商業施設新聞
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No.557

諸行無常と好調企業


高橋 直也

2016/5/24

 ある休日、上野公園のスターバックスで読書でも……と思い立ち、上野公園に行った。ところがまだ10時だというのに、スターバックスは満席で入れなかった。仕方なく、ノコノコと公園を出たが、小腹がすいていたので公園のそばにあるマクドナルドへ行った。しかし足を運ぶとそこにあったのは、マツモトキヨシだった……。

 上野に住んでいたとき、よく訪れた店だった。確か高校の修学旅行のときも行ったはずだ。思い出深い店だったのだが、いつの間にか閉店していた。上野エリアの幹線道路である中央通りに面していることもあり、マクドナルドがどん底の不調にあったときも客はかなり入っていた記憶がある。儲かっていたと思うのだが……。マクドナルドは近年、戦略的退店を加速しており、その一環なのだろう。

マツモトキヨシになっていた……思い出よ、サラバ
マツモトキヨシになっていた……思い出よ、サラバ
 マクドナルドの退店については商業施設新聞でも扱ったが、取材前後に「マクドナルドの跡地は何になるんでしょうね」という話を何度かしたことがある。マクドナルドは路面、ショッピングセンターなどででかなり視認性の高い立地に出店しており、跡地の利用法は注目されている。

 実は当社オフィスの近くにあるマクドナルドも閉店後、マツモトキヨシになっている。岩本町駅および秋葉原駅から近い、人通りの多い立地だった。ドラッグストアも駅前など交通量の多い立地を求めることが多く、マクドナルドと求める場所は似ている。ほかにもドラッグストアが出店した事例は多そうだ。

 ここ数年はマクドナルドの不振が取り上げられることが多いが、いつの時代も不調な企業、ブランドはあり、その跡地の利用法は話題になる。例えば5~6年前、ファミリーレストランが回転寿司や焼肉店に押されて不調の時代、エムグラントフードサービスの「ステーキハンバーグ&サラダバー けん」がロードサイドで居抜き出店を重ねて話題になった。エムグラントフードサービスに居抜きされたくないがために、わざわざ退店の際に建物を壊していった会社まであるらしい。

 現在はマクドナルド以外に、ワールドやTSIホールディングスなど大手アパレルの退店が加速しており、跡地の活用も注目されている。空きテナントになってしまうという物理的な穴に加え、出店していたSCおよびエリアに30代前後の女性向けのファッションが少なくなるというMD上の穴も開いてしまうという。ストライプインターナショナル(旧クロスカンパニー)が今年2月から30代の女性をターゲットにした新ブランド「AMERICAN HOLIC」を開発し、出店を開始したが、大手の退店に伴う穴にチャンスを見出してのことだ。

 マクドナルドにしてもワールドにしても、改めて跡地をみるといい場所に出店していることが多い。少し前までここまで苦しむことなど想像できなかった。そういえば某メーカーに勤める友人が、自社の携帯音楽プレイヤーが全然売れないと言っていた。理由は携帯電話で事足りるようになったから。ちなみにその携帯音楽プレイヤーは一昔前、非常に売れていた機種である。これも時代の流れか。

 いまブイブイ言わせている企業も、いずれは時代の波に逆らえなくなるのだろうか。筆者が訪れた上野公園は、花見が有名だ。今年もたいそう賑わったと聞く。来年、好調企業が花見に出かけ、賑やかな音が聞こえると思ったら実は祇園精舎の鐘の声で、花は沙羅双樹だったりするかもしれない。
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