電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第189回

コカ・コーラのライセンスを持つ「ペニージャパン」に注目


国内BARのネオンサインシェア80%、有機EL展開など模索

2016/6/24

ペニージャパンのBAR向けネオンサインは国内シェア80%
ペニージャパンのBAR向けネオンサインは
国内シェア80%
 東急東横線の都立大学近く、住宅街のそばにひときわ鮮やかな電飾サインが目立つ会社がある。国内のBARにおけるネオンサインのシェア80%を持つこの会社は、「古きよきアメリカ」を追求するコンセプトで知名度を上げていったのだ。コカ・コーラのライセンスを持ち、国内におけるブランディングのサポートを一手に引き受けている会社でもある。この会社は1985年に設立され、その名を「ペニージャパン」という。

 「創業者は今から約30年前にこの会社を旗揚げしましたが、わずか28歳の若さでした。今で言うベンチャー企業の走りでしょう。24歳で個人商店として開業し、ヨットの中古販売からスタートしましたが、その後アメリカングッズの販売に展開していきます。オーストラリアに行ってライセンスを取り、日本で初めてスノーボードを販売した人でもあります」

 こう語るのはペニージャパンにあって代表取締役副社長を務める湯浅千鶴氏である。実は彼女こそ創業者の妻なのだ。残念ながら創業者は先ごろ逝去されたが、そのDNAはペニージャパンで働く二十数人のスタッフに乗り移り、今も新たなる開発を求めて必死に戦っているのだ。

 同社の最大の強みは、何といってもコカ・コーラの日本におけるライセンスを持っていることであり、ネオンサインをはじめとする各種販促グッズをほぼ独占的に製造していることである。製造については中国の協力工場が担当しているが、この品質と納期がコカ・コーラに評価され今日に至っている。売上の筆頭格を占めるのはもちろんコカ・コーラであるが、その他にもサントリー、アサヒビール、ハイネケン、モルソン・クアーズ、キリン、ブラウン・フォーマン、ディアジオ、カンパリなど大手のネオンサインや販促グッズの製造を手がけている。


 「ただ最近のネオンサインの世界は、ヨーロッパの水銀規制も影響してLEDに急速に移行している。水銀を使うテクノロジーでは手を出せなかった人たちが、一気にLED搭載を武器にこの業界に乗り込んできた。結果としてシェアは下がっていく。会社は何らかのかたちで次の展開を考える重要な時期に入ってきた」(湯浅副社長)

 同社が独自に持つデザイン力を生かし、無機ELを使っての商品化を模索したこともある。また最近では韓国を筆頭格に日本、中国などでも有機EL技術の急速な発展および量産化が進んでいるだけに、これを使っての新商品展開も検討しているようだ。

 同社にあって代表取締役社長を務める中林晋氏は、ペニージャパンの大手クライアントであるコカ・コーラから移籍するかたちで新リーダーを務めている。この会社は社内の雰囲気もよく、カスタマーの信頼を得られるだけの品質も充分に保持しているが、今後の方向については課題があるとして次のようにコメントする。

 「大手クライアントにおいては当たり前とも言うべきプロセス(重要な意思決定がクライアント内でどのようなプロセスで、できていくのか)を十分理解したうえで、営業進めていくことが大事だと考えている。そういった理解のもと、既存のクライアントだけではなく、新たな大手クライアントを獲得していきたい。」

 こうした中林社長の期待に応えてスタッフたちも動き出している。同社のビジネスは(1)ライセンスグッズを売る、(2)コカ・コーラの販促手伝い、(3)ノウハウを活かしての他のブランドへの展開があるが、やはり新商品開発と新たなクライアントの開拓が重要なカギを握るのだろう。

 専務取締役を務める営業本部長の美濃部剛氏は、「アルコールを扱う店に古きよきアメリカを再現する、というネオンサインでペニージャパンは知られてきたが、この伝統を守りつつも夢と希望を与える新商品開発は必要」と言い切るのだ。また、第1営業部部長の藤田和弘氏は、「安心・安全が当社のブランドであるが、レトロの世界とポップの現代をクロスオーバーする分野にもチャレンジしたい」と抱負を語る。

 ちなみに、同社の1回のオーダーは平均で言えば300~500台であり、もちろんフルカスタムの商品だ。過去には年に1ブランドのネオンサインだけで1万台を出荷するケースもあった。これまでは圧倒的に国内のBARをターゲットにしてきたが、今後は独自のロゴを使うアパレルメーカーや資材メーカーに売り込みをかける作戦も立てている。東京オリンピックでカジノビジネスが開花するとの情報もあり、同社のブランド力を生かせる分野として注目しているという。また、プラスチック樹脂の材料についてはタキロン製品を扱うロンテックから購入している。今後は材料で差別化するという作戦もあり、ロンテックとの共同開発も充分に考えられるとしている。ところで、ネオンサインにこだわることについて、湯浅副社長に聞いたところ明確な答えが返ってきた。

 「ネオンサインのすばらしさは、使用環境にあった雰囲気を出せることです。BARという空間にマッチしたロゴの表現力は色っぽく、カジノで使われるネオンは高揚感を後押しします。ネオンサインはパリ万博で登場し、ガス灯と同じ頃に作られたものであり、150年以上の伝統を持つ照明です。このあたたかさを超えるものは、まずもってないでしょう」


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。30年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 社長。著書には『半導体業界ハンドブック』、『素材は国家なり』(長谷川慶太郎との共著)、『ニッポンの環境エネルギー力』(以上、東洋経済新報 社)、『これが半導体の全貌だ』(かんき出版)、『心から感動する会社』(亜紀書房)など19冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長 企画委員長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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