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第41回

「551」面シリコン基板に3次元立体構造MOSトランジスタを作れ!!


~「インテルを震え上がらせた男」東北大学・大見忠弘氏は今も健在~

2013/12/20

(株)産業タイムズ社 代表取締役社長 泉谷渉

 「100表面のシリコン基板では今の状況をブレークできない。ゲート絶縁膜の薄膜化とデバイス寸法の微細化だけで性能向上を遂げてきたシリコンLSIの技術発展は、今や完全に停滞した。15年間で動作速度を115倍にして来たLSIは、2005年から3.8GHzで止まってしまった。ゆえに、世界のIT機器の進歩がなくなってしまったのだ」

東北大学・大見忠弘氏(左)と参議院議員の中野正志氏(東北NEDIAキックオフ・パーティの席上)
東北大学・大見忠弘氏(左)と
参議院議員の中野正志氏
(東北NEDIAキックオフ・パーティの席上)
 持ち前の強い意思を顔のおもてに表し、大見忠弘氏はこう切り出したのだ。日本電子デバイス産業協会(NEDIA)の東北キックオフセミナー(仙台、12月11日開催)の講演における発言である。大見氏は日本の半導体がめちゃくちゃになっている現状を憂えたうえで、ソリューションはもうできているのだとして、こうコメントする。
 「1963年のこと、たまたま日立の大野さんが成し遂げた仕事であるが、シリコンの100面によい酸化膜ができた。しかし100面は反応力がなく、無理やり高熱処理をして現状のLSIに持ってきた。ところが、もはや限界に来ている。しかして、はっきりとした解はあるのだ。ゲート絶縁膜にラジカル窒化膜(Si3N4)を導入せよ。シリコン界面やゲート絶縁膜の原子オーダーを平坦化せよ。そして、何よりも551面シリコン基板を導入しろ!!」

 大見氏は長く東北大学教授として世界の半導体業界を学問の領域で引っ張ってきた人物だ。現在は東北大学未来科学技術共同センターのシニアリサーチフェローを務めておられるが、かつて「インテルを震え上がらせた男」として有名だ。また、ノーベル賞候補の一角にも挙げられた人でもある。今や世界チャンピオンとなったインテル社は、大見氏に「こんなプロセスではろくなものはできない!」と一喝され、その教えを乞うた結果としてあっという間に世界No.1プロセスの製造技術を身につけていったのだ。

 「クリプトンとキセノンを使ってシリコン表面に窒化膜を形成すれば、今までの高熱酸化とは決定的に異なるブレークスルーが生まれる。つまりは、ラジカル酸化による超高品質のSiO2ができるわけで、900℃で処理していたものが、何と400℃で実現できる。つまりは、Kr/O2プラズマによる原子状酸素の酸化レートはSi表面の面方位、結晶状態またはドーピング濃度に依存しない」(大見氏)

 分かりやすくいえば、ラジカル酸化ならば、すべての面方位のシリコン表面上に同じ膜質のSiO2膜が同じ成膜速度で形成されるのだ。つまりは、現状の半導体業界で強く望んでいる「3次元立体構造MOSトランジスタ」へのロードマップがきっちり示されたことになる。さらに、ラジカル酸化膜の寿命は従来の酸化膜に比べ3万倍向上するという。こうした技術に加え、Accumulation Mode MOSトランジスタの全面導入を図り、積層低誘電率層間膜を作れば、最大3.8GHzで止まっていた動作速度は、何と100GHz(45nmの場合)を超えてくるというのだ。

 「フォトマスク価格の高騰も大変な問題になっている。微細化が進めば進むほどフォトマスク製造の問題が半導体の進歩を阻害する。今や45nm世代で400~500時間やれば1枚数億円のフォトマスクが必要になる。これでは商売にならない」(大見氏)

 そこで大見氏は、光(2次元アレイ光)によるマザーマスクの超高速・低コスト描画を目指す技術をすでに作り上げた、と胸を張るのだ。一方、コアとなるプラズマ装置については、915MHz金属表面波励起高密度プラズマ装置を作り上げており、ガスの種類を次々と切り替えることで、同一チャンバー内で異なる薄膜の連続成膜・連続エッチングが行える装置もできあがっているという。その他にも回転マグネットスパッタ装置の開発、MSEP装置を用いたダメージフリープラズマドーピング技術の開発にも着手している。

 こうして確立されつつある大見氏の技術は、実は日本勢が得意としているパワーデバイスの3次元立体構造には最適であるという。しかして、日本のカンパニーはこれを採用しようとはしないのだ。大見氏が作り上げた技術の新たな情報が流れて、いの一番に大見氏のところにすっ飛んでくるのは、インテルであり、台湾のTSMCであり、韓国のサムスンなのだ。日本勢の姿はそこにはない。最先端のものにチャレンジする姿勢が垣間見えないことが悲しい、と大見氏は嘆くのだ。

 最後の質問のところで、筆者はインテルの3次元構造トランジスタ実現についてどうお考えですか、と大見氏に問うてみた。答えは明確であり、きっちりとした口調で大見氏はこう述べたのだ。

 「インテルの3次元立体構造トランジスタは100面でやっているが、実は角度を変えることで側壁は551面になっている。インテル恐るべし、彼らはバカではないのだ。しかして、それでもインテルは最終的には完成できない。大見メソッドを使わない限りはね」
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