電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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産業用半導体でインテル4位に


~IoT―インダストリアル・インターネット市場の拡大~

2015/10/2

 このところIoT関連、無線技術の展示会が立て続けに開催された。IoTやM2M、ひいてはドローンといった、今後成長が見込まれる技術を多くの企業が披露する機会が増えており、市場の本格拡大が感じられるこの頃である。

 IHSでは、IoTという大きな市場の中でも産業用途、いわゆるインダストリアル・インターネットの市場拡大が中長期的に産業機器市場を大きく変えると予測している。以前のコラムで無線を活用したセンサーネットワークの市場拡大について申し上げたとおり、これまではコンシューマー機器のインターネット接続が通信機器やモジュール市場の成長を牽引してきたが、今後は産業機器市場が新たな成長ドライバーとなると考えられる。

 幸い日本には世界を代表する産業機器メーカーが多数あり、その技術力や信頼性は世界中で定評されている。では半導体・デバイス市場はどうだろうか。

 図1は、産業用途半導体の世界市場出荷金額の推移である。従来の予測どおり、産業用途半導体の世界市場は着実に成長しており、今後も1桁台半ばの年平均成長率(CAGR、2014~19年)を当社では予測している。


 ご存知のとおり、産業機器市場は投資主体が企業のため世界のマクロ経済動向に影響される部分が大きいが、Industry4.0やサイバー・フィジカル・システムに代表される大きなトレンドに方向づけられ、新技術が導入される動きは業界のリーディングカンパニーによって進められており、産業機器向け半導体市場の成長もこれに紐付けられると筆者は考えている。

 一方、この成長市場を捉えている日本のデバイスメーカーはあまり多いとはいえない。IHSの集計によると、産業機器向け半導体出荷金額Top20(14年)の中で日系メーカーは4社、うち大幅に増収しているのは2社だけである。産業機器市場全体の裾野が広く、半導体売上高Top20の合計シェアが50%強のため、半導体市場もさらにロングテールであるといえるものの、コンシューマー機器に比べて製品のライフサイクルが長く、ボラティリティーの低いこの市場の成長の波をうまく捉えられる方法はないだろうか。

 図2は産業用途半導体のシェアである。TI、STマイクロ、インフィニオンといった産業用半導体大手メーカーがトップ1、2、3と並ぶのは周知と思われるが、インテルが第4位にランクされ、直近では2桁増収が続いている。
 色々理由があるにせよ、PC市場の成熟から成長市場である産業分野に戦略的にシフトした結果が表れているといえる。インテルのようにこれまでMPUというバルキーな市場を主戦場としてきたメーカーにとって、産業用半導体市場はロングテール、カスタム対応といった手離れの悪さがハードルになったと推測される。このような問題に対して、インテルや他のメーカーは組み込みや開発キットなどパートナーシップを幅広く活用している。


 また、他の海外メーカーでは、精通したユーザーがカリスマブロガーのようにアプリケーションの現場を盛り上げるといったウェブコミュニティーも活用されている。

 IoTやインダストリアル・インターネットといったロングテールの市場では、多様かつ新しい手法による需要創出が不可欠だと筆者は考えている。



IHS Technology アナリスト ジャパンリサーチ 大庭光恵、
お問い合わせは(E-Mail : forum@ihs.com)まで。
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