も数多いのだ。

 日本経済新聞社の調べによれば、国内大手電子部品6社(村田製作所、京セラ、TDK、日本電産、日東電工、アルプス電気)の7~9月期の受注総額は前年同期比16%増の約1兆900億円となったもようだ。これは過去最高の数字を叩き出したことになる。電子部品業界を引っ張るアプリはやはりスマートフォンやタブレットなどが中心だ。

電子部品業界をひっぱるスマートフォン
電子部品業界をひっぱるスマートフォン
 スマートフォンは2012年に世界出荷6億5000万台を記録し、2013年は同8億台まで伸びると予想されていたが、この勢いが続けば9億5000万台も夢ではないと言われている。パソコンやテレビ、さらには既存の携帯電話が苦戦を続けるなかで、スマートフォンは別格と言われてよいほど伸びるマーケットなのだ。筆者に言わせれば、大体がスマートフォンは純然たる新製品ではない。携帯電話、パソコン、音楽プレーヤー、テレビ、デジタルカメラなど一般個人が必要とするIT機能をすべて積み込んだ複合商品なのだ。またタブレットはおそらく2013年中にもノートPCを抜いてしまう勢いであり、年間出荷台数は1億5000万台を超えてくるだろう。

 「積層セラミックコンデンサー、表面波フィルター、インダクター、液晶向け偏光板などスマートフォンに使う主力部品を見れば、日本メーカーが断然に強く、世界市場でおそらく60%くらいのシェアを持っているだろう。一番重要なことは、いたずらに価格で勝負するのではなく、圧倒的な独自技術で勝負するというビジネスモデルをこの業界は重視していることだ。それゆえに、まねっこ中国をはじめとする韓国、台湾などのアジアメーカーはさすがにこの分野においては、今のところ日本勢をキャッチアップできない」
 こう語るのは電子デバイスのアナリストとして著名な存在である南川明氏である。しかし一方で南川氏は「日本の半導体産業は電子部品業界に学ぶべきだ」とも言う。

 ところで、わが国の半導体業界を冷静に見れば、とんでもない「落ち目の三度笠」になっていることがよく分かる。半導体産業新聞の調べによれば、日本の半導体メーカー32社の2013年度生産金額は3兆3354億円にとどまるとしており、絶不調と言っても良い状況だ。この中にはルネサスなど非公表3社が含まれていないだけに、実際の数字としては3兆8000億円以上にはなると思われるが、それにしても2007年度当時には7兆円を軽々と超えていたわけであるから、ほんのこの5~6年で生産金額が半減してしまったことになる。もちろんフラッシュメモリーで戦う東芝、CMOSセンサーで戦うソニー、パワー半導体で戦う三菱電機、LEDで戦う日亜化学などは、いずれもプラス成長を見込んでいるが、日本勢全体としては誠に元気がない。

 半導体業界は今や汎用製品が跋扈し、独自性を維持することが難しいといわれている。量産品の比率が圧倒的に多くなり、巨大投資を実行できるメーカーだけが勝ち続ける。それでもスマートフォン向けSoCのクアルコムに見られるように、オンリーワンチップを作ってしまえば、まだまだ世界を席巻できる可能性が含まれている。それにしても半導体業界全体の退潮も著しく、この10年間を取ってみれば、世界市場25兆円前後をうろうろしているだけで、ほとんど伸びがない。一方で電子部品業界はここにきて急速に伸びており、すでに世界市場18兆円を超えてきている。この業界での日本企業の世界占有率は40%と非常に高く、これに対し半導体における日本企業の占有率は15%まで落ち込んだ。ITにおける時代の流れが大きく変わったことを数字が意味づけているといえる。

 筆者は30年以上にもわたり、世界のITおよび電子デバイスの流れを見てきたが、どんな業界にも照る日と曇る日があるとの思いが強い。また風は左に向かって吹けば、いつか必ず逆方向の右に向かって吹き始める。思えば電子部品業界もかつて全く儲からず、規模の小さい産業といわれた時代もあったのだ。しかしスマホ、タブレットの突風が吹いた途端に大きな業界に飛躍した。今は日本においても世界においても半導体に逆風が吹いているが、この風が違う方向に吹くことになる可能性は充分にある。終戦の詔ではないが、半導体業界は「忍び難きを忍び、耐え難きを耐え」、それでも諦めることなく次世代技術に磨きをかけ、次に来るはずの福音を待ち続けてもらいたい。
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