商業施設新聞
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No.937

賑わい創出の難しさ


高橋直也

2023/12/26

麻布台ヒルズは賑わいを生み出しそうだ
麻布台ヒルズは賑わいを生み出しそうだ
 森ビルが開発を進めていた「麻布台ヒルズ」が開業し、多くのメディアで取り上げられている。今後、食のマーケットや、ラグジュアリーブランドのオープンを控えており、むしろ本当の盛り上がりはこれからだろう。森ビルが手がけた虎ノ門ヒルズ、六本木ヒルズとも徒歩範囲であり、各施設の回遊が期待される。


 森ビルの手腕で恐れ入るのは、人を呼び込み、賑わいを作り出す手腕だ。さほど外から大勢の人が来街するエリアではなかった麻布台を、休日に遊びに行く場に変えようとしているほか、虎ノ門も東京有数の最先端オフィス街に変えた。虎ノ門は今、多くの高級ホテルが集積する街にもなっているが、虎ノ門ヒルズの影響も小さくないだろう。人を呼び込み、賑わいを作り出した街として六本木も忘れてはならない。

 昭和生まれにとって、六本木といえば「夜の街」だったのではないか。もしかすると怖い・危険というイメージを持つ人もいるだろう。しかし今や映画、アート、オフィス、商業、宿泊など様々な機能が集積する街でもある。街を変えたのは「六本木ヒルズ」と「東京ミッドタウン」だ。以前、前述の施設開発に携わった人と話していた時、「当時はランチに苦労した」と漏らしていた。六本木は夜の街だったこともあり、居酒屋などでランチ営業をしている店がかなり少なかったそうだ。今や朝・昼・晩と美味しい食事が食べられるのも、六本木ヒルズと東京ミッドタウンをきっかけに街が変わっていったことが影響しているはずだ。

 麻布台、虎ノ門、六本木以外にも大型開発により、変わろうとしている街は東京に限らずいくつもある。こうした街はいかに人を呼び込んでくるかが課題だ。新宿、渋谷、池袋などすでに大勢の人が流れており、「いかに捕まえるか」も大変だが、そもそも「人の流れをつくる」ことも難易度は高い。駅ソトや駅から少し離れたところ、繁華街などの商業エリアから少し離れたところではどうしても人流が生まれにくい。目的型施設にするなどの手法はあるが、どうしても駅前や商業エリアなどいわゆる「中心部」が賑わってしまう。駅から離れているのに賑わいを創出している「渋谷PARCO」など驚異的な施設もあるのだが、やはり一般的には難易度は高いだろう。もちろん駅ビルや商業エリアにある施設などでも各事業者は知恵を絞り、流れゆく人を取り込むために相当な工夫をしている。だからこそ余計に新しく賑わいを作ろうとしているエリアは、駅ビルや商業エリアの施設との競争が激しくなる。

 このコラムも2023年は今回で終了。来年も様々な商業施設が開業、あるいは開発が進んでいく。少子高齢化の中、商業施設が新設するということは少なからず「他所から客を奪う」という現実もある。そのためにも他施設より秀でた何かが必要になる。新たに賑わいを生み出す街・エリアはどのような仕掛け、取り組みをするのか楽しみだ。
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