商業施設新聞
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No.326

時代のうつりかわリ


永松 茂和

2011/7/19

 東日本大震災以来、街の暗さが目立っている。震災直後の計画停電時には、街が一瞬で真っ暗になり、家屋内での停電を経験した。当然、日常生活に支障を来すだけではなく、セキュリティー面でも不安になる。計画停電が始まった当初には、まだ節電の意識が浸透していなかったせいかもしれないが、場所によっては店舗の看板や照明が明々と光って目立っていた場所があった。しかし最近は、そのような店舗もめっきり姿を消している状況だ。

 最初は暗くて違和感を覚えたものだが、順応性があるのか、慣れてしまったのか、不思議なことに今では落ち着きさえも感じる。会社のビルでも、共用部分の通路やトイレは明かりが消され、真っ暗な状態が日常化しており、たまに照明が明々と灯っているときには逆に違和感があるほどだ。
 聞いたところでは、外国人には日本の繁華街の明るさが異常に映るようで、節電後の状況を見てもまだ不自然な感覚があるという。ある業界団体の集まりに行った時に、店の明るさと消費者の購買行動に相関関係はあまりないと聞いた記憶がある。これも人間の慣れのせいで、流通サイドも顧客に分からないように照明の照度を落としたり、不要な所に照明を当てないなどの工夫を凝らしているという。
各自治体も緊縮財政を迫られている(本文とは関係ありません)
各自治体も緊縮財政を迫られている(本文とは関係ありません)

 自動車のメーカー団体は土日の操業を開始したり、官公庁などの一部ではサマータイム制を導入したり、百貨店でも公休日を設けることが決定し、夏に向けて各業界団体からさらなる節電対策が打ち出されている。
 日本経済は、リーマンショックで散々に叩かれ、さらに追い打ちをかけられる結果となり、全国の各自治体や企業ではさらなるコスト削減を実施することは確実だ。これは、ここ数年にわたる傾向であり、良い意味でも悪い意味でもマンネリ化した感がある。

 一昔前の話になるが、バブル期の景気の良かった時代には、金の流れが良く、今とは正反対に街は活気にあふれていた。そういえば、ふるさと創生事業というものがあったことが思い出される。バブル経済絶頂期の1988~89年に実施された政策事業で、市町村一律に1億円交付した。その使い道について国は関与しないということで、全国的にも話題を呼ぶとともに、地方自治体が自ら主導する地域づくりということで、創意工夫し地域の振興を図る動きが各地で試みられた。
 内容は様々で、交付された1億円をそのまま預金する堅実な自治体があれば、映画祭の開催や、美術館、科学館の建設など文化的な事業を行う自治体もあった。また、純金製のこけしやカツオ像を作ったり、日本一や世界一を意識した自由の女神像、すべり台、こま犬の製作など、観光の要素を意識した自治体もあった。変わったところでは、1億円全額投入しての宝くじの購入や、村営のキャバレーを開設したり、機能しない行き止まりの橋を作るなど、冗談とも笑い話ともとれる事業が続出した。

 現在、その施設がどうなったかは別として、色々な意味で余裕のあった時代だったのは間違いない。もう将来的にはあり得ない、過去の面白い遺産のひとつと言える。

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