商業施設新聞
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No.939

外食産業とHC企業の力強さに期待


笹倉聖一

2024/1/16

 能登半島地震で被災された方々に心よりお見舞いを申し上げるとともに、早い復旧・復興をお祈りする。

 2023年秋から冬にかけて、外食産業とホームセンター(HC)企業から活気あふれるイベントや試食会に招かれ、参加してみた。24年にかけての両業界の力強さを感じる催しだった。

三田製麺所のファンミーティング
三田製麺所のファンミーティング
 (株)エムピーキッチン(東京都渋谷区)が運営する「つけ麺専門店 三田製麺所」は、23年に創業15周年を迎え、同年11月23日の勤労感謝の日には、三田製麺所史上初となるファンミーティングを開催した。場所は三田製麺所の東京・池袋西口店の2階で、筆者は取材陣として潜入した。つけ麺店のファンの集いと聞いたときには、さぞかし恰幅の良い男性が大勢集まるだろうと思っていたのだが、公募から選ばれた約15人のうち半数が女性だった。(1)三田製麺所のあゆみとこれからについての紹介、(2)つけ麺並盛の麺量(320g)を、手づかみで勘によって計って盛り付けるレクリエーション、(3)つけ麺(特濃つけ麺やたまごかけ麺、から揚げ)を試食しながらの座談会などが行われた。楽しい対話に加え、お腹も満たされた上にスマホのワイヤレス充電器まで記念品としていただいた。マニアックな三田製麺所クイズでも盛り上がり、同製麺所の三田本店の創業時のサービスを正しく選択する問題や、季節限定つけ麺が初登場した年度を順番に並べる出題などがあり、常連客のつわものたちが頭をひねりながら答える姿は微笑ましかった。「つけ麺専門店 三田製麺所」は次回以降のファンミーティングも企画する。

 DCM(株)(東京都品川区)が運営する同社初の都市型HC新業態「DCM DIY place」(恵比寿ガーデンプレイス センタープラザ内)は、23年11月に開業1周年を迎え、「新プロジェクト発表会」を催した。「恵比寿ガーデンプレイスリメイクプロジェクト」が発表され、タレントの井上咲楽さんが登場した。井上さんは、日頃からコンポスト(堆肥)や手作り化粧水など、「丁寧な暮らし」を実践している。そこで、22年11月の恵比寿ガーデンプレイス センタープラザの開業を機に使われなくなった廃ベンチをDIYでリメイクしたという、食材のスパイスを収納できる箱を披露した。井上さんは「DIYをやってみてすごく楽しかった。ベンチが自分の使いたいものに変わっていく過程が楽しかった。削れば木材もキレイになるし、味が出てくる」と語った。恵比寿ガーデンプレイスのベンチには思い入れがあるもようで、「私はホリプロタレントスカウトキャラバンから見出してもらったが、そのオーディションの地方予選会場が恵比寿ガーデンプレイスだった。ベンチにも座っていたから、(今回リメイクしたのは)あの時のベンチだったのかもしれない」と吐露した。DCM DIY placeの24年の企画が楽しみだ。

 一方、同じHC業界の(株)カインズ(埼玉県本庄市)は、24年春に商品化する新ブランドのコンセプト発表会を23年秋に催した。商品開発の起点は、カインズの提供価値を体現した8つのくらしのコンセプト。そのコンセプトを元に、(1)くらしを「支える」、(2)日々のくらしを「楽に」、(3)日々のくらしを「すこやかに」、(4)くらしを自分らしく「クリエイティブに」、(5)いつものくらしに「プロの視点を」、(6)職人さんの一日を「よりよいものに」、(7)ペットとのくらしを「心地よく」、(8)自転車をくらしの「パートナーに」の8つのプロダクトブランドを設立した。春の商品化に期待が膨らむ。

 また、(株)トリドールホールディングス(東京都渋谷区)傘下の(株)丸亀製麺は、同社初めての飲食業以外の体験特化型施設「手づくり体験教室東京・立川」を丸亀製麺立川店併設型で、23年11月21日に開業した。前日の記者発表会には、女優の上戸彩さんが出席し、うどんの生地をこねたり切ったりして手作りを体験した。その前日には、上戸さんが子供たちと同施設を訪れてうどん教室を体験したことを明かし、「子供が包丁を持ってお母さんがバックハグみたいにして(麺を)切ることができた。親子がぎゅっと密着する瞬間が少なくなっている気がするので、親子のコミュニケーションにも良い体験だった」と話した。「家族の時間はしっかりと自分で作らないと、子供の相手をしてあげられなかったりするので、あえてこういう場所に来て楽しむのは良い」と同施設への親子での来場を感慨深く語った。丸亀製麺は同時に、本ずわい蟹を使用した「かに玉あんかけうどん」、鹿児島黒牛を使用した「和牛すき焼き釜玉うどん」を冬限定で販売することも発表した。

 また、同じくトリドールホールディングス傘下の(株)KONA'Sは、千葉県八千代市でハワイアン カフェ・レストラン「コナズ珈琲」八千代緑が丘店(134席)を23年12月14日に全国42店目として開店した。コナズ珈琲は、「いちばん近いハワイ」をコンセプトに掲げており、八千代緑が丘店の内覧会は、夕刻になると店の前には火が灯され、リゾート気分を満喫できる感激のひと時になった。

 コロナ禍の外食飲酒業界は苦戦したものの、多業態飲食店経営の(株)ダイナック(東京都港区)は力強い。横浜市の行列店「釣宿酒場 マヅメ」の新業態「大衆すし酒場 スシマヅメ」野毛本店(同市中区)を23年12月1日に開店した。試食会へ訪れると、ドリンクメニューの「忍者氷のハイボール」の体験を薦められた。同メニューは、飲料がグラスに注がれると、その瞬間にグラス内の延べ板状の氷が忍者のように視界から消え、見えなくなった。筆者が「氷が消えた!」と感激すると、店員たちが「消えた、いただきましたぁ」と一斉に声を上げ店内はとても威勢が良い。新業態「大衆すし酒場 スシマヅメ」野毛本店の「釣宿酒場 マヅメ」並みの行列と繁盛を24年にも祈願する。

 飲食や小売業界は、20年からのコロナ禍を経て復活へと向かってきた。復活が確固としたものになるように、24年の経済が活況であることを願う。
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