電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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FPD市場「中国のインパクト」がカギ


~「IHSディスプレイ産業フォーラム2015夏」開催(上)~

2015/6/29

シニアディレクター 田村喜男氏
シニアディレクター 田村喜男氏
 大手調査会社のIHSは、7月29日、30日に国内最多の受講者数を誇るFPD市場総合セミナー「IHSディスプレイ産業フォーラム 2015夏」を東京コンファレンスセンター・品川(東京都港区)にて開催する。本稿では、その注目の講演内容を登壇アナリストに3回にわたって聞く。第1回は「FPD市場総論」を担当するシニアディレクターの田村喜男氏に主要テーマを伺った。

◇  ◇  ◇

―― 今回のご講演のカギとなるテーマは。
 田村 「中国のインパクト」だ。積極的な増産投資によって、中国拠点のパネルの生産能力は18年に韓国勢を上回るといわれている。確かに勢いはあるが、スマートフォン(スマホ)市場の成長が鈍化傾向にあるなかで増強途上の低温ポリシリコン(LTPS)は本当にうまく立ち上がるのか、中国のテレビブランドは海外市場にも展開していけるのか、といった課題を抱えている。
 こうした中国が抱えるテーマと今後の需給バランスを関連させながら講演させていただくつもりだ。

―― パネルの需給バランスについて。
 田村 通貨安となっている新興国ではテレビやノートPCといったFPD製品が値上がりしてきており、これがセット需要の下ぶれにつながる。しかも、セットメーカーは強気の15年の計画に対応して、上期のパネル調達が過熱気味であった。このようなパネル在庫の過剰分の生産調整も見込まれ、上期から下期にかけてのパネル需要増加は期待できないもようだ。中国を中心に供給が増加する16年は、15年よりさらにパネルの供給過剰が見込まれる。その結果コモディティー化したサイズに対応するパネル価格は、キャッシュコストを目指して下落していくことになる。

―― 中国LTPSの技術水準は。
 田村 日本のFPDメーカーが最も気にしているテーマだ。事業化後3年を経過した天馬微電子は5インチFHDパネルの量産で稼働率を上げ、かなり軌道に乗ってきた。まだミドルクラスの製品だが、ローカルスマホメーカーに採用されており、これが徐々に広がってくれば先行メーカーの脅威になり得る。ロードマップ上にはタブレット用の7~12インチ、ノートPC用12~15.6インチをはじめ、ノートPC用では4K20インチといった提案もなされている。
 だが、台湾勢でさえ成功しなかったLTPSの事業化を中国勢が簡単に成し遂げられるのか、見極めるにはまだ少し時間がいる。ミドルクラスの製品だけでは投資の回収にも時間を要する。今後の中国勢のLTPS新ラインはすぐには量産化には寄与しないため、LTPSの需給バランスは16年には一時的に回復基調になるとみている。


 
―― 需給の調整が強いのはむしろテレビ用ですね。
 田村 8.5世代ラインの新設・稼働が中国で相次ぐため、16年にかけて55インチの供給量がぐっと増えてくる。4Kへの高精細化は当社の予測どおりに進んでおり、ここはポジティブに捉えてよい。
 だが、前述の為替問題で下期のテレビ需要は当初想定を下回る。主要パネルメーカーの収益は、15年いっぱいは何とか黒字を維持できるだろうが、16年には赤字に陥る可能性が高い。
 さて、次の技術革新の1つともいえる8K化を考えると、長期的な高精細化・大画面化のトレンドにそろそろ限界が見えてきた。17~18年には本格的に登場しそうだが、4Kと8Kの差が見た目にはっきり区別できるのは80インチ以上といわれており、このサイズになると需要台数がきわめて限定的になる。

―― 総じてFPDパネル市場の天気をどう予報していますか。
 田村 需給バランスという観点から、テレビ用は15年上期が晴れ、下期が曇り、16年は雨。同じ順でIT用は曇り、雨、雨とみている。

―― 中国勢の台頭、高精細化と大画面化の行き詰まりを考えると、先行FPDメーカーにとっては、今後どこに注力していくのかが重要になりますね。
 田村 注目すべきアプリとして自動車がある。スマホ用FPDはパネル生産額の約25%、面積ベースで約7%を占める。自動車用は、まだその10分の1の規模にすぎないが、金額も面積も今後の成長が期待できる分野だ。
 だが、これに続くアプリがなかなか見当たらないのも事実だ。フレキシブルに活路を見出すのか、または反射型か、透明パネルや広色域、はたまた永遠のテーマである省エネ化なのか。成長限界への対策として何に取り組むかが、パネル各社にとって今後ますます重要になる。

(聞き手・編集長 津村明宏)




 IHSディスプレイ産業フォーラム 2015夏の開催概要・参加申し込みは、専用サイトhttp://www.displaysearch-japan.com/seminar/29/まで。
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