電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第224回

人材不足解消のキーワードは「外国人」「女性力」「中高年」だ


~日本人でない人がいっぱい闊歩する街「ヨコハマ」の片隅で考えたこと~

2017/3/10

 生純粋の浜っ子である筆者は、実家筋の蕎麦屋「江戸藤」のある伊勢佐木町周辺が、まさに「ふるさと」ともいうべきゾーンなのだ。週に3~4回は散策する愛すべき街であるが、ここに来て驚かされることが多い。街角のベンチに腰掛けてタバコを吸っていると、多くの人たちが通りかかり、話し声が聞こえてくるのであるが、そのかなりの多勢が日本人ではないのだ。

 圧倒的に韓国、中国、台湾などの人たちが多いが、最近になってタイ、ベトナム、ミャンマーの人たちも増えてきた。まったく言葉が分からないのに、1つだけ分かることがある。ヨコハマという街にとってもなじんでいるということだ。地元民である人たちと同化しており、筆者などはいつもこそこそと立ち回り、自分の好きな街が奪われてしまったような気持ちになる。

ヨコハマ中華街の関帝廟はいつもインバウンドでいっぱい
ヨコハマ中華街の関帝廟は
いつもインバウンドでいっぱい
 あまり行かないところであるが、高校のOB会や文化サークルの人たちに呼ばれて、中華街を歩くこともある。関帝廟の前はいつも大変な人だかりである。インバウンドの人たち(外国人観光客)が熱狂的に群がっている有様は少し前にはなかったことだ。夜になってもインバウンドの人数はちっとも減らない。さすがにここは中国系の人が多い。

 これに似たようなことは旅先でも経験している。広島、静岡、下関などのローカルエリアの街角でインバウンドの人たちがはしゃぎながら歩き回っている。ミニ観光バスに乗ってみれば、日本人は自分ただ1人という事実に驚き、「まいったなー」と思うこともしばしばなのだ。ついにインバウンドは2400万人を突破し、この勢いで行けば2025年の大阪万博(誘致できればの話であるが)までには4000万人くらいまで行ってしまうのかもしれない。

 それはともかく、企業取材をしていて最後に常に聞くことは「女性力、中高年労働力、外国人の力をどう活用するか」ということだ。まるでアベノミクスの片棒を担ぐかのような質問ではあるが、各企業経営者、工場長、開発部長などの要職にある方々には実に丁寧に答えていただける。女性力の活用については、ほとんどの方がかなりの勢いをつけてこう言うのだ。

 「今や女性の時代の到来だ。若い男性たちが草食系でおとなしいのに対し、若き女性たちは肉食系で荒々しい。かなりのファイトが感じられる。ちょっと前は事務職系での採用が多かったが、結構きつい生産現場やインテリジェンスの要求される開発現場においての女性の採用は実に重要なことだ」

 ふーん、なるほどね、と思いながら中高年労働力について聞けば、これはあまり表情を変えないで紋切調にこうおっしゃる方が多い。

 「少子高齢化で全く人が足りない。キャリアのある中高年労働力はぜひとも活用すべし。我社は中高年の方々に手厚く待遇している」

 中高年をいいことにかなり安い給料で使っているくせに、綺麗ごとを言っていると思うケースもある。ただ各社ともそんなことは言ってはいられない、というほど、人材確保は逼迫しているのだ。さてさて、外国人の登用ということに対しては、なかなかに複雑な顔をしながら次のような答えが多い。

 「優秀な人間であれば、日本人であろうと外国人であろうと採用することに迷いはない。ただ、IT関連もしくはIoT関連の業界では外国人による知財権流出の恐れは決して否定できない。もっとも日本人でも会社の金の使いこみや賄賂、さらには会社に重大な損失を与える人材もたまにはいる」

 文化、言語、習慣の違いを感じながら、日本人的アイデンティティの中で外国人が働くことは、それなりに厳しさがあるということは事実だろう。トランプ米大統領の登場でグローバリゼーションの時代は終わったといわれる。多くの国で保護主義が叫ばれ、民族自決の法則が闊歩し始めている。つまりは、異なる文化、異なる民族との交流を阻害する流れが出てきている。

 しかして、太古の昔より海洋民族として知られた日本人は、常にグローバリゼーションの中にいたのだ。まずは日本という国が決して外国人差別のない国になるように、努力を続けるべきだろう。そしてまた、世界平和を保持するために、民族間、国家間の紛争を避ける必要があるが、太平洋戦争で深く傷ついたニッポンこそが先頭に立って紛争を解決するための戦いを続けるべきだろう。


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。30年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 社長。著書には『半導体業界ハンドブック』、『素材は国家なり』(長谷川慶太郎との共著)、『ニッポンの環境エネルギー力』(以上、東洋経済新報 社)、『これが半導体の全貌だ』(かんき出版)、『心から感動する会社』(亜紀書房)など19冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長 企画委員長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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