商業施設新聞
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No.932

イオンは直営アパレルを諦めない


若山智令

2023/11/21

 国内流通大手であり、総合スーパー(GMS)を展開するイオンとイトーヨーカ堂。今、この2者で異なる取り組みを進めているのが直営アパレルだ。イトーヨーカ堂はいわば戦略的撤退をするのに対して、イオンは拡大路線で新たな売り場モデルを構築し、今後この新モデルを広げていく。

 数年前から、GMSにおける直営アパレルは苦戦が続いている。高品質・低価格な専門店の台頭、eコマースの伸長や浸透、そもそも洋服をあまり買わなくなったなど理由は様々。店舗を覗いてみると、1階の食品スーパーはお客さんで賑わっていても、上層階の衣料品や生活品フロアはがらんとしている、というケースも少なからずある。GMSの強みは、何といっても「ワンストップで衣食住の必要なものが揃う」というその利便性だと思う。だが、GMSはここ数年苦戦を強いられており、両者ともGMSの改革を迫られていた。こうした中、23年には直営アパレルの方向性に違いが現れた。

 まずはイトーヨーカ堂。イトーヨーカ堂の祖業は洋品店であり、いわば最も得意とするところなのだが、同社は26年2月期までに直営アパレルの撤退を決めた。インナーなどの肌着は継続するものの、紳士服や婦人服といった大部分は取り扱いを止め、その売り場は衣料品テナントの導入などで補うという。また、イトーヨーカ堂全体としては「食」に経営資源を集中するとともに「フード&ドラッグ戦略」として、スーパーマーケットの食料品売り場と、ドラッグ・コスメ売り場をシームレスに連携させた買い回りのしやすい売り場づくりを構築し、直営アパレル撤退による売り上げ減少をカバーしながら、今後の成長エンジンとしていきたい考えだ。このドラッグ・コスメ売り場は1~2年の間で全店導入を目指している。

イオンは「専門店モデル」でGMSのアパレル売り場を活性化していく
イオンは「専門店モデル」で
GMSのアパレル売り場を活性化していく
 ではイオンはどうか。イオンはイトーヨーカ堂とは真逆で、直営アパレルの拡大路線へと進んでいく方針を掲げている。その一つとして、イオンの主力を担うイオンリテールは、GMSの直営アパレル売り場における新しい形として「専門店モデル」を開発し、1号店を「イオン船橋店」に展開した。この専門店モデルは、年齢別・シーン別に分類した6つの専門店(デイリーカジュアル、オケージョン、セカンドライフ、ネクストエイジ、スポーツライフ、雑貨)の展開を行うとともに、セルフ・タブレット型レジを導入し、売り場環境とサービスレベルの向上を図るもの。イオン船橋店のように6つをフルラインアップで揃える店もあれば、「イオンスタイル武蔵狭山」ではアパレル売り場が広く取れないため、6つのうち1つだけとしている。このようにマーケットやニーズに合わせたフレキシブルな展開が可能だ。また、イオン船橋店でのノウハウを生かし、10月には「イオン浦和美園店」に導入。ここから本格的な専門店モデルの拡大を開始し、11月には「イオンスタイル古川橋駅前」にも導入。今後12月に「イオン各務原」、24年春には「イオンナゴヤドーム前店」でも展開をスタートする予定である。

 正解の見えない両者のGMS改革だが、日本を代表する流通大手2社の取り組みが異なる点は非常に興味深い。ましてや衣料品は重要なカテゴリーの一つ。どちらも成功してほしいと思うことを前提に、数年後にどういう答えが出ているか楽しみだ。
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