電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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照明で拡大した次に起こるのは?


~巨大化するLED市場、二極化するLED産業~

2015/5/22

 LEDデバイスの需要は携帯電話用小型液晶画面で成長のきっかけを作り、大型液晶TV向けバックライトで急激に拡大した。そして、第3次成長期の現在は、照明によってさらなる拡大が見込まれている。2014年のLEDパッケージ市場は106億6100万個であり、15年には110億3900万個にまで成長するだろう。3段階の成長を背景に、LED市場は11年から上昇気流に乗って伸び続けている様子がグラフから見て取れる。

 しかし、その成長は今年(15年)までとなりそうだ。IHSでは、15年で市場はピークアウトし、成長はストップすると予想している。18年のLEDパッケージ市場は101億8200万個と、14年のレベルを下回ると予想される。

 市場がピークアウトする理由は、LED照明の普及による大衆化が価格にプレッシャーをかけるからである。これにアジアメーカーが仕掛ける価格競争が絡む。LEDパッケージの出荷数量は今後も右肩上がりの成長が予想されるが、この単価下落が影響し、金額面ではピークアウトするだろう。LED市場では普及が進み、金額ベースでは成長が限界を迎えつつあることが見えてきた。

 一方、将来の市場を予測するうえで注目されるのが、牽引役となるアプリケーションの動向だ。14年はバックライトが全体の45%、General Lightingが38%であった。18年はバックライトが34%、General Lightingが48%を占めると予想される。すなわち、アプリケーション別ではバックライト、General Lightingの比率が高いが、16年から逆転し、General Lightingが筆頭アプリケーションになるだろう。

 全体の7%を占めるOthersは上記のアプリケーションにカウントしない製品である。その正体は、主に中国で生産されるオフスペック品=規格外のLEDパッケージである。中国メーカーは性能が規格に収まらない製品を廃棄する習慣が少なく、グレーマーケットで消費させる構図ができ上がっている。

 オフスペック品の行く先にはToy、Gray phone、Gadgets(雑貨、器具、小道具)などのニッチアプリケーションの表示用またはデコレーション用イルミネーションなどがある。今後もOthersの市場は存在し続けるだろうと予想される。

■中国がLED市場を飲み込む日

 LEDのマーケットは世界のいたるところで本格的な立ち上がりを見せている。中国も例外ではない。LEDの優位性に対する認知度の向上や国内経済の安定成長により、むしろ中国国内には世界でも有数の巨大市場ができつつある。中国では、一般照明以外にも液晶TVの大型化・高精細化の波が打ち寄せており、バックライトがCFLからLEDへ急速にシフトすることで追加需要も生み出す。LEDは比較的技術障壁が低く、中国にとってはマーケットの追い風を取り込みやすい産業になっている。

 09年から中国政府は、生産と消費の両面から地域の意欲や競争意識を盛り立てる産業促進計画を実施してきた。中国では半分以上の省と市でLED照明産業パークの建設が進められている。地場のLED関連企業には、政府の様々な支援と優遇政策のバックアップが提供されている。

 LED市場は巨大な規模に成長したが、すでに中国メーカーのLED産業への進出は始まっており、中国のLEDパッケージ生産も急成長している。

 中国のLEDパッケージ生産は、11年には158億1000万個で、中国の占める比率は27%だった。14年には2・8倍の445億1100万個まで生産を伸ばしており、中国の占める比率は4割に上昇した。18年には、中国のLEDパッケージ生産は764億800万個に達し、中国の占める比率は過半に達すると予想される。

 中国のLEDパッケージメーカーではMLSが絶対的優位を確立し、中国国内のライバルをリードしているが、中国メーカーの戦略は酷似しており、今後は一般照明がターゲットの中心となるだろう。中国メーカーでも、先頭グループは有数のLEDチップメーカーや海外のリーダー企業と連携を強化している。


■老舗がしのぎを削るハイエンド市場

 前述の予測のとおり中国のLED産業が台頭すれば、ローエンド製品の台頭と歯止めが効かない値下げ合戦など、市場の様相が大きく変わる可能性が高い。日本や欧米の老舗LEDメーカーたちが揃って高輝度ランプ市場に軸足を移すのは必至となるだろう。

 高輝度LEDランプでは、LED技術の基本である発光効率にはさらなる革新が必要である。また、発光パワーに比例して発熱量が増加するという課題があり、パッケージ分野でも長年にわたって開発が続けられてきた。

 高輝度LEDパッケージでは現在まで、コスト面で優位性の高いラテラルタイプが主流となっている。

 だが、高輝度、高信頼性、長寿命のすべてに卓越した性能が要求される大規模建築やスタジアム、道路灯の照明にはラテラルタイプのパッケージは限界で、次世代技術としてフリップチップやバーチカルタイプのパッケージの開発が始まっている。

 これらの次世代パッケージは光利用効率が高く、高熱にも強いため、大電流を流すことができる。車載LEDランプにもこうした技術は応用されていくはずである。しかし、この分野はパテントも絡み、老舗がしのぎを削る状況になっており、中国などのアジアメーカーは参入できない。

 IHSでは、将来のLED照明産業は、先進国の老舗LEDメーカーがしのぎを削るハイエンド製品と中国メーカーが掌握する大規模生産品とに二極化すると予想している。

 白色(青色)LEDは1996年に日系メーカーと日本人技術者によって発明されたものであり、ノーベル賞受賞者をも輩出した日系メーカーと日本の技術力は常に世界のトップを歩いてきた。今後も日系メーカーのポジションはハイエンド製品重視に傾き、世界を相手に熾烈な技術競争を繰り広げるだろう。



IHS Technology 主席アナリスト 李根秀、お問い合わせは(E-ail : forum@ihs.com)まで。
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