電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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IoTとクルマの未来を徹底解説


~11月29日のフォーラム登壇アナリストに聞く~

2016/11/18

 大手調査会社のIHSマークイットは11月29日、IoTを軸に半導体・自動車・産業機器系などハイテク関連業界に及ぼす影響と商機をアナリスト陣が集中解説するテクノロジーフォーラム「IoT革命がもたらす国内ハイテク産業の商機」を東京コンファレンスセンター・品川で開催する。「IoTでつながるクルマの未来 Part-1/Part-2」と題して講演するアナリストの棚町悟郎氏と大山聡氏に講演の見どころを聞いた。

棚町悟郎氏
棚町悟郎氏
大山聡氏
大山聡氏
―― 棚町さんは「IoTが輸送を一変させる:自動車業界へのインパクトとは?」と題し、自動車業界からの視点で講演しますね。
 棚町 IoTが自動車にもたらすインパクトを紹介する。テレマティクス/M2M/IoVやV2Xといった個々の技術は「自動運転」というキーワードですべてつながっており、IHSでは2035年に完全自動運転車の新車販売が2000万台を超えると予測している。その影響は通信業界や輸送・サービス分野にまで及ぶ。自動運転に関する各国の規制を整理しつつ、他業界に与える影響を解説する。

―― 規制は将来の標準化をにらんだ動きとも受け取れますが、日本は遅れていますね。
 棚町 そのとおりで、車両の安全機能は欧州、V2Xは米国が牽引している。中国は現時点で少し欧州寄りとみているが、新興国はどこが牽引役になるのか見えない。

―― 通信業界に与える影響とは。
 棚町 スマートフォン(スマホ)化する車両に対し、通信事業者は課金サービスを提供したいが、自動車メーカーも主導権を握ろうと画策中だ。通信サービスは月々の安定収入になることを分かっているからだ。だが、膨大な通信データの処理やクラウドサービスを含めて考えると、時価総額でトヨタを上回るアップルやグーグルの存在を無視できない。課金の仕方を巡って、一部で立場が逆転するケースが出てくるかもしれない。

―― 輸送に関しては。
 棚町 物流はIoT化で貨物のトラッキングが容易になる。人の輸送では、自動運転でクルマの「所有より利用」が拡大し、カーシェアやライドシェアが普及する。先進国ではクルマの販売を伸ばしにくくなり、電装化率の上昇と相まって車両価格が上昇し、ライフサイクルも短くなっていくとみている。

―― IoTの影響は広範囲に及びそうですね。
 棚町 光ファイバー普及期の「ラストワンマイル」に似ている。もとの狙いは、高速通信網によって都市と地方の差を無くすことだったが、結果的に都市への人口集中と過疎化を止められなかった。現在、自動運転による無人タクシー事業などが開発中だが、果たしてIoTは社会問題解決の一助になるのか。電機・電子・通信業界の過去を振り返りつつ、それをもとに将来を検証しながら解説を加えたい。

―― 大山さんは「自動車用IoTに向けて電機業界がすべきこと」と題し、電機業界からの視点で講演予定ですね。
 大山 棚町の講演を受けて、電子機器市場や通信データ量の予測を紹介し、半導体の需要予測に展開していく。IoT用デバイスは無線マイコン+センサー+電源ICで成り立つ。また、車載半導体は制御系と情報系に分けることができるが、伸びしろが大きいのは後者だ。ここを巡って半導体業界で大型M&Aが頻発しており、なかでもクアルコムのNXP買収は自動車メーカーを震撼させるほどのインパクトがあった。スマホ用半導体という情報系でプロセッサー市場を制した巨人が自動車市場に本格参入してくるためだ。

―― ソフトバンクのARM買収もありました。
 大山 プロセッサーにARMのコアは不可欠だ。ソフトバンクにとって買収の最大のメリットは、IoTに必要な世界中のハードウエアの情報にアクセスしやすくなったこと。情報戦を制しやすくなったという点で、今やIoT市場で無視できない存在になった。

―― 日本企業は存在感を維持できますか。
 大山 文化的な背景があるとはいえ、日本企業は総じて事業化が遅い。IoTをどうビジネスとして具体化するのか真剣になるべきだ。いかに高精度なブレーキやステアリング(制御系)を作るために最新技術を投入しても「それはネットにつながるのか」と一蹴されてしまう時代になったのであり、危機感がまだまだ足りないと思う。
 特にアップル、グーグルといったICT陣営のリーダーは、クルマもIoT端末の1つと捉え、自動車業界に新しい概念を持ち込むことに成功している。自動車メーカー各社はクルマとスマホの連動を重視せざるを得ないのは分かるが、この2社をパートナーを考えるだけでなく、ライバルになり得ることを忘れるべきではないだろう。

(聞き手・編集長 津村明宏)

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 本フォーラムに関する問い合わせは、IHSマークイット テクノロジー部門(Tel.03-6262-1824、国内セミナー事務局:加藤)まで。
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